変質娘と侍女陈莉✿
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◇執筆・なろう共に初心者ですが、一話一話大切に書いております。温かい目で見守っていただけると嬉しいです。
さてと――。
この荒れ果てた屋敷を自分仕様にしていく作業、掃除を始めよう。
現代の自分の部屋は誰かを招待できるような状態では無かった。
ただ寝て、起きて、着替える部屋というより場所。
荒れ果てた屋敷の庭には大きなバッタが飛び、蝶が舞う。
底なし沼になってしまった池は小さな虫が湧いて、きっと蛙や蛇はどこかに隠れてる。
このあまりにも自由な空間を自分仕様にする。
条件は分からないけど、あたしは願えば現代と華国を行き来できるようだった。掃除道具、屋敷の修繕用品を揃えるためまた目を閉じ、開ける。またあの桜並木のある川沿いに戻れる。
開いた通帳に入っているのはアルバイトを何個も掛け持ちをして昼夜働き、貯めた貯金。
これはこの現代で「生きるため」のお金。食費、通学費、携帯代、生活に関わるものは全て自分で支払っていた。
そこから先日ネットで買った漢服代が大きく引かれている。
今までなら「大きな無駄使い」だったはずの衣類、金額。
でも今回は違う――。
自分で望んで、「生きるため」ではなく「自分のために」使ったお金だった。
嬉しくなっていたあたしの心は華国で生きることを望んでいた。
あの墓場と呼ばれる屋敷であたしは人生をやり直せるような気がする。
自分で選択していい。
不安もあるけどなんだか楽しくなり浮ついた体はホームセンターを歩き回っていた。
できる限り必要になりそうなものをカゴに詰めている。
それと――。
红京が喜ぶものって薬だよね?
でもどんな薬が欲しいのかなんて聞けてなかった。
墓場の屋敷に入ることが決まってから红京に会えていない。後宮でこれから红京には会えるの――か?
全然红京と話し足りない。
華国が红京に来てからどうやって生活していたの?红京って大人びているけど何歳?日本のどこから来たの――?
薬コーナーの前でうろうろするあたしは不審者に間違えられても仕方ない。
華国って漢方なんだっけ?作れそうな風邪薬とかじゃなくて、清潔面考えると石鹸とかのほうがいいのかな?のど飴とか……?
ホームセンターと薬局をハシゴしたあたしの腕には買い物袋でいっぱい。
色々考えていては時間がもったいない。正直そんなこと思ったのも初めてだった――。
あたしはすぐに華国に帰りたいと、あの屋敷に帰る。
屋敷の庭の草をとにかく鎌で刈って、部屋の中の汚れを掃き出すと、やっぱり虫が出てくる、出てくる。夜これに怯えるのは嫌だからと、もう必死だった(笑)
屋敷に残っていたものはほとんどがボロボロで。頑固なカビと、もはや何が絡まっているかわからない埃。こんなに汚れているところを掃除するのも初めてで掃除に没頭していた。
とんでもない時間が過ぎていたことを大きな声で理解した――。
「ぎゃーっ!!!!」
屋敷の門のほうから大きな叫び声が墓場の屋敷に響く。
ふと我に帰り、周りを見回すと辺りは夕日が沈みそうな陽の低さだった。
今さっきの叫び声なんだったんだろう?泥棒?虫?慌てて門の方に走る。その先には尻餅を付いている少女が腰を抜かしたのか立てずフルフルと震えていた。
温花「どうしましたか!?」
「ああ……あの……ここに新しくお嬢様が入ると聞いて……お食事を……すいません!お嬢様はどこですか!?温花様はどこですか!」
温花「あ、あたしが温花です……」
あたしを見る少女はまるでこの世のものでないものを見るように怯えて、目を合わせないように持っている御前を差し出す。
あ――。
そうだここにはもう誰も来ないだろうと思っていたから――。
おじいちゃんが使っていた大きめの麦わら帽子、紫外線を避けるための青いサングラス、動きやすさ重視の体操服に、UVカットのためパーカー、虫や池のヘドロを取れるために網を持っていた――。
もうこれはただの変質者でしかない。
慌ててサングラスを外し、この状況にあたしも固まってしまった。
どうすればこの状況の説明がこの国の人にできるのか。
温花「す……すいません……脅かすつもりはなかったんです……」
「お嬢様……?今回この屋敷の侍女をすることになりました陈莉です……掃除は私がしますので……」
自分の周りに落ちていた荷物をなんとかかき集めようと陈莉という少女は力を振り絞っていた。
「墓場の屋敷」の侍女を任命されたこと。
そんな「墓場」と呼ばれる屋敷でこのような不審な格好をした人間がいたこと。
どんどん冷静になっていく脳内。
陈莉は恐怖で体が固まってしまうのも、無理もない――。
今更手遅れかもしれないけど、なるべく怪しまれないように――。
温花「陈莉?あたし温花よろしくね。掃除はだいたい終わったよ!大丈夫?立てる?」
墓場の屋敷の主温花様に食事を運ぶよう命令されてやってきたら、まさか――。
大きな頭に、目は大きく光って、見たこともない衣で走りまる生物がいて――。
まさか温花様だとは思わない、でしょう?
