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終わりと始まりの花【本編】  作者: はな
温花【後宮編】

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桜の木


 後宮の奥――。

 この辺りは現在ほとんど手をつけられておらず、まるで宮中の中とは別世界の草木の生い茂る森のような場所。


 鳥たちの鳴き声も楽しめるはずのこの場所に大きな声が聞こえてくる。


 温花(うぇんふぁ)「あー!こっちー!いやぁあ!」

 陈莉(ちぇんりぃ)「お嬢様こっちに持って来ないでくださいっ」


 動物が駆け回っているのかと錯覚するほどのスピード感で女2人が屋敷を走り回っている。

 2人は来客が珍しいのかこちらを見ると固まって動かない。だが顔を見ると、思い出したのかハッとした顔と手をぽんと叩き謎めいた動きをする。


 温花(うぇんふぁ)「あ!昨日は助けてくれてありがとうござ……ぎゃぁ……!」


 と言ってまた走り抜けて行ってしまった。

 こんなに目まぐるしい光景は狩りか、剣技の特訓かでしか見たことがない。

 衣の裾は手繰り上げ、品というものがまるでない。腕には妙な物を身につけ、手に棒と箒を持ち何かと戦っているのか掃除をしているのか見当も付かない装い――。


 陈莉(ちぇんりぃ)「お嬢様今度は蛇です!」

 温花(うぇんふぁ)「蛇は飼っておこう!虫食べてくれそうだし!」

 陈莉(ちぇんりぃ)「何をおっしゃっているのですか!これは毒蛇ですよ!」


 侍女と共に毒蛇から逃げ回っていたのか……(笑)

 飽きない女だ……(笑)

 軽く剣で真っ二つにすると、キョロっとこちらを見たかと思えば両手を上げ嬉しそうに飛び跳ねる。

 

 温花(うぇんふぁ)「ええっ?!宝玉のお兄さん……ありがとございますっ!」

 陈莉(ちぇんりぃ)「宝玉のお兄さん……?えっ?!なぜここにっ?!」


 侍女は俺が誰なのか分かっている様子で、慌てて主人の装いを正そうと必死に動き回る。当の本人は動きにくい状態を作られることに不満そうだ。

 

「鯉の餌やりの続きをここでしようと思ってな。――侍女、余計なことは言わないように」


 温花(うぇんふぁ)には俺が何者なのか知られぬよう侍女に釘を刺す。


 温花(うぇんふぁ)「あ……ありがとうございます!もー、後宮素人相手に、こんな屋敷に案内するから墓場なんてことになるんだ。皇帝のせいじゃんーもー。顔が見てみたいよね!」


 頬を膨らませ、目を細めて箒を手にすると屋敷を掃き始める。先ほど毒蛇から逃げ回ったお前たちが土をあげていることが原因のようだが……?(笑)


「皇帝陛下に下級妃が文句垂れ流すのか?」

 温花(うぇんふぁ)「住める環境にしてない皇帝が悪いですよね!綺麗な桜の木くらいプレゼントしてくれてもいいのに〜!」


 今度はニヤニヤしながら掃除を続ける。

 

「なぜ桜なんだ」

 温花(うぇんふぁ)「え?言ってもいいんですか?(笑)」

「なぜダメになるんだ」

 温花(うぇんふぁ)「男の人が女の人に花の話を聞かされると、その女の人のこと思い出してしまうらしいですよ〜(笑)」


 少し悪そうな顔をしてまるで悪人の取引のようだった。

 

「なるほど、納得だ」

 温花(うぇんふぁ)「と、言うことで皇帝陛下様が桜の木を送ってもらえたとき、綺麗な屋敷って思えるように掃除頑張ってきます〜!」


 俺が屋敷に来ることの意味もわからずに後宮へ入ったのか?さすがにそこは理解しているだろう?

 まだ気がつかないのか温花(うぇんふぁ)は――。


 皇太后様への大事な大事な挨拶も無事?終わったし、今日はどの辺りを綺麗にしようかな――?

 

 朝日を浴びながら背伸びをすると屋敷の外が騒がしい。部屋の扉を開けると屋敷の門は開かれ、次々と綺麗な家具と荷物が運び込まれる。屋敷の奥は特に男たちの声で騒がしい。そこには――。


 温花(うぇんふぁ)「本当に桜の木を送ってくれた――」


 桜の木を見ていると、陈莉(ちぇんりぃ)は慌てて自分の部屋から出てきて髪はボサボサのままだ。


 陈莉(ちぇんりぃ)「うぇ、温花(うぇんふぁ)お嬢様!おはようございます!これは何があったのでしょうか?!」

 温花「もしかしてあの人が皇帝だとか?(笑)」

 陈莉「ま、まさか……」


 これ以上お嬢様に見られてしまっては嘘が付けない顔になってしまう。誤魔化すことに必死な私は握り拳に力が入る。

 

 ずっと、ずっと……。

 温花(うぇんふぁ)お嬢様に本当のことが言えずもどかしいまま隠し通さなければいけないの――?


 温花うぇんふぁお嬢様は屋敷に植えられた桜の木の根のほうをずっと見ていた。


 陈莉ちぇんりぃ「どうしたのですか、お嬢様」

 温花うぇんふぁ「――木の根が綺麗に埋め込まれてる。木の幹もこんなにきれいで。この仕事を頼まれた人、とっても頑張ってくれたんだと思う」


 温花うぇんふぁお嬢様はしゃがみ込み木の根と、盛られた土を見る顔は太陽に照らされて嬉しそうだ。

 花びらだけではなく根っこをみるお嬢様なんて、私は気づくことができただろうか。

 あのお方の名を受けて適当な仕事をする人なんていないだろう……。

 

 温花うぇんふぁ「あたしからお礼を渡せないのかな?」

 陈莉ちぇんりぃ「今のお嬢様の言葉を職人に伝えるだけでも、十分な褒美だと思います……」

 温花うぇんふぁ「そうなの?手紙とか書けばいいのかな?」

 陈莉ちぇんりぃ「手紙!今すぐに準備します!」


 後宮に入る女性は上から指示されたことやってもらって当たり前。丁寧にできていなければ折檻。その常識の下、この桜の木を植えた職人たちも仕事だとやっただけのはず。まさか後宮暮らしのお妃様からお手紙を頂けるなんて、光栄でしかない。


 

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