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終わりと始まりの花【谢国復路編突入】  作者: はな
温花【後宮編】

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銀と黄金の将軍✿

◇いつも見てくださる方、最新話から楽しんでくださる方も、本当にありがとうございます!

◇執筆・なろう共に初心者ですが、一話一話大切に書いております。温かい目で見守っていただけると嬉しいです。

 墓場と呼ばれる屋敷の夜は細い虫の声がひとつ、ふたつと広がっていく。

 空に浮かぶ月は、半月になり華国ふぁこくで過ごした日にちが進んでいることを静かに教えてくれる。


 「紅」の衣に身を包み、見たことも、会ったこともない男を待つ。

 夜に男女が会うことで何が起こるのか――。


 屋敷の門が叩かれ、陈莉ちぇんりぃが静かに開ける。


 そこには月夜に照らされる一人の男が立つ。

 銀色に靡く髪は月の光を集め、目には黄金に輝き光を放つ。

 これほど綺麗な人が、男が存在していいのか眼を疑う――。


 きっとこの男の嫁になりたいと思う人はこの国に、この世に五万といるだろう。

 

 真紅の衣に着飾って待つあたしの想像を壊す。

 将軍は大きく野蛮で、血に染まった強面な男だと思っていた。

 まさかこんな美男子だとは思いもしなかった。

 

 この人が楊兎やんとぅ将軍――。


 楊兎やんとぅ「……温花うぇんふぁか」

 温花うぇんふぁ「はい。温花うぇんふぁと申します」


 低い声が夜の風に乗ると、虫たちは鳴くのを辞め、この人物だけにこの時間を与える。

 

 陈莉ちぇんりぃはしきたりのひとつを知っているようで、楊兎やんとぅ将軍に酒と包みを乗せて差し出した。

 

 陈莉ちぇんりぃ楊兎やんとぅ様、どうぞ屋敷の中へ」

 楊兎やんとぅ温花うぇんふぁの顔を見ることができた、それだけでいい」


 楊兎やんとぅ将軍は礼を1つすると、静かに門を閉める。

 

 温花うぇんふぁお嬢様は力が抜けたようにその場に座った。


 陈莉ちぇんりぃ「お嬢様大丈夫です……か……」

 温花うぇんふぁ「よかったぁ――。憧れの生活を手に入れたはずなのに……欲が止まらない……どうしたらいいの……」


 温花うぇんふぁお嬢様の欲とは――?

 

 皇帝陛下や将軍様と結ばれることではないの?とても光栄なことなのはず。

 

 私も初めて楊兎やんとぅ将軍を見た。とても綺麗なお方だったのに。

 皇帝陛下が楊兎やんとぅ将軍を温花うぇんふぁお嬢様と婚姻の話を進めてくれている。だけど、楊兎やんとぅ将軍は屋敷には入らず、真紅に着飾った温花うぇんふぁ様に触れることもなく――。

 

 もし、このことが噂になれば温花うぇんふぁお嬢様が楊兎やんとぅ将軍に拒否された屈辱的な事件だと言うのに。

 

 そのはずなのに――。

 温花うぇんふぁお嬢様は楊兎やんとぅ将軍が門を閉めて帰ったことに安堵した様子で、客家で静かに項垂れている。これまでに綺麗に着飾ったお嬢様をそのままにしてしまう将軍様はどうして――!


 こんな時どのように声をかければいいのかわからない。

 温花うぇんふぁお嬢様はいつだって笑顔で一緒に過ごしてくれるのに。

 

 陈莉ちぇんりぃ「……お嬢様、夜の風は冷えます」

 温花うぇんふぁ陈莉ちぇんりぃ、一緒にお茶を飲んで寝よう。虫の音も心地がいいし」


 温花うぇんふぁお嬢様は髪飾りを次々と引き抜いていく。

 お嬢様の欲とは何なのか。わからない。

 この風景を楽しもうとするお嬢様のどこに欲があるというのか。

 

 楊兎やんとぅ将軍は皇帝陛下の王令を背いたことにならないの?

 私にはわからない――。


 温花うぇんふぁ陈莉ちぇんりぃ、いつもごめんね――」


 暗闇の中、森の中から低く空気を包み込んでしまうように梟の鳴き声が夜のこの時間を支配してしまう――。


 でも良かった――。

 楊兎やんとぅ将軍はあたしの「毒」では無い。

 このあたしの感覚は、恐怖は間違えない。

 あの人は、あたしとどこか似ている人だ。

 

 ずっとこの真紅の衣に身も、心も包んで隠してしまいたい。消えない、痒い思い。

 だめだと思っているのに、消えない。


 分かってる――。

 

 辛い思いをすること分かってるから、この気持ちを無かったことにする。

 これ以上あの人に迷惑をかけるわけにいかないから。

 あの人はあたしのような重たい気持ちを抱えているわけでない。


 分かってる――。


 この痒さから逃げるため、王令はちょうど良かったはずなのに。

 あれほど綺麗なものを見ても、心が向いている方向を変えてくれない。


 分かっているのに。

 どうすればいいのか。

 楊兎やんとぅ将軍がこの屋敷に入らなかったこと、この夜にあたしは喜んでいる。

 

 

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― 新着の感想 ―
美丈夫な将軍だったのですね。温花の一途な想いが将軍ですら心が動かないというのが健気というか、切ないですね。
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