第23話 コラム-09 AIの文章に違和感を覚える理由 ── 日英の「文章構造」の違い
注:これは2026年8月現在の状況を基に書きました。
英語と日本語の「論理の作法」の違いを紐解くヒントとしてご覧いただきたい。
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AIに小説を書かせたとき、なんだか予定調和で「ツルツルした文章」になると感じたことはないだろうか。
実はこの違和感の正体は、言語学的な「文章のフォーマットの違い」に隠されている。
■ 「エッセイ」という言葉のすれ違い
日本語でエッセイといえば、徒然草のような「随筆」であり、心に浮かんだことや感情の機微を自由な形式で綴るものを指す。
一方、英語圏におけるEssayは「小論文・論説文」だ。
明確な主張を持ち、客観的な事実だけで論理のブロックを組み上げる、極めて厳格なフォーマットを持っている。
■ 絶対ルール「パラグラフ・ライティング」
英語圏の教育で徹底されるEssay「小論文・論説文」に用いられる文章の型「パラグラフ・ライティング」は、「ハンバーガー・エッセイ」とも呼ばれている。
「パラグラフ・ライティング」「ハンバーガー・エッセイ」では、段落の役割が固定されている。
上のパン (序論): ①自分の立場を明確にする。 ②本論で話す「理由」を予告する。
肉と野菜 (本論): ①「序論」で予告した「理由」の数 = 「本論」の段落の数。② 1段落につき1つの「理由」について、脱線せずに淡々と証明する。
下のパン (結論): 「序論の主張」を別の言葉で念押しする。
AIに影響している癖は、「本論」で書く内容が、「1段落」につき「事実は1つ」という絶対の掟だ。
■ 「転」は論理のバグとみなされる
日本語の文章でよく用いられる「起承転結」は、展開の波を作り、読者の共感や余韻を生み出すフォーマットだ。
しかし、英語の「パラグラフ・ライティング」に「たしかに反対意見もあるが……」といった情緒的な「転」を混ぜ込むと、設計図が歪む「論理の脱線」と判定されてしまう。
最難関クラスの英作文で高度な論証を構築する際にも、「転」を省き、一直線に複数の理由を並べる(王道の5段落構成など)という徹底したルール遵守がベースとなる。
■ AIの出力のベースにある「英語圏のフォーマット」
現在の主要なAIは、膨大な英語のデータセットと、英語圏の「パラグラフ・ライティング」論理構造をベースに学習・構築されている。
そのため、AIに日本語で文章を出力させても、デフォルトの構造として「一直線に論理を展開する英語エッセイのフォーマット」が適用されやすくなる。
結果的に、AIが自発的に「転」のような展開の飛躍を削ったり、「パラグラフ・ライティング」のルールで、日本語と違うルールで行間を飛躍させる。
日本人が、AIの文章に感じる違和感の正体は、「英語圏の文章フォーマット」が、日本語として出力された際に生じる、言語間の構造的なギャップだ。
「AIの初期設定(構造的な癖)」をフラットに理解しておけば、AIが出力した文章をどう修正し、どう指示を出せば狙い通りの文章になるのかが明確に見えてくるはずだ。
根底に「一直線なエッセイの作法」を持つAIは、日本人が大好きな「ドラマチックな『転』」を自発的に盛るのが構造的に苦手なのである。
■ たたき台として「6割」と割り切る
だからこそ、AIに小説の執筆を任せた場合、たたき台としては6割程度の完成度にとどまる。
頑丈な論理のブロック「パンと肉」を組み上げる作業は、彼らの得意分野だ。
しかし、残りの4割である「ドラマチックな転」や「行間の余韻」は、後から盛り込んでいけばいいのである。




