剣の女
小葉「――晴晴っ!」
女将小葉の怒号はまた響き渡り、晴晴を呼んでいた。
晴晴「死に急がない方がいいぞ、女将」
小葉「あんたが、送り出した女が今何してるか知っているのか?!」
晴晴「さあ」
小葉「っんたは――。妓女として売り出そうと思ってるのに剣を握ってんだよっ!あんたが変なこと吹き込んだんだろ?!」
晴晴「いや、全く」
晴晴は予想外だったのか、いつも冷めた顔の晴晴は笑いを堪えきれない。
晴晴「だから言っただろ。おもしろそうな奴だって」
小葉「お前が香膳に引き摺り出したんだ。妓女として売り出していくからね。その前にあの危ないのを取り上げな!」
晴晴「強い女は嫌いじゃない」
小葉「お前の好みの話じゃないんだよ!妓女はお淑やかな女がいいんだ!まさか……ね……せめて楽器を握ってて欲しいよ」
晴晴「楽器は握れないだろ」
小葉「はぁ――」
女将小葉の大きなため息は小葉館中に響き渡ってしまったのではないか――。
「晴晴様、こちらで白蕾が暴れております――」
晴晴「暴れてね――」
下女が扉を開けると白蕾は真っ白な衣に身を包み、下童たちが周りを次から次にのしかかっている。
剣など握ってないだろ――。
「白蕾様!次のお話聞かせて!」
「白蕾様!次、私に絵を描いて見せて!」
「次は私よ!白蕾様、字を教えて!」
白蕾「順番ね(笑)……では絵本を次描いて持ってくるから。待っててね」
晴晴「――ずいぶん楽しそうだな」
女たちを見下ろすと下童は白蕾の後ろに隠れた。
白蕾「香膳の時間ではないですよ?」
晴晴「女将が死ぬところだったんだぞ。なにをやらかした?」
その場に座ると、白蕾の肩からこっそりと下童たちが俺の様子をうかがっている。
晴晴「下童たちは仕事があるんじゃないのか」
白蕾「――こどもたちは遊ぶのが仕事です」
晴晴「下童から仕事を奪えばどうなるかお前は知ってるのか」
白蕾「下童に……下庭に――自分より下を作らなければ生きていけない人なんて――。みんなごめんね。明日には絵本を準備するから。今日またお仕事頑張ろ?」
「う、うんっ!」
下童たちは俺を見ながら庭から出ていった。
晴晴「――大嫌いか」
白蕾「はい。こどもたちに聞かせることでは無かったです」
晴晴「お前の優しさだけであいつらを救えないぞ」
白蕾「分かっています。だから寄り添いたいんです――」
晴晴「女将はお前を危なっかっしい女だと思ってるぞ」
白蕾「――これですか」
晴晴「ふっ――(笑)本当に持ってんのか」
白蕾「これを握る時なんです――」
目の前にいる女は先ほどまで太陽に照らされる蕾だったはず。
だが、剣を握る花は鋭い。
夜に咲く花の顔に色はなく、目は真っ直ぐに何かだけを見ている。
こんな冷たい花恐ろしくて誰も手が出せない――。
晴晴「その顔怖いぞ――」
渡した仮面は真っ白でその女の冷たさを隠す。
白蕾「仮面ですか。丁度いいですね――」




