第14話 試作短篇小説-02 『稲葉山城を乗っ取った軍師、異世界でも乗っ取る』
注:試作短篇小説-01は、作成中の作業ミスで雲散霧消いたしました。
02から公開させていただきます。
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「この世界を救ってください。賢者たる資質を持つものよ」
仰ぎ見るような白い柱と壁、みたこともない素晴らしい意匠の装飾、そして目の前の大きな椅子に、光り輝く、神としか思えぬほど美しい女性が告げたその言葉に、俺は眉ひとつ動かさず、周囲の空間を観察していた。
――死んだはずだ。播磨国美嚢郡平井山の陣中で、病に倒れ、志半ばで終わったはずの人生が、気付けばこの奇妙な空間へと繋がれていた。
絵巻物に描かれる神々とも異なる姿の女人が勝手に現れ、「世界を救え」などと戯言をほざいている。
戦国の世において、大義名分を掲げて兵を動かす輩など幾らでも見てきた。だが、目の前の女はそれすら超えた「得体の知れない上位の存在」らしい。 ――ふむ。
「勇者と聖女と戦士と共に、賢者であるあなたが、転生し顕現するのです。その叡智をもって、戦いと守りの魔法をもちい、勇者を助け、魔物を倒し、魔王を滅ぼすのです。そして人々に……」
――総大将を引きずり下ろすだけで済ませられぬものかな。――
長々とした説明を聞き流しながら、視界の端に浮かぶ無数の板に目を向けた。
見たこともない光る板に文字が並ぶ。
奇妙な並び方だ、南蛮人の書物は横に文字を書くと聞いたことがある。たしか、左から右。読めないことはない。
直感が働く。
――『陣形や兵站の管理にも使えそうな国絵図』か?
『魔法』と言ったな。陰陽道のようなものか?――
想像できる文字が並ぶ、使える概念として即座に飲み込む。
○地形が描かれた板
山や川、村や街、知らない形の壁の中の建物
――城のようだ。――
さまざまな色の小さな光の数々、そして険しい山の奥の暗い色の大きな光が瞬く
――人と魔物と魔王か?
第六天魔王とご自身で吹聴されていた彼の方ならば、もっと力強く輝いていただろうな。――
○数らしきものが書かれた板
能力値
名前 未設定
職業 賢者
武力 28(二十八)
知力 1,000(千)
……
――能力値?与えられる力か?
名前が未設定とは、名付けはこれからするということか?
職業、賢者、これは決まっているのか。
武力、知力、数との間に書かれているものは何だ。
数の別の書き方とすれば、
算木の桁を合わせているのか?28が二十八ということは、2が二、8が八
2の場所は十の塊か。
0は、何だ?
千が1,000とすれば、1は千の塊が一つ、0は桁を揃えるために何も無いことを表しているのか。, は、区切りか?
すごく便利な考え方だ。面白い。――
○文字が書かれた板
攻撃系
・火計・・・火炎
・水計・・・洪水・氷・水流
・風計・・・暴風・竜巻
・雷計・・・落雷
・土計・・・土壁・地割れ
――この板は、兵法と似ているな――
「……、書かれていることを、実際に動かすにはどうすればよろしいのでしょう?神よ」
そう尋ねると、
女神は
「半兵衛さん……それは神意の授受において……与えられた1,000の値を割り振っていくのです。
貴方の資質に合わせて項目名がデフォルトで表示されています。
賢者の役割にあわせて、この後チューニングされます。
文字の指を置いて、値を念じれば数が入りますが、仮の状態ですので、まずは話を聞いてください」
わずかに戸惑いの色を見せながらも、女神はその作法を教えてくれた。
――なるほど。意思で数字を動かせるのか。――
試しに武力という文字の上に指を止めた。数字が揺らぎ、確かに反応する。
「ウインドウに指を置いたまま滑らせるとさらに文字が表示されます」
――ういんどう? 板のことだな――
板に置いた指を滑らすと文字が変わった
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天候操作系
・晴天之計・・・晴天化
・降雨之計・・・降雨発生
・豪雨之計・・・集中豪雨
・洪水之計・・・大規模氾濫
・干天之計・・・干ばつ発生
・疾風之計・・・強風発生
・暴風之計・・・暴風雨発生
・濃霧之計・・・濃霧展開
・降雪之計・・・降雪発生
・吹雪之計・・・猛吹雪発生
・雷雲之計・・・雷雲召喚
・落雷之計・・・指定地点落雷
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索敵・情報収集系
・天眼・・・遠距離監視
・敵情開示・・・敵軍配置表示
・地勢照覧・・・地図表示
・人物鑑定・・・能力確認
・戦況把握・・・戦場俯瞰
・天命照覧・・・職業・能力閲覧
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回復系
・応急救護・・・軽傷治療
・傷病治癒・・・中傷治療
・全快令・・・大回復
・延命之計・・・瀕死回復
・再生之計・・・欠損再生
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状態異常回復系
・解毒令・・・毒解除
・解呪令・・・呪い解除
・正気回復・・・混乱解除
・醒眠令・・・睡眠解除
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支援系
・士気高揚・・・攻撃力上昇
・鉄壁之令・・・防御力上昇
・疾風之令・・・移動速度上昇
・奮戦之令・・・全能力上昇
・必勝之計・・・命中率上昇
・戦意鼓舞・・・恐怖無効
・統率強化・・・部隊強化
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軍師特化系
・軍略演算・・・勝率予測
・戦果予見・・・未来予測
・兵站演算・・・補給計算
・軍略共有・・・情報共有
・指揮共有・・・思考共有
・戦意解析・・・敵味方の士気分析
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調略・妨害系
・離間之計・・・敵勢力分断
・疑兵之計・・・幻影軍勢生成
・伏兵之計・・・伏兵配置
・誘敵之計・・・敵誘導
・金縛令・・・行動封印
・混乱之計・・・敵指揮系統攪乱
・偽報之計・・・偽情報流布
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兵站・召喚系
・兵糧顕現・・・食料召喚
・軍勢招来・・・兵士召喚
・陣幕展開・・・結界展開
・国土再興・・・城砦修復
・架橋之計・・・橋生成
・兵庫開放・・・軍需物資召喚
――勇者、聖女、戦士と言っていたな。四人で戦うのか?
