第305話 第三学年一学期20 ハギ視点
長かったようで短くも感じた冒険者実習の授業も終わり、通常授業──になることなく、今日は午後から文化祭の出し物決めだ。
とはいえこの出し物決めは実習の前から話し合われていたことで、ある程度出し物の方向性は決まっていたりする。ただ──
「何を言ってんだ! 男子がメイド姿で女子が執事姿! この意外性でこそ勝負できるってもんだ!」
「阿呆ぬかすな! 女子の召し物なぞ着れぬわ!」
「意識してんじゃねぇよ思春期! 借りられんだろ!」
「男と女とではまず体形が違うだろ!」
「魔物の毛皮着て接客するってどう?」
「たくましくなったわねアンタ……」
喧々囂々……そう形容するのが相応しいと感じるくらい、教室のあらゆるところで様々な案が出ている。
まとめ役である実行委員ことタクヤさんはと言うと、男子がメイド服、女子が燕尾服を着て接客するという案を出して貴族さんと言い合いをしている。なお私は普通の接客でいいと思う。メイド服、昔から着て見たかったんだよね。ライアお姉ちゃんは頑なに着させてくれないし。
ちなみに案を出していない人も少なからずいる。私とかね。ヒヨリちゃんとツユちゃんは……あ、タクヤさんと議論してる。ツユちゃんがタクヤさん側についてるけど、変身願望でもあるのかな?
そして担任のマツバ先生と言えば教室の端で頭を抱えている。片手には胃薬……そういえば前、ケイがお薬には飲む時間が定められている~とか言ってたなぁ。
まあ様子見はこれくらいにして、私も意見しようと席を立つ。向かう先はタクヤさん達が陣取る教卓前。勿論、ヒヨリちゃん達の側に立つ。
メイド気分を味わってみたいし、それにケイに来てもらえるならきちんとしたのやりたいから早く決めたい。あと学生として一度しか体験できない楽しむことに特化したお祭りだし、準備間に合いませんでしたとかあんまり良いとは思わないし。
■■■■
「おー、やっぱ楽しそうだな」
帰宅後すぐ、ケイのいる応接間で午後の授業の話をすると、そんな感想が返ってきた。
「やっぱり、ケイも参加したいとか思うの?」
「え、拓哉がいるんじゃなぁ……」
楽しくなりそうだけど、俺基本ストッパー役にまわる羽目になるし。と想像に難くないことを言いながら頭をかいて暫く考えこむ。
「──けど、参加したいかもな」
「どうして?」
「拓哉が主催側にいるからな。面白くなるに違いない」
「……」
ケイは懐かしむような口調で言う。
そういえば、ケイの学生生活ってタクヤさんとの思い出で溢れているんだなぁ……。
「それに、ハギもいるからな」
「私?」
「おう」
ケイは照れくさそうに笑って続ける。
「学生の間に恋人なんて今世が初めてだからさ、学園祭とか、学生として一緒に参加してみたいなってくらいは思ったな」
「へ、へぇ……」
予想外の返答にどう答えていいかわからなくなって、何とも言えない返事をしてしまう。
一緒に……学生として、かぁ。
「わ、私着替えてくるね!」
「おー」
咄嗟の判断で私はそそくさと自分の部屋に戻る。
その間も先の言葉が頭の中で勝手に反芻される。
わーわーわー……思考がまとまらない。落ち着こうとしても、ケイの言葉が過ってすぐに駄目になる。それは部屋に着いても同じ。私は制服のままベッドに背中からダイブした。
「最近、ケイがストレートな物言い過ぎて困る」
そりゃあ良いことだとは思うけど……前世からの初恋を拗らせてる身からするとちょっと刺激が強すぎるかなって。
もちろん、嬉しい。嬉しいけども……本当に身が、特に心が持たない。悶え死んでしまいそうになる。というか今鏡見たら確実に真っ赤だよね。
「あれ?」
試しにと上半身だけ起こして鏡に目を向けてみた。普段あまり使わない鏡だけど、物はいいらしくて奇麗に私の部屋は映している。
だけど私は──
「……半透明になってる?」
鏡に映った私は、若干だけど透けていた。
また遅刻。今週末は……あー、バイトです。慣れてきたので更新できると思いたい(慣れた頃に痛い目見るタイプ)。




