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出合い系総合夢世界  作者: 吉良利休
名倉(なくら)メイ
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19/41

密室大量殺人事件

「お兄ちゃーん!夜だよ、起きてっ!」

「ん……?」


 ベッドで寝ていると誰かに揺さぶられて目が覚める。僕を起こしたのは黄色いドレスを着たピンク髪の少女だった。僕のことをお兄ちゃんと呼んだということは僕の妹なのだろうか。いや、考えるまでもなく妹に決まっているか。


 僕が寝ていた部屋は広くて豪華だった。上を見ればシャンデリアが輝いており、横を振り向けば白と黒の格調高いダマスク模様のソファーが置いてあり、下を見ればペルシアから取り寄せたような古く厚みのある幾何学的な模様の絨毯が敷かれていた。


 妹がベッドに上がって窓をばんと開ける。


「見て見て!満月が綺麗な夜空だよっ!」

「ほんとだ……。でも真っ赤に染まってる」

「でも綺麗!」

「そうだね」


 妹は赤い満月を背にして笑った。あざとさも邪な気持ちを微塵も感じさせない無垢な笑顔だった。


「お父さんが死んでもう三年が経つね。伯爵の仕事はもう慣れた?」

「うん。でも毎日パーティーばっかりでね。貴族ってパーティーで他の貴族と仲良くするしか仕事はないのかな?」

「しょうがないよ。だってコネが全ての世界だもん」


 僕達がベッドの上で雑談に興じていると、階下から女性の悲鳴が聞こえた。


「キャーーーー!」

「悲鳴だ」

「一体なんだろうね?行ってみよ」


 僕と妹は部屋を出て大広間に降りる。大広間も僕の部屋と同じくらい豪華だった。正面の壁にはシルクハットを被った男性の肖像画がでかでかと取り付けられており、床は大理石で出来ている。そして広間にはたくさんのテーブルが配置されていてそれぞれにたくさんの食事が並んでいた。確か今はパーティーの真っ最中で、僕の知り合いの貴族たちがこの広間に集まって楽しくお話をしていたのだった。だが今は皆顔を青くして立ち止まり、ざわざわと騒ぎながら広間の中央に目を向けていた。

 

 彼らの視線の先を見てみると、そこには血を吐いて倒れている男性がいた。ピクリとも動かず明らかに死んでいる。僕はゴクリとつばを飲んだ。


「こ、これは……。人が死んでる。でも、誰だったかな」

「あれはシン男爵。この前の戦争で活躍して有名人になった成り上がりの男爵だよ」

「そうだった。でも一体何故こんなことに……」

「あなたの仕業ね、アヤ夫人!」


 妹が近くにいた女性をビシっと指す。その女性は背中が開いたロングトルソーのドレスを着ていて、広間で一番美しくみえた。右手にはワイングラスを持っていてぶどうジュースを飲んでいたようだ。どこかで彼女を見たような気がするが頭にモヤがかかって思い出せない。


 女性は妹に指をさされて驚きの表情を見せる。


「まさか!彼と話していたら何故か突然血を吐いて死んでしまったのよ。私は全く関係ないわ」

「毒殺か……ということは、料理が怪しいな。他にも被害が出るかもしれない。君、今出ている料理を取り下げてくれ」

「かしこまりました」


 僕は近くにいた黒服に指示すると、彼らは手際よく食器を片付け始める。妹はぐいぐいと僕の腕を引っ張った。


「お兄ちゃん!料理なんていいから先にアヤ夫人を拘束しましょう!あの人は黒い噂が絶えない人なの。きっとあの人が毒殺したに決まっているわ!」

「ちょっと、あなたさっきから何を言っているの?変な言いがかりはやめてほしいわねえ。本当に私は何もしてないんだから」

「うるさい!このブス!黒服!あいつをさっさと牢屋にぶちこんで!」

「かしこまりました」


 妹の指示を受けると二人の黒服がアヤ夫人の腕を掴んで二階へと連れて行った。彼女はもがいたり足を地面にこすってその場にとどまろうとしたが、黒服ががっちりと腕を掴んでいるのでどうにもならない。


