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終わりと始まりの花【本編】  作者: はな
温花【後宮編】

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22/120

医学館


相変わらず「墓場」と呼ばれる屋敷は騒がしい。

 向かっている途中から元気な声が聞こえてくるのだ。

 かと、思えば声が聞こえなくなり、こちらが心配になり早足で向かってしまう。


 華辉ふぁほい「変人はどこだ」


 侍女は驚いた様子で、屋敷の奥に案内をする。

 公務が忙しくなってしまいこの屋敷に顔を出せるのは久しぶりだった。

 今日はどんな顔しているのか――。


 足音がするほうへゆっくりと顔を向けるのはあの変人妃のはずだ。

 客家けっかの縁に餌を並べ、鳥たちと戯れている。

 まるでお嬢様じゃないか――。


 温花うぇんふぁ「あ、お久しぶりです」


 温花うぇんふぁは相話しかけると変わらず俺が皇帝だということを忘れているようないつもの様子だ。

 侍女はその様子に青ざめる。

 

 華辉ふぁほい温花うぇんふぁ楊兎やんとぅとはどうだった」

 温花うぇんふぁ「皇帝陛下はご存知なのでしょう?(笑)楊兎将軍は女が好きでないの?」


 俺が屋敷に現れたと言うのにこの妃は嬉しそうな顔をしない。

 少し惚けた顔で楊兎やんとぅのことを話した。

 

 華辉ふぁほい「はははっ……!(笑)楊兎やんとぅに聞いておく(笑)……お転婆娘がこんなところにいて退屈でないのか」

 温花うぇんふぁ「ううん、とても幸せです。陈莉ちぇんりぃをこんなところに閉じ込めてしまって申し訳ないけど」

 陈莉ちぇんりぃ「いえ!私もここが好きです!」

 華辉ふぁほい「今日は薬を頼んでいる。元気の出る薬とやらを」


 陛下は薬を机の上に置いた包みは見覚えのある医学館のものだった。

 そして匂いでわかってしまう。これはあたしが欲しがっていた貧血の薬だった――。


 温花うぇんふぁ「陛下!ありがとございます……!」


 苦い匂いのする包みを温花うぇんふぁは嬉しそうに匂った。

 鯉の餌、桜の木、高級な家具を与えた顔の何倍もの笑顔をその薬袋を手にしたときのほうが華やいでいる。

 

 華辉ふぁほい「薬の匂いが好きなのか」


 温花うぇんふぁは嬉しそうで、薬の匂いが好きだと変わった趣味があるようだ。

 お香のほうがいい香りだ。それに他の妃たちは喜ぶはず。

 だが、温花うぇんふぁは違った。

 

 温花うぇんふぁ「はい!とても……!」

 華辉ふぁほい「医学館……あそこに行ってみるか」

 温花うぇんふぁ「行けるのですか?!」


 温花うぇんふぁは嬉しそうに衣を靡かせ、いい香りを蒔きながら勢いよく立ち上がった。

 薬に興味があったのか?それとも――。


 華辉(ふぁほい)「女子は禁制だ。男装してもらうが」

 温花(うぇんふぁ)「男装!……楽しそうですねっ!」


 温花(うぇんふぁ)は自分の衣装を確認するが、男装できるような衣は見当たらず「へへへ」と笑ってどうしようもない、助けて?と言いたげだ。


 華辉(ふぁほい)「はぁ……(笑)そんなに行ってみたかったのか。準備する、待て」


 男装できる服装を準備させると、温花(うぇんふぁ)は楽しそうに着替えに向かい、戻ってくると――。

 男装……白い肌に、顔の形に、細い腕がとても男には見えない。

 それは本人もわかっていたのか、もう圧で乗り切ろうと前のめりだ。


 温花(うぇんふぁ)「少しだけでいいので……!」

 華辉(ふぁほい)「わかった……(笑)」


 もう頷くしかない……(笑)

 温花(うぇんふぁ)はあまりに嬉しそうな顔をするため、仕方なく医学館へ連れて行くことにした。


 独特な匂いが香る緑屋根の医学館は突然の皇帝訪問に大騒ぎする――。

 

 まだ下級妃の薬味瓶に入っていたものが何かわかっていない……そして誰かが何かやらかしたのではないかと騒がしくなっていた。真っ青な顔で医者と薬屋たちが立ち尽くす。


 医学館の男たちがズラリと並ぶと、皇帝華辉(ふぁほい)は笑みをこぼす――。

 どちらの意味かわからない医学館の者たちは息も出来ない。


 華辉(ふぁほい)「静かに。ただ見学へ来ただけだ」


 その隣に見たこともない小柄な男が皇帝陛下の影に隠れている。誰なのか――。医学館の者たちはそんな疑問も持てないほど緊張で顔をあげることができない。


 華辉(ふぁほい)「――先日の薬味瓶の中身はわかったのか?」


 その問いに医学館の者たちは、遂にお叱りを受けてしまう――と震え上がる。


「陛下……お待たせしております……!その件について……お、お話が……」


 医学館の上官は慌てた様子で頭を力一杯下げる。


 華辉(ふぁほい)「……興味深い(笑)さ、中で話を聞かせてもらおうか」「――温花(うぇんふぁ)10分ほど待っててもらえるか」

 温花(うぇんふぁ)「はい」


 皇帝華辉(ふぁほい)はハンドクリームのことを既に温花(うぇんふぁ)からどのようなものかを聞かされていたため、さほど医学館からの興味は無かったが、皇帝という立場を温花(うぇんふぁ)に見せつけたいという意図があった――。


 が――。


 あの変人は目を輝かせる。

 わーっ!ここが医学館!すごいっ!

 ほんっとに漢方?の匂いが濃い(笑)

 

 皇帝華辉(ふぁほい)と医学館の上官たちがゾロゾロと動き回る姿には温花(うぇんふぁ)はさほど興味がない様子で医学館の独特な建造物の造りに夢中だった――。


「――こんなところで何をやっているんですか……?!」


 ここに来ることが出来たのは本当にラッキーだった。

 

 红京(ほんじん)の生活、仕事をしている場所を見学できるなんて。探すことがあたしからできるなんて――。

 

 医学館の人たちは目に焼きついていた衣に身を包んでいて、红京(ほんじん)を探すことが難しいかもしれない。

 

 そう思っていたのに皇帝華辉(ふぁほい)様の横に居たことで、あの冷静な红京(ほんじん)は雰囲気に惑わされることなくこちらをチラリと見て――目が合う――。


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