この力があれば軍を動かせる。勇者とは武将なのか?違うとしたら不要な力だ。後から何かすると言っていたな。
少人数で戦うために、出来ることを入れ替えるのか?――
最上位術
天下静謐之計・・・広域完全回復
万民救済・・・大規模蘇生
覇業成就・・・国家強化
天候掌握・・・気候完全支配
四季転変・・・季節変更
天地鳴動・・・天変地異発生
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禁術
下剋上・・・組織序列強制反転
天下布武・・・全軍超強化・広域制圧
王佐之才・・・対象を英雄化
革命之計・・・国家体制改変
天命転覆・・・運命改変
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――【下剋上】――
「見つけた」
――一度は死んだ身、再び死んでもどうということはない。 試してみるか。――
くくく、と喉の奥で笑いながら、下剋上を選び千と念じた。
『下剋上、認証しました。発動しますか? 』
「是」
『対象:【世界の創造主たる女神】および【最高権限・神威】』。
ざぁっ、と空間の空気が凍りついた。 手元の板が血肉を思わせる真紅に染まり、女神の足元から世界の理を歪めるような重低音が響きわたる。
「なっ……!? あなた、いったい何を――っ!? それは神の管理領域、最高権限・神威の――ひぃっ!?」
女神は、青ざめ、言葉を失ってよろめき、椅子からまろび落ちた。
空間の天井に神々しい文字が次々と浮かび書き換わる。世界のことわりが手元の板に流れ込み、全ての数が満たされた。
さらに、文字が増えていく。
――出来ることが増えたということか。
これで、面倒な勇者の世話係などに成り下がる必要はなくなった。
そもそも、天下の趨勢を握るでもなく、異世界の魔王討伐などという泥仕合に付き合わされるいわれもない。――
「さて」
神威の権限をふるう。
遠く離れた魔王城の座標を――いや、魔王そのものの存在を世界のことわりから完全に切り離した。
一瞬の静寂ののち、世界の裏側で星が一つ消えたかのような莫大な力の収束が起きた。
次の瞬間には「魔王の消滅」を示す無機質な完了通知が小さく灯った。
――これで、やるべき面倒事はすべて片付いたな。――
「な、魔王が……一瞬で消滅した……? あなたは一体……」
「もうお役目は終わりでよろしいでしょうか。神であった方」
冷や汗を流し、絶句してへたり込む元女神を見下ろしながら、伝えた。
そして、神威の転送機能を自分用に書き換え、光の粒子となってその場から姿を消した。
次に目を開いたとき、そこは緑豊かな片田舎だった。
しかし、見慣れた風景とは違う。自分が知っている場所ではないことは分かった。
木漏れ日の中、念じてみた。
庵よ。
隠居に相応しい茅葺きの一軒家が、地面から現れた。
縁側に座った。
吹き抜ける風は心地よく、柔らかい日差しが俺の病弱だったはずの体を優しく包み込んでいる。
――今生の身体は健常なようだ。――
「ふう……やっと、静かに昼寝ができそうだ」
大きく伸びをひとつすると、誰に邪魔されることもない平穏へ向けて、ゆっくりと目を閉じた。
ここがどういう場所かは、あとで権能でしらべればよいだろう。
思い返せば、前世では、道半ばであった。
松寿丸殿は救った。
だが、官兵衛殿が有岡城を無事に出られたのか、それだけは最後まで知ることができなかった。
きっと、生きておられるだろう。
あの御仁が、あの程度で果てるとは思えぬ。
「殿のこと、お頼み申す」
誰に向けた言葉でもなく、そう呟いて微睡みに身を委ねた。
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この時半兵衛は、魔王を消滅させたことで、バランス崩れてしまい、転生後の世界を保つために、激務に巻き込まれるということを、予想だにしていなかった。
そして、黒田官兵衛が天寿を全うした後に、竹中半兵衛に仕事を押し付けられるために召喚されたことは、また別のお話し。




