26話 四人でRPG 後編
どうすればいいのかわからない四人はとりあえず、町の人を倒してみた。すると、画面が暗くなり、フィールドのときよりも更に美麗なグラフィックが映し出される。キャラクターもまた戦闘よりもリアル調に変化する。
「わあ、実写みたいですね」
そう声を上げる洋子をよそにムービーは進んでいく。プレイヤーたちの前には初老ぐらいの男性キャラクターが現れた。彼の表情は怒っている様子。
『きさまら、なにものだ!?』
怒るのは当然か、とも思ったがなぜに今時のゲームにひらがなで字幕は表示されるのだろうか。それに少しばかり疑問を抱いていると――。
『なにをだまっている!?』
反応を見せないプレイヤーたちに痺れを切らしたようにして怒りを露わにしていた。
「えっ? これってボタンでシンコーするワケでもないよな?」
「もしかしたら、マイクを使うのかも」
空はゲームハードが入っていた箱からマイクを取り出すと、それを大地に渡した。彼はマイクを設置する。
「つーか、マイクを使って物語はシンコーするんだな」
なんて呟くと、遊び人の顔がアップになって『マイクを つかって ものがたりは しんこーするんだな。』という字幕が現れた。
「おー、スゴいですね」
『なにを わけのわからないことを いっている!?』
「この人が怒るのは変わりないんスね。センパイ、テキトーに何か言ってみては?」
「テキトーにって……あっ、ヤベっ!」
マイクが入っていたことを忘れて、大地はしまったという口ぶり。慌てて口を抑えるが、もう遅いようである。その音声を拾ってしまう。
『ひどうな きさまらに このまちにいることなど ゆるされん! このまちから さっさと でていけ!』
『でていけ!』
男性キャラクターの声に合わせて、集まって来た町の人たちも口々にそう言った。四人は顔を見合わせると「仕方ないよね」と結論を出す。
大地はマイクが拾わないようにして「運が悪かったんだ」と言う。
「次からは人に話すときは○ボタンは押さないでおこーぜ。マイクを使えばいーだろ?」
「ですかね?」
ムービーが終わると、さて誰が動かすのかと言えば――2Pであるカンナだった。彼女は大地からマイクを受け取るとセットする。
「あっ、動かせた。とりあえず、剣士を復活させましょうか。教会ってないですかね?」
「教会の人も出ていけってゆーんじゃねーの?」
「ふふっ! これはマイクを使ってストーリーを進めていくなら、文句でも言えばいいんです」
そう得意顔をしながら断言すると、最寄りの教会に入った。奥の教壇にいる神父に向かって「生き返らせてください」と告げた。
『もしかして けんしをですか?』
『はい、そーです。』
『それならば ざんねんです。 あなたがたは このまちのひとを ころした。 そんなひとたちを いきかえらせようなんて わたしは おもわない。』
神父は当然断る。それに大地と空は「ほらな」と諦めようと言ってくる。
「ムリなんだって」
しかし、カンナはにやりと余裕の表情を浮かべる。
『ぎゃくにですが しんぷさま。 あなたが そこまで むじひだとは おもわなかったです。 あなたは それでも かみのつかいですか? しんぷさま すくえるいのちは すくうべきだと わたしは おもいますが。』
どうだと言わんばかりの自信に満ちた表情で画面を見ていると、突然リアル調なムービーに切り替わった。神父は深刻そうな表情を見せている。
『そういう あなたがたは なぜ まちのひとの いのちを うばったのですか? それならば すくえるいのちを すくおうなんて わたしは おもわない。 おかえりなさい ここに あなたがたの いばしょなんて ないのだから。』
心なしか、そう言う神父の表情は先ほどのカンナと同様の余裕の笑みを浮かべている気がしてたまらなかった。まるで論破してやったぞと言っているようにも見える。
これに腹が立ったのかは定かではないが、カンナはこのムービーの状態で○ボタンを押した。画面が暗くなった途端に空は大きくため息をつく。
「こーなるコトの予測ぐらいはしとこーぜ。新入生代表さんよ」
空の発言に大地と洋子は驚きながらも戦闘態勢に入る。一応は戦闘に慣れてきたようで、三人は魔法攻撃や物理攻撃で神父のHPをガンガンと削り、倒した。
『わるいのは しんぷさま だかんね。 おとなしく けんしを そせーさせとけば こんなことに ならなかったんだから。』
「それでもやったらいけないバトルじゃなければいーんだけれどもな」
◆
それから小一時間ほどして四人はセーブもせずして止めた。理由はセーブポイントがないし、何より全員が全滅してしまったからである。神父戦から剣士を蘇生しないままで話を進めていったのだ。
大地はコントローラーを片付けながら「変なゲームだな」と呟く。
「なんだよ、セーブができないRPGなんて。復活の呪文でもなさそーだし」
「これがテレビゲームというのですか」
どうも洋子は変に間違ったゲームの定義を覚えてしまったらしい。大地は「違うから」と苦笑いをせざるを得ない。
「こんなゲームがあふれてるなら売れねーだろ」
「ですよ。ならば、こちらの方で遊びませんか? こっちの方が冬野センパイも楽しめるはずですよ」
そう言う空はゲームソフトが入った籠の中から四人で楽しく遊べそうな物を取り出した。
「だなー。ゲーム会社がよくわからないようなゲームをするより、みんながよく知ってるゲームをしてワイワイする方がよっぽどいーよ」
もっともだ、として四人は別のゲームを始めるのだった。