そんな奇抜?な格好の温花様は隣にしゃがみ込んで私が落としてしまったものを一緒にかき集めてくれていた。妃になるお嬢様が地面のものを拾うなんて……自分で屋敷の掃除を進めてしまうなんて……。
私の経験上、周りの侍女たちから聞いたことがなかったため驚きを隠せない。
温花様は見ると泥まみれになっている。
陈莉「……お!お風呂の準備します!今すぐお湯を!」
温花「お湯今さっき沸かしてあるよ!体が泥だらけで……ごめんね、先にお風呂入ってくるね。そこは座れるようにしてあるからちょっと待っててね」
こんな逞しいお嬢様も今まで見たことがない。
自分でお湯を沸かしているの――?!
手を差し伸べてくれるだけでも驚きなのに、引っ張り上げてくれる温花様はニコニコと笑っていた。
陈莉「あのこちらが湯上り用のお洋服になります。皇帝陛下からの贈り物、これだけなのですが……」
温花「こんな女にも贈り物しないといけない皇帝陛下様も大変だね〜(笑)……あ、あの陈莉?夜生活できるように灯籠?みたいなものってあるのかな?」
陈莉「い、今すぐお持ちします!」
温花「あ……あのあと……この姿はみんなには内緒でお願いします(笑)」
墓場の屋敷、下級妃の温花様に準備できる灯篭はどこかのお妃様の廃棄されたもの。中の光は破れた穴からあちこちに漏れ出す。
なんだか申し訳なさそうな温花様は灯籠をお持ちすると嬉しそうに持ち上げ、上から下からと忙しそうに観察していた。
こんな安っぽい灯籠だからお気に召さなかったのかも……と温花様が動くと折檻されてしまうと思い、体がのけ反る。
温花様はその様子を見て少し目を細めた。な、なんだろう……。
温花「こんな綺麗な灯籠を持ってきてくれてありがとう」
それから灯籠を近くで見ていいなんて!この木の縁は職人さんが作ってるの?この絵はどうやって描いてるんだろう?それは興味心で、安く破れた、誰かのゴミの灯籠なんてこと全く気にしていない様子だった。
温花お嬢様は変人だと聞いてやって来た。
そしてこの屋敷は「墓場」と言われていて――。
本当に見てはいけないものを見てしまったと心臓が止まりそうだった。
奇抜な格好、今までに見たことのない装い。
変人と言われてしまう理由も頷けてしまう。だけど話してみるとまるで友達のように楽しく過ごしてくれる。身構えてやって来たけど、きっと大丈夫、すぐに安心させてくれる人だった。
でもなんだか発音に癖がある人だった――。
ホカホカとした空気を纏った温花様は湯上がり用の衣の着方が分からないのか少し照れくさそうにして立っている。
慌てて手を伸ばすと温花様を改めて近くで見た。髪色は少し明るくて、手足は長く、目の色は吸い込まれそうな綺麗な色をして、今まで嗅いだことあるお香?花?の匂いの中で一番いい香りと言っても過言ではないほど、とてもいい匂いがする。思わず大きく鼻から吸ってしまった。
陈莉「お嬢様、とっても良い香りですね。この香りは何ですか?」
温花「いい匂いだよね〜!これは金木犀の香り。ずっとこの匂いが好きで使ってるの!」
墓場の屋敷の風呂もなかなかの野性的なものだった。
屋根は無く、天気次第では風呂に入ることはできない。
虫の鳴き声、お湯の流れていく静かな音だけ。
林間学校でしかやったことのない火起こしは掃除以上に苦戦ものだった。
水を集めるのも。今回は屋敷に溜まっていた雑草と落ち葉にチャッカマンでなんとか乗り越えた――(笑)