「だーかーらー!私は何もしていないんですー!」


 彼女の叫びを聞いて僕は少し不安になる。


「待ちなよ。証拠もないのに牢屋に入れるのはやりすぎだろう」


 僕が黒服を止めようと手をあげようとしたら、妹がその手を掴んだ。


「大丈夫!ここは僕を信じて!」

「全く大丈夫じゃないような……。まあ、牢屋に入れるだけならいいか。逆にそっちのほうが安全かも」

「うんうん、僕もそう思う!」


 妹が笑顔で頷くが、それを見ても僕の心に芽生えた不安は消えることがなかった。僕はザワザワと騒いでいる周囲の人たちを眺める。


「しかし、僕らの館で死人が出るなんて最悪だな。噂に尾ひれはひれがついて一気に評判が悪くなりそうだ」

「全くだよ、お兄ちゃん。本当に最悪な客人だね。他のところで死ねばいいのに!」


 そう言って妹は頬を膨らませる。


「いや、彼も死にたくてここで死んだわけじゃないと思うけど……」


───────(1)───────


 大広間に集まっている人たちは相も変わらずザワザワと騒いでいる。この館の主として何かしらの先導を取るべきなのだろうか。それと床に死体を転がしたままというのは見た目も被害者の尊厳にもよろしくない。そんなことを考えていると、大広間のドアがばんと開いた。


「ばばーん!内藤警察だ!その場を動くな!」

「あっ、警察だ!これで一安心だね、お兄ちゃん!」


 リーダーらしき少女とともに数人の警察官がやってきた。妹が嬉しそうに僕に話しかけようとすると、少女は僕らに向かって銃を向ける。


「動くなと言っている!撃ち殺すぞ!」

「はぁい……」


 妹がしぶしぶと黙る。事件が起きてからずっと騒いでいたパーティーの参加達もついに騒ぐことをやめて動かないように努めた。警察官たちは死体を囲んで何やら話し合いだした。


「警部、詳しくは解剖しないとわかりませんが、おそらく毒殺のようです」

「そうかそうか。とりあえずホトケの形に沿って床にテープを貼るんだ。それとKEEP OUTのテープを周りに!あれがあるとめっちゃ雰囲気が出るからな」


 僕は彼らに話しかけるために手を挙げる。警部少女が僕に気づいた。


「警部さん、私がこの館の当主の招木イドです。動いてもいいですか?」

「いいだろう。お前にはいろいろと聞きたいことがあるからな」


 警察官の一人が遺体の体を調べている。何かを発見したらしい。


「警部!被害者のポケットから手紙が!」

「なんだと!犯人からのメッセージかもしれん。さっそく読み上げるんだ」


 その警察官が手紙を読み始める。


『復讐の夜は始まった。

特に恨みはないが、我輩はお前たちを殺していこうと思う。

日が沈むたびに一人殺していくので精一杯怯えるように。

絶望、苦しみ、迷い、混乱。

その一つ一つが吾輩のごちそうになるのだ……。

犯人より』


 警察官は手紙を読み終わると、ゴクリとつばを飲んだ。


「これは大変なことになりましたね」

「この最後の『犯人より』って部分がちょっとかわいいな!」

「そんなこと言っている場合ですか!これは応援部隊が必要です」


 ウキウキしている警部少女を警察官の一人がたしなめる。


「そ、そうだな……。おい、当主!電話を借りるぞ!」

「どうぞどうぞ。電話はそこですよ」


 僕が黒電話を指し示すと、警察官は受話器を取って電話をかけ始めた。妹は僕の腕をつかんでぶるぶると身を震わせていた。


「なんだかとっても怖いことになってきたね、お兄ちゃん……」

「うん、そうだね……」


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