66.はじめての挫折
俺は、ミアの腕の中で泣き崩れてしまった。
この天才、鬼頭流星、いや、もといルーカス。
これは人生における初めての挫折だ。大切な仲間を全然守れなかった。
あっという間に仲間たちが消えていってしまった。俺は異世界で彼女を作ったことにより、自分が最強になったと錯覚していた。
異世界転生すれば、チート級の力を手に入れて、何の苦労もなくモンスターを倒し、無敵になれるって能天気に信じてた。けど、現実は違った。
どのような世界であれ苦しいことや辛いことはたくさんあった。
しかし、ステージ6の辺りまではこのゲームは俺の掌の上で回っていた筈だ。ラブコメ以外の点に関してはな。
だが、デビルと言う魔王の強さ、残虐性は想定外だった。何もできずに、仲間の多くが命を落とした。
元の世界でも辛いことはあった。友達ができなかったり、交通事故に巻き込まれたりしたしな。
だけど、こんな挫折感を味わうのは生まれて初めての体験だった。どれだけ強い力を手に入れても、守り切れないものもあるということを知った。
「泣かないで、ルーカス。失敗は誰にでもあるわ。でも、人間はね、過去の過ちを反省して未来を生きるの。」
この時の彼女の言葉を、俺は決して忘れることはないだろう。今でも俺が知っている中で最も格好良い名言の1つだ。
俺は、現在、新しい魔王として、平和な世の中作りに励んでいる。モンスターも人間も、動物たちも、誰もが心地よく暮らせるように。もう、あんな苦しい思いをしなくて済むように。それから、魔王の力を悪用しないように。
ミアと結婚した俺は、今は割と幸せだ。
今日も、過去を反省しながら、より良い明日を創ることを目標に精いっぱい生きている。