そして次に困ったのは髪をどうやって乾かすか。
この世界には電気やドライヤーはない。
髪乾かすためだけに向こうへ毎度戻るのも面倒だしなぁ――。
红京に聞いてみよっと――。
「どうやって髪の毛乾かすのが正解?」必死に髪をときながら、仰いで長い髪を乾かしたため髪の毛乾かすのだけでも一苦労だった。改めて現代社会の便利さを痛感した。お風呂に入る習慣が昔はあまりなかったのかもしれない、という気づきにもなった。
それとこれ――。
漢服なんて習慣も無かったから、寝間着1つ着替えることも難しい。
ひとつひとつ躓いている。なのにこの新鮮さがたまらなく楽しい。
陈莉「温花様、食事の準備できておりますが……」
温花お嬢様は寝間着を上手く着こなせなかったようで、今にもはだけそうだ。それを気に留めいないようで、食事に興味津々だった。間に合ってよかった……。
温花「これ準備してくれたの?!……美味しそう〜!一緒に食べよう!」
陈莉「侍女として当たり前です……!お妃様と一緒に食事なんて、ありえませんっ……!」
温花「命令だったらいいの?(笑)」
陈莉「それはそうですけど……」
温花「じゃあ、そうしよ!ここのご飯初めてだし!楽しみで!お話しながら……!」
陈莉「わ、わかりました!」
温花様はニヤニヤと悪そうな顔をして強引に食事に誘ってくれ、会話を楽しむことができた。墓場と呼ばれる屋敷の中がこんなに心温まる場所だなんて、想像していたものと正反対だった。
私が墓場の妃へ遣えることになったのは、他の妃様のところで失敗を続けてしまい、職無し状態になりいつの間にか決まっていた話だった。
温花お嬢様は前仕えていたお嬢様とは雰囲気がかなり違う――。
温花「陈莉、今日ありがとう。また明日。おやすみ」
あたしは昼間の作業の中で屋敷の東側に寝床を作った。
ここなら朝日が入って気持ちがいいはず――。
陈莉が準備してくれた布団は少しざらざらしていてこれが機械で作られたものでないことが折り目からわかる。うん、これも気持ちがいい。少し独特な匂いがするのはお香か、何か、かな?
灯籠1つでも十分明るく感じたのは窓の外にある満月のおかげだったんだ。
布団に寝そべると厚みのない布団はペタンとなり、布団が体に引っ付く。思っていた以上に疲れていた体は木のベット?寝台に沈み込む。
もうちょっとふわふわした布団だと体痛く済むかもな……今度現代に帰る時寝具揃えるのもありかな。家にも買った布団があるしあれでもいいか――。
目を瞑ると今日の出来事が目まぐるしく流れてくる。
今日は陈莉と出会えた日だ。もっと明日は陈莉と話して友達になれるといいな。そんなことから頭の中では陈莉のことでいっぱいになる――。
陈莉は後宮に入ってから侍女として頑張ってきたんだろう。
妃のあたしのために一生懸命してくれていることが節々に伝わってくる。でもなんでこの墓場と呼ばれる屋敷へ来ることになったんだろう?張宏様の様子からは侍女がこの屋敷に入るなんて言ってなかったし、一人で過ごせるようなこと言ってたような気がするんだけどな――?
陈莉が敵だったとすれば?どんな目的がある?陈莉に何かあったとしても何か権力や力でそうなるしかないって可能性もある。真っ直ぐな陈莉を疑いたくない――。
また明日の陈莉と過ごしてみて考えればいっか。
今日は本当に疲れた。考えを放棄するとあっという間に眠りについてしまった――。




