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青春と都市伝説  作者: 池田 ヒロ
◇秋の事変
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54話 こういうときだけは女子のカンナ

「えっ、冬野センパイの告白って成功だったのっ!?」


 翌日、空はカンナと登校中に昨日の話をした。それを聞いて、彼女は自分のことのように「よかったよねぇ」と頬を緩ませる。


「センパイたちに訊いてもはぐらかされてたんだよね。なんでだろ?」


「さーな? 恥ずかしかった、とか? 昨日の秋島センパイ、メチャクチャ顔が真っ赤だったし」


 それは自分も見たかったな、とカンナが残念そうにしていると――弄っていたスマートフォンのカレンダーを見て思い出した。もうすぐ洋子の誕生日なのである。それを空に伝えると「そっかぁ」そう、悩ましい表情を見せる。


「何を渡したらいーんだろ? そこら辺の女子、助けて」


「とりあえず、空は秋島センパイよりもシッソで安いモノをプレゼントするべきだね」


「それもそーだよなぁ」


 それでも何も思いつかないらしい。そんな空を見てカンナは「それじゃあ」と一つ提案を設ける。


「今日、秋島センパイも誘ってプレゼント買いに行こーよ」


      ◆


 授業も終わり、放課になって大地のクラスの担任である初喜は帰宅していた。今日の彼は平常運転のように見えて、少しばかりは違っていたな、と思いながら信号待ちをしていると――。


「うっせーなっ!」


 どこぞで聞き覚えのある怒鳴り声が聞こえてきた。窓を閉めていてもわかる音量、それの持ち主は町中で一人の女子高生にアイアンクローをかましているのを発見した。慌てて、車を邪魔にならない場所へと駐車してそちらの方へと駆け寄る。


「こらっ! 秋島ぁ!!」


 そう、その危ない人物は大地だったのである。急いで彼と女子高生を引きはがし、「また何をしているんだ!」と叱責する。


「何って、アイアンクローをコイツにかましてます」


「冷静的に言うな。傍から見ると一方的暴力にしか見えないぞ」


「そうだ、そうだぁ!」


 大地から引きはがされた女子高生――カンナは初喜の後ろに回って声を上げる。こいつ、味方が増えた途端、活きよくなるな。しかし、事情を知っている近くにいた男子高生――空が彼女の頭を軽く叩いた。


「元はカンナが悪いから」


「まーまー。ンで、センパイ、結局行くんですか? 行かないんですか?」


 空に咎められてもなお、反省の色は全くなし。そんなカンナは大地に向かってそう言った。これに「行くよ」と不貞腐れたようにして唇を尖らせていた。


「だがな、二度とオレをからかうな」


「はいはい」


 なんだか、無事に解決したように見えて、全く見えない初喜は片眉を上げた。


「行くってどこに行くんだ?」


「あー、そこの雑貨屋に行くんスよ」


 そう言って、大地はいかにも女子中高生が好みそうなファンシー感あふれる店を指差した。これまた彼が行きそうにもないところに行こうとしたものだ、と思う。


「誰かにプレゼントでも?」


「トモダチに」


「センパイ! ウソついたらダメですよ!」


 カンナの発言に更に眉間にしわを寄せて大地を見てくる初喜。これにもう一度だけ彼女にアイアンクローでもかけたい気分である。


「オメーはもーちょい、別の言い方しろ。ウソついてねーし」


「えぇ、冬野センパイ……」


「は、まだトモダチっ! 付き合ってすらもいねーよ!」


 またしてもからかわれる大地は恥ずかしそうにしていた。一方で、何も問題がなかったと知ると、初喜は盛大にため息をつく。


「紛らわしい」


「あの、なんかすみませんでした」


 初喜に同情でもしたのか、空は頭を下げるしかなかった。


     ◆


 初喜に納得してもらえて、彼と別れた後――三人は早速雑貨屋へと入店した。中はファンシーさがあり、なおかつアロマの香りだろうか、男子二名の鼻を突き抜ける。


「甘ったるいなって、加湿器とか売ってんのかよ」


 普通は電化製品店に売っているはずではないのか、と困惑しながらも店内を見て回る。適当に商品を見ては棚に戻していく。これを繰り返していた。


「つーか、女子にプレゼントって何を送ったらいーんだ? 夏斐、わかる?」


「わからないからカンナに頼ってるじゃないスか」


 なんて空が指差す方にいるカンナは自分たちに助言やアドバイスすらもせずして自分だけ楽しんでいるようであった。


「おい、三春。オレらの手伝いをしてくれるんじゃなかったのか?」


「すいませんね。女子とゆーのはこんなお店に来ちゃうと、我を忘れてしまうのであります」


「忘れないで。オレたち男子がココにいる時点ですげー恥ずかしーから」


 女友達の誕生日プレゼントを買いに来たというだけなのに、おかしいという視線を感じ取ってしまうのか、恥ずかしそうにしていた。


「そんで、女子って何をもらったら嬉しいんだ?」


「カネ」


「カンナ、そーゆーのはヤメロ。スゲーヤなオンナにしか見えないから」


 冗談のつもりで言ったのかもしれないが、大地はマジギレ寸前のところまでいるようだ。眉の端を動かして今にも突っかりそう。先ほどみたいにして大声を上げられてしまってはたまったものじゃない。


「ゴメンさい」


 カンナも大地の様子に気付いたのか、そうだな、と店内を見て回った。ある場所へと立ち止まって――。


「コレとかどーです?」


 そう大地に渡したのはバースデーベアだった。洋子と同じ誕生日の月のクマのぬいぐるみのつぶらな目が彼を見つめている。


「こっちには日にちが書かれている帽子がありますよ」


「なるほどなぁ。こーして、そのヒトの誕生日に合わせてのヌイグルミが作れるってコトか」


「いーですね。冬野センパイ、こーゆーの喜ぶんじゃないスか?」


「で、あとはアクセサリーを添えたりして」


 なかなかどうして、真面目にアドバイスをしてくれているではないか。これに空は珍しいな、とカンナを感心していた。流石は女子。任侠やマフィア映画が好きなくせにして、こういうときだけは女子であってよかったと思っている。


「空は……あんまセンパイより目立ったらいけないから。こーゆーのは?」


 そう手渡してきたのはケーキタオルである。タオルで作られたイチゴのショートケーキのようで面白いな、と思わず笑ってしまった。


「カワイーし」


「オマエ、こーゆーときだけ女子かよ」


 こういうときだけ。そう思っていたのは空だけではなかったようだ。大地が口に出したため、カンナは「失礼ですね」と口を尖らせていたのだった。

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