第302話 第三学年一学期17 ハギ視点
──どうしてこうなったんだろう。
先程まで会計をしていた筈なのに、いつの間にか私は──エルヴェお姉ちゃん主導で――商会の部屋の一室を借りて、『真・姉』と達筆で書かれた横断幕が飾られた部屋の真ん中の席に座らされていた。
目の前にはバチバチと火花を散らしているライアお姉ちゃんとエルヴェお姉ちゃん。視界の端にはどうでもよさそうにしているケイと、呆れた様子のアドレルさんがいた。
「えー、ただいまより『真なる姉は誰だ? 第13回姉決定戦』を開幕しまーす。司会兼解説は黒谷啓と」
「……アドレルだ。よろしく頼む」
パチ……パチ……とまばらな拍手が飛ぶ。全員エルヴェさんが呼んだエルフさんだけど、全員目が死んでる? そして一部の人が私に生暖かい視線を送ってる。
どうしてこうなったんだろう……私の意識は現実逃避するように数分前を回想する。
「──ライアお姉ちゃんのためだもん。お礼なんていらないよ」
そう言ってすぐ、空気が重くなったように感じる。これ気のせいじゃないよね。
具体的にはケイと一緒に下りて来たエルヴェお姉ちゃんのいる辺りから凄い圧を感じた……え、空間歪んでる!? 怖っ。
なお圧を向けられているライアお姉ちゃんはというと……
「うふふ。それもそうですね。私はハギの姉ですからね」
柳に風といわんばかりに私の言葉にそう返す。
その返しで更に圧が強くなった気がする。怖ぁ……。
ケイ……と助けを求めたけど、明らかにこちらから目をそらし、興味もないだろう化粧品売り場に体を向けて部外者を装っている。
あれ? 味方がいない……ここ何て死地?
「フフフ……ハギちゃんは私の妹よ?」
「おや、随分歳の離れた姉妹ですね」
「……(ニコリ)」
いつの間にか、二人が笑いながら対立していた。雰囲気は和気藹々なんてものとは真逆。一触即発。本当に戦場にいるみたい。
というかライアお姉ちゃんもエルヴェお姉ちゃんのこと言えn──なんでもないです。
「貴女もハギちゃんとはまるで似ていないわねぇ」
「外見だけで決めつけるとは浅はかですね」
「それは貴方も同じでしょう?」
フフフと笑ってるのに圧が凄い。昔ケイから聞いた「笑顔は威嚇する為の表情」っていうのはあながち間違いじゃないんだなぁと現実逃避するくらいには怖い。会計をしていた店員さんの笑顔も心なしか強ばっているように見えた。
なおケイは関与せずな姿勢を貫いている。というかあたかも関係ありません感を出して少しずつ遠ざかっている。
私も逃げようとこっそり、それも『偽装』スキルも使って逃げようとしたけど……
「ハギ。どこへ行くのです?」
「あらハギちゃん。どこへ行こうとしたの?」
両肩を掴まれて阻まれて、元いた場所に戻されてしまった。というかこれ邪魔じゃないかな? 私たち以外お客さん……あれ? 何か憐れむような視線を受けてる?
「……戦争ね」
「ええ」
そしてお姉ちゃんたちは物騒な言葉を使ってる!?
驚いて二人の方を向けば、エルヴェお姉ちゃんはバックヤードに、ライアお姉ちゃんはケイの車椅子を押して私の方へと戻ってきているところだった。
「さあハギ、戦争を始めますよ」
「え? どういう意味!?」
清々しい笑顔でそう言うライアお姉ちゃんに連れられて、私は商会の一室に向かう。そこではライアお姉ちゃん並みに輝かしい笑顔をしたエルヴェお姉ちゃんとアドレルさん、そして『真・姉』と書かれた横断幕と一段高いところに置かれた高そうな椅子があった。
──こうして、訳もわからぬまま『姉決定戦』なる意味不明な大会は幕を開けることになったらしい。
13回もやってるんだ……。
姉は一日にしてならず……使おうと思って没になったネタです。




