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青春と都市伝説  作者: 池田 ヒロ
◇冬の事変
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74話 メリークリスマス・ビンゴゲーム! ③

「顔色悪いけど、大丈夫?」


 先に上がった明がやってきて、空にそう言った。カードの中を覗き込みながら、なかなかならないねと励ましの言葉をかけてくる。


「夏斐君は何か狙ってるのあるの?」


「ん、まーな……」


 それがあのオレンジ色のプレゼントとは言えない。それの中身を知っているなんて言えない。それの本来の用途についても言えるわけないだろう。


「秋島センパイも全くこないね」


 だらしなく座っている大地を見て苦笑いをした。ここからでも見える、穴が空いているのが少ないカード。その言葉には空も笑うしかない。


「あれでも基本的に早く上がるらしいよ」


「どちらかと言えば、この現状のセンパイがセンパイらしいけどね」


 なんて明が言っていると、それが大地に聞こえていたのか――。


「なんだと、美野島ァ!!」


 なぜか怒声を上げる人間違いをする失態。掴みかったのは明ではない。翼である。これに、プレゼントの中身を見ていた彼は「はあ!?」と盛大な勘違いにうんざりしていた。


「おーおー。美野島のお兄さんが絡まれてるぜ」


「兄ちゃんって、結構な確率でセンパイに絡まれてるらしいよ。なんか、入学式のときもそーだったって」


「安易に想像できるのがスゴいな。流石は秋島センパイ」


 おそらくではあるが、翼の発言に勘違いした大地が絡んだことがきっかけなのだろう。聞いたこと、確信はないが、そんな予感がするのは気のせいではないはず。


「でも、気にはなりますよね」


 聞いたことがないのか、洋子は少しばかり気になる様子で翼から返り討ちに合っている大地を見ていた。


「大地さんとはお付き合いしていますけど、私には知らないことばかりですよ。夏斐さんたちの方が長いじゃないですか?」


「や。オレたちも秋島センパイに会った日って、冬野センパイと同じ日ですよ」


 このことは知らなかったらしく、その事実に目を丸くして驚いていた。


「わ、私、本当に大地さんのことを知らなかったんですね……」


 事実を知らなかったからか、洋子はどこか悲しそうな顔をした。知っておくべきだ、と思っていたのだろう。そこへと空が慌ててフォローに入る。


「これからですよ! まだまだ!」


「そうですか?」


「そーです、そーです! だから、今訊きに行くってゆー手もあるんではないッスかね」


「……ですよね! ありがとうございます!」


 どうにか気を落とさずに済んだ洋子。彼女は早速大地のことを知るためにそちらの方へと行ってしまった。なんとか乗りきれたとして、空は大きく息をついた。それを見ていた明は「お疲れ」と笑う。


「多分、これで兄ちゃんは解放されるよ」


「だったら、オレの功績をお兄さんに伝えてくれ」


「うん、ナイスフォローって言いそうだケド」


 洋子が入れるような状況ではなくなるぐらいにいざこざはヒートアップしているようだった。そのせいで、ビンゴゲームが一時中断をするほど。進行役の玲が仲裁に入ろうとしても、双方から殴られてしまう始末。彼らを止める者はいないようである。


「いやぁ、兄ちゃんってあそこまでホンキ殴りをするんだね。うちの兄弟ゲンカじゃ見られない光景だよ」


「オレ、一人っ子だからそこはよくわかんねーな」


 空たちは二人の喧騒を止める気はないのか、のんびりぼんやりと傍観する。そうしていると、大地たちから逆に返り討ちに合い、ボロボロの玲がやってきて「おい」とこちらに口を開いた。


「助けろよ」


「今助かってるよな」


「じゃ、ケンカを止めろよ。夏斐ならできるだろ」


「オレに頼られても困るな。てか、児玉センパイを頼ってくれよ。同じ学校のヒトなんだから」


「そのヒトに頼んだんだわ。でも、こういう仲裁役は夏斐が適しているだと」


 だから行け、と玲は空の背中を押して大地たちの方へと連れていく。そちらの方へと赴けば、喧騒ではなく、なぜかあっち向いてほいをし出していた。しかも、どちらとも真面目に真剣である。誠一も洋子も彼らを見て楽しんで応援をしているではないか。一方で冷めた目をしているのはカンナぐらいか。あとは全員反応に困っているらしく、苦笑いをしていた。


「ケンカ?」


「あっち向いてほいだな」


「冷静に言ってんじゃねーよ。これにオレはどうしろってんだ」


「だから、止めさせてくれ。大丈夫、夏斐ならイケる」


「俺ならイケるって何?」


 できるわけないだろ、と渋った様子の空ではあったが、気付いた誠一が「おっ」と期待の眼差しを向けてくる。


「ようやく夏斐の出番か。まあ、オマエならバカを止められるだろ」


「あの、ホントにオレの意味ってあります? だったら、幼馴染の児玉センパイの方が知り尽くしてるんでは?」


 というか、これは擦りつけではないだろうか。怪訝そうに空がそう言うと、誠一は「いーや?」と笑う。


「オレはあえて、夏斐に任せるコトにしたんだよ」


「平たく言えば、面倒事はオレに押しつける魂胆ッスか?」


 なんとなくわかる、誠一のにじんだ感情。面倒そうなその面構え。何でもかんでも人に押しつけるな。というか、妙にデジャヴを感じるぞ。あっ、これってあれだ。あの白衣の男に似ている気がする。断言はない。気がするだけ。


 男のことを思い出したせいで「我が息子よ」という苛立ちマックスの呼びかけも思い出してしまった。イライラは最高潮。ねえ、ここで怒鳴ってもいいかな? 怒鳴ってもいいよね。


「あのっ! あきし――ぶっ!?」


 怒鳴り二人のくだらない争いを止めさせようとしたのだが、大地の指は勢いよく空の頬にぶつかり、殴られてしまったのである。地味に攻撃力があるせいで、頬が痛い。


 悲しく悶絶をしていたのだが、見かねた洋子が「大丈夫ですか?」と言ってきたところで大地の動きは止まった。彼女は自分を心配してくれるのではなく、後輩を心配しているのである。つまりは空が彼女を取ったと換算してしまうため――。


「夏斐っ! てめぇ、何人のカノジョに手を出してんだよ!」


「勘違いも甚だしいっ!!」


 落ち着きを取り戻して、ビンゴゲームを再開したのはそれから十分後の話である。

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