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終わりと始まりの花【本編】  作者: はな
温花【後宮編】

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新たな街


 医学館のことからこの屋敷に姿を現さない皇帝陛下に手紙を送り、雑談から、体調について、红京ほんじんがぼやいていた難しい話の後宮改革についてその後やりとりが続いていた。

 関心を強く持っていた後宮改革については実際に動き始めているようで、悩みの手紙も届いていた――。

 

 皇帝陛下が動き始めたことで、宮中では大きな動きが生まれていた。

 その渦はさらに大きく国を巻き込んで変化していった。


 手始めに何十人と下級妃たちが解雇される。対象になった妃たちが露頭に迷わないよう、家を守れるようにと宮中の外に街が与えられる。そして一人、また一人と。

 特権や尊厳を失うことを恐れた貴族や、後宮を盾にしていた家からの反発は激しく、この政策は一筋縄ではいかない。

 

 が、その街の元妃は兵たちと、宮中へ働きに出ている男たちと自由恋愛をすることができるため、後宮で醜く争うよりも……と街に行くことを自ら望む妃も現れた。

 自らの帰る家を持ち、家族を持ち、幸せの灯りがこの街には増えていると話が届いていた――。


 温花うぇんふぁ红京ほんじんも新しい街に行くことあるの?」

 红京ほんじん「あそこの薬は買いたくありませんので」

 温花うぇんふぁ「ん……?」

 红京ほんじん「新しくできた街の名前は祝街しゅくまちと呼ばれています。貴族の集まる街。その外にある街を「下庭げてい」だと……そのようなことを口にする人たちへ国の大事なお金を落としたくありません」

 温花うぇんふぁ「うん……」


 红京ほんじんは淡々と薬を机の上に並べ、いつも以上に静かな空気を纏っている――。


 温花うぇんふぁ「――红京ほんじん怒ってる……?」

 红京ほんじん「すいません、そのつもりは無かったんですが……後宮の中の問題を改善しようと考えたことが、ただ広がってしまいました。素人が口を挟むことでは無かったですね」

 温花うぇんふぁ红京ほんじんが落ち込むことじゃない。皇帝陛下と手紙を交換していて、红京ほんじんが言ってたことを伝えてしまったから。あたしのせいでもあるし……ごめんなさい……」

 红京ほんじん温花うぇんふぁが皇帝陛下と良好な関係を続けることができているようで安心しました。ですが……」

 温花うぇんふぁ「いつかそうしなきゃいけないときが、今だったって思うようにしちゃだめかな……」

 红京ほんじん「……はい、そうですね。ありがとうございます」


 红京ほんじんはいつも寄り添ってくれるのにあたしはうまいこと言えない。

 红京ほんじんは医者として妃たちの様子を見たくないことまでたくさん見て来たのだから、争いが無くなるように医者として、一人の人間として願ってもいいじゃん。

 红京ほんじんという人間の思考の中でそれが正解だっただけ。それを悪く使ってしまう人が現れてしまっただけ。


 红京ほんじん温花うぇんふぁ、あなたは下級妃で唯一後宮へ残った妃になります。中級妃、上級妃から注目されてしまう的になりかねません。今まで以上に用心深く過ごしてください」

 温花うぇんふぁ「うんっ、任せてっ!」


 笑って見せたけど手は皮が剥け、震えている。強がるにはまだ弱すぎるな。

 红京ほんじんに心配かけたくないのにな。

 一人でもなんとかできるようになって迷惑かけないようにしないと。


 红京ほんじんに見捨てられたくない――。

 あたしは红京ほんじんみたいに、器用に生きていけない。

 動いて、考えて「普通」の仲間入りをしなきゃいけない。

 少しでも周りに近づかなきゃいけないのに、まだ笑って誤魔化すしかないなんて、本当にあたしは無力だ。

 

 红京ほんじんはその手の状態に気がついているようで目を細めた。

 だめだ、隠さなきゃ。

 弱い、何もできない自分なんて価値がない。


 これしかあたしにはできることがないから。笑って、笑って。

 ここにいいと言ってほしい――。


 红京ほんじん「これ、お土産です」

 温花うぇんふぁ「お土産?」


 红京ほんじんは細めためのまま自分の衣から包みを差し出した。

 お土産って?これは受け取ってもいいものなの?

 红京ほんじんから――?

 詰まっていた胸の奥が高まる。

 

 红京ほんじんかんざしですが髪にはつけず、これを持っていてください」

 温花うぇんふぁ「いいの?もらっても……?隠しておくものってことだよね?」

 红京ほんじん「本来男性から女性にかんざしを送ることは好意を示す行動ですが、これは温花うぇんふぁのお守りとして渡します」


 あ――。

 そうだ。


 そうだ。红京ほんじんはあたしに特別な感情が無いこと分かっていたのに。

 自分の浮ついた感情で見えなくなっていた。

 同じく現代から来た人間だから手助けしてくれているだけ。そこに感情ではなく「義務」のようなものを感じていた。

 あたしが都合よく解釈していただけだ。


 「特別」になりたいなんて、わがまますぎる。


 红京ほんじんが新しくできた街で、家族を持つこともありえる。

 红京ほんじんの人生の選択権をあたしが勝手に奪っていいわけない。

「普通」にも到達していないのに。バカだ、あたしは。


 温花うぇんふぁ「わかった。ありがとう」


 このあたしの感情は隠さなきゃ。無かったことにしなきゃ――。


 この簪を衣に隠し、気持ちを隠し、剣を握る。


 

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