6話 都市伝説は本当だった?
まさかここでもう一度大地と会うとは思わなかった空たちは茫然としていた。そんな彼らをよそに大地は地面で尻餅をついている少女に手を差し伸べる。
「大丈夫?」
「は、はい。ここを歩いていたら、いきなり変なおじさんに……」
手を取って立ち上がると、地面に落ちていたリュックサックを手にして空に渡した。
「みなさん、私を助けていただいてありがとうございます。もし、よろしければ、お礼をしたいのですが」
少女がそう言ったとき、路地の前に一台の黒い自動者がやって来た。そこからは執事服を着た男性が慌てた様子で降りてくる。
「お、お嬢様! 一体何が!?」
この現状を見て、執事服の男性がスマートフォンを取り出した瞬間に地面で伸びていた男たちは逃げるようにして退散をしてしまう。それと同時にカンナの方からシャッター音が聞こえてきた。
「何してんの?」
「ショーコ。あー、ブレてナンバーがわからない……ケド、写真要ります?」
そう執事服を着た男性に証拠写真を見せびらかす。
「そーゆーのだけはスキないな」
空が鼻白んでいると、大地が「あのヒトらと知り合い?」と少女に訊ねた。
「なんか、そっちの二人もホータイのおっさんに狙われてたみたいだから」
「えっ!? そうなんですか!?」
これにはびっくり、とでも言うように女子生徒は瞠目した。
「まあ、秋島センパイから助けてもらったので」
大地のおかげだ、と空が説明をすると、少女は目をきらきらとさせて「すごいです!」と素直に感心の目を向けてきた。
「なんて勇敢な方でしょうか。本当に、お礼がしたいので私の家に来てくださいませんか?」
「そこまで言われると、しょーがねーなぁ」
満更でもない、とでも言うように大地は連絡を入れる場所があると言って、どこかへと電話をし出した。彼がそうしている間、少女は空とカンナの手を握ってくる。
「お二人もありがとうございます! あなた方も!」
「オレら何もしてないってゆーか……あのヒトですよ?」
「いえいえ! そのようなことはありません! あなたが鞄を投げてくれなければ、彼は撥ね飛ばすにも一苦労が要りますでしょうし、あなたに限ってはその証拠写真で警察に提示もできます!」
是非とも、とこれは明らかに着いていかないと解放してくれないだろうな。そういうことに加えて、カンナが行きたそうにしてこちらを見ているため――。
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
椛花学園の生徒であろう少女の家に行くことへとなった。そして、先ほどから執事服の男性がお嬢様と言うようにして彼女はお屋敷に住む本物のお嬢様だった。
「改めて、私は冬野洋子と申します。椛花学園の二年生です」
場所代わって、四人がいる場所は上はシャンデリアが。着座しているのは高級ソファ。目の前にはいい香りがするお菓子と紅茶がある部屋にいた。
「あの、みなさんのお名前を教えていただけますか?」
「おー。オレは秋島……大地だ。えっと、八姫農業高校の三年だな」
「オレは夏斐空、です。紅花高校の一年です」
「わたしは三春カンナでーす。右に同じです」
三人の自己紹介を終えて、少女――洋子は「おかわりもありますよ」と柔らかく微笑んでくる。
「よろしければ、ご飯でも食べていってくださいな」
「えっ、さ、流石にそれは……」
空が気が引けるな、と思う反面、遠慮なしに美味しそうにお菓子を食べるカンナと大地。見ていて、苦笑いをせざるを得ない。彼が戸惑いの表情を見せていると、洋子が「あの」と尋ねてくる。
「結局、あの人たちはどなただったのでしょうか? 夏斐さんや三春さんをも狙っていたんですよね? お知り合いでもないですよね?」
「はい、オレたちも何がなんだか……」
「確かにフシギだよなぁ。つーか、冬野はわかるけどよ。なんで……夏斐とか三春が?」
大地も気になるようで、クッキーを頬張りながら思案をする。カンナもまた紅茶を啜りながら三人を見渡していると――。
「都市伝説とか?」
そう口に出す。
「都市伝説? どーゆーコトだ?」
「や、わたしも人から聞いたハナシなんで絶対的確信はないんですけれども。三姫地区のコーギョー団地の地下には人体実験をしているとか、なんとか……」
「ふーん?」
「それ、夏斐さんは知っていますか?」
「オレもトモダチから聞いたからそこまでしか」
そうだとしても、それぐらいしか思いつかない。男たちの狙いが自分たちと洋子であるならば、あまりののほんとしてはおけないのである。気が気でないからこそ、迂闊に路地に入ったりもできそうにない。
どうしたものか、と腕を組んでいると、カンナは「そーだ」とスマートフォンを取り出した。
「どーせなら、みんなの連絡先を教えてくださいな。多分、これからも狙われる可能性がありますし。何より、こちらには秋島センパイがいるんです。いざとゆーときは……」
「おいおーい。連絡コーカンするのはいーけど、オレがバイトのときとか学校にいるときはどーしよーもねーからな?」
「あっ、それ以外はフツーに助けに来てくれるんですね。ありがとーございまーす」
「なんか、勝手に決めてくるんだけど?」
大地は納得がいかない、とでも言うようにして空に向かって口を尖らせてくる。
「そもそも、三春ってなんだよ。コイツが言っていた『縁』ってヤツが怖過ぎる」
「ふふっ、センパイ。その『縁』はしつこいハズですよ」
「ヤだよ、ソレ」
カンナからの言葉を聞いて、更に恐ろしさが増した、と大地は後に語るのだった。