小葉館
男は客としてしか出入りの許されないこの屋敷の名前は「小葉館」。
女ばかりのこの屋敷に生き残りの術の方法は「ある」。
だが、許されるかは別である。
女の世界で生き残るには女の勝負に勝たなければ「許されない」ことがある。
花形は「後宮妓女」、その他の妓女たちはそこで戦いに勝たなければ妓女の最高位に立つことは許されない。
妓楼には様々な職種で成り立つ。上に登ればそれだけの価値があり、下のものは価値がない。
自分をどこまで維持するのか、高めるのか、その人次第。
これは後宮だけでなく、現実世界の生活にも存在する空気だ。
後宮で自由に生きた分、女たちから厳しい視線を浴びていたこと分かっている。
陈莉にはあたしに分からない苦労をかけてしまった。もうそんなこと起きないようにちゃんと女の世界であたしは生きていかない、と。
白蕾「――初めまして、白蕾です。よろしくお願いします」
孤立がどれほど自分の身を危険に晒してしまうか、周りを巻き込んでしまうか、後宮でも十分わかったから。
笑顔を絶やさずに他の妓女たちに合わせる。誰と誰が仲間で、誰と誰が敵対していて。短い時間の中で情報を集めなければあたしが「詰む」。
「あぁどうも」
向こうもあたしのことを警戒している。口を開くものは少ない。自分にとって不幸をわざわざ呼ぶ必要は無い。
仕事は自分で覚えるしか無い。それもそうだ。自分たちの売り方を教えるなんて自分の居場所を無くしてしまう。
同じ屋根の下で過ごしても家族では無い、商売敵なのだから――。
自分は自分のやり方で生きていくしかない。
何度も屋敷の中で迷子になり、探し回る皿は見つからない、夜になっても灯りを渡されることなく窓から溢れる光を頼りに動く。
朝になれば女の高い声で見送られる男たちは夢の中のような顔をして出ていく者もいれば、酒に酔い締め出される者、相手がいる者は慌てて逃げていく。耳を澄ませるとそれぞれの人生があるのだと、少しおかしくなる。
疲れ果てた体を休める暇なく妓女たちの部屋、衣、化粧を整える。
自分の人生は誰かのためだけにあるようなこの感覚。決して妓女から差し伸べられることはなく、ストレスの発散口の下働きの女たちに罵倒、折檻など当たり前だ。失敗はしないようただ、静かな風になる。
部屋にはもう横になれるスペースはなく、崩れ落ちるように女たちが休息を取っている。
これから抜け出そうともがく者、抜け出す気力を無くした者が項垂れている。
花は咲いているはずなのに人目に出ることなくここで枯れていけと言われている影の土しか許されないのだ――。
晴晴「――女将、どうだあの女は」
小葉「あの女、あんたとお通しがあったとほざいていたぞ」
帳簿を見ながら面倒くさそうに、向こうに行けを追い払う。
あの女そんなことを――(笑)
小葉「面倒事はごめんだよ」
晴晴「ふっ、あの女あの世からやってきたらしいな。おもしろいだろ」
小葉「死体に金出させたのか?銀3と、香膳1日分返すんだね」
晴晴「息子に食事出さない母親がいるかね〜」
小葉「私に息子はいないね!」
晴晴「はぁ――。あの女を下女のままにするつもりか?」
小葉「この屋敷のことは私が管理するんだよ。お前は帰りな」
晴晴「面白そうだと思ったけどな」
小葉「私を巻き込むんじゃ無いよ。全く――」




