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青春と都市伝説  作者: 池田 ヒロ
◇春の事変
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4話 縁

 訳のわからない白衣の男から空とカンナは他校の男子生徒に助けてもらった。だが、その男子生徒――青年は二人の関係性を盛大に勘違いし、彼らに何かしら奢る羽目になってしまうのだった。


 三人がコンビニへと向かっていると、カンナは青年に「そーいえば」と言う。


「家はこの辺なんですか?」


「まーな。そーいう二人もだろ? 歩きっぽいし」


 二人を見た。彼らは紅花高校の特徴的な灰色と赤いラインがアクセントとなった制服を着用していた。


「ですね。さて、この勘違い八姫農業高校(ヤノー)の人はわたしたちに何を奢ってくれるんだろーね」


「……それヤメてくれる? 腹立つな」


 青年は口を尖らせながら、着いたコンビニの店内へと入った。続いて二人も入店する。


「だったら、お名前教えてくださいな」


「それなら、先にキミが名乗れよ。ジョーシキだろ?」


「知ってました? アルベルト・アインシュタインは『常識とは、十八歳までに身につけた偏見のコレクションである』と残しているんですよ」


 だからなんだ、と不快そうに、真っ直ぐにジュースが陳列している冷蔵棚へと足を向ける。その傍らでカンナは自分が言い放ったことであるのにどうでもよさそうに、レジ横にある肉まんを眺めていた。


「なんだ、コイツは」


 思わず口に出してしまう。それを申し訳なさそうに空は「すみません」と詫びを入れた。


「アイツが言い出したコトなのに」


「ホントだよ。……えっと、男の方が空だっけ? で、こいつがカンナ? で合ってる?」


「おっ、記憶力はいいですね。そのとーりですよ」


 カンナはばかにしたように青年に拍手を送った。そんな雑な拍手をもらっても嬉しくないやい。


「そんで、多分センパイですよね? お名前は?」


秋島(あきしま)


「下のほーは?」


大地(だいち)


 青年――大地の名前を聞いてカンナは腕を組んで何かを思案し出す。それを見て「何してんの?」と空に質問をした。


「ヒトの名前を聞いて考えるようなコトってあるっけ?」


「……カンナ、変なアダ名を考えてないだろーな?」


 まさか、とでも思ったのか空がカンナにそう訊くと「当たり前じゃん」そう、答えが返ってくる。


「こーしてわたしたちが出会ったのも、なんかの縁だし、ね」


「なんだろ、オレにとってはヤな縁とでしか思えない。つーか、フツーに秋島センパイとか大地センパイとか言えないか?」


「や、それじゃつまんないでしょ。あっ、わたしこれで」


 初対面で、なおかつ年上にあだ名をつけようとするカンナのその精神が逆に褒め称え――たくもなかった。一周回ろうが、何周回ってもだ。


 大地はその商品を受け取る。カンナは他に何かを買ってもらおうとしているようで、店内を物色し始めた。これに危険を感じ取ったのか「おい」と彼女を止めようとする。


「そこまでオレは奢るとは言ってねーぞ」


「ダメです?」


「ヤメてくれ。金欠だから」


「バイト」


「もーやってるっての。ほら、空だっけか。欲しいモノは? さっさと会計を済ませたい」


 そう言われて「え」と驚いたように大地を見た。


「お、オレまで流石に……」


「いーよ。オレ、胸倉掴んじゃったし。そのお詫びもかねて」


「ありがとうございます……」


 大地の言葉に甘えて近くにあったパック型のジュースを選んで渡した。それに伴って、彼もまた適当にジュースを手に取るとレジで精算をし始める。


「秋島センパーイ、肉まん」


「オレは肉まんじゃねー。そして、何度も言ってやるが、買うのはジュースだけだ。なぜなら金欠だから」


「ケチんぼ」


「あー、なんとでも言え。オレはなんとも思わないからな」


 カウンターにお金を出しながら、鼻で笑うように余裕ある表情を見せた。その物言いが気に食わなかったのか、カンナは「カノジョいない歴と年齢が同じのヒト」とぼそりと呟く。この呟きは店員にも聞こえていたようで、肩を震わせているようだった。肝心の大地は眉の端をぴくぴくと動かしていた。


「カンナ」


 それは言い過ぎだぞ、と空が咎める。元より、大地から発せられるオーラが怖いのだ。


「それはいくらなんでも……」


「えー? なんか、言った?」


 絶対わざとだ。カンナは聞こえなかったふりをする。そのお返しのつもりなのか、清算を終えた大地は「行くぞ」と声かけながらカンナにアイアンクローをかました。


「いたたっ!? ちょっ、イタイっ!」


 予想以上の握力なのか、掴んでいるその手を叩く。それは店から出てもなお、続く。


「何ですか!? マジの図星だったからですか!?」


「うっせーな! なんで初対面のはずのキミがオレの事情を知ってんだ!?」


 彼女いない歴と年齢が同じであるという真実に空は苦笑いをするしかなかった。


「だから、言っているでしょ。アルベルト・アインシュタインは――」


「それ、カンケーねーだろ。ゼッテー」


 鼻白む大地であったが、その場で着信音が鳴った。誰のだろうか、と三人が顔を見合わせていたのだが、すぐに彼がスラックスから黒色のスマートフォンを取り出す。どうやら大地に着信が入ったようである。


「はーい、もしもーし?」


 電話に出ている間、アイアンクローを抜け出したカンナはコンビニの袋の中を探ろうとする。その直後に電話の向こう側から女性の怒声が聞こえてきた。あまりにも大きかったのか、彼女も空もそちらを見ている。


 うるさそうにして「わかってるってば」と口を尖らせていた。


「あー、もー。だから、そんなでけー声出さなくても聞こえてるっつーの」


 しばらく通話の向こう側の人物とやり取りをした後に大地は袋から自分の分だけを取り出して残りをカンナに投げ渡した。


「今度こそ、じゃーな。オレは用があるから」


「ジュースありがとうでーす」


 大地は片手を上げながらその場を立ち去ってしまった。


 カンナは袋の中から空が選んだジュースを渡した。二人はそれを飲みながら帰路に着くことに。そんな中、彼は彼女が言っていた縁が本当にあるのではないか、と思う。それと同時にまた大地と会うのではないのだろうかと思ってしまうのだった。

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