プロローグ
処女作です。緊張しますなあああああああ。
こんなはずじゃなかった。
俺、山田圭の今まで人生を表すためにこれほど適した言葉はあるのだろうか。ある程度の大学に通い、ある程度の企業に内定を貰った。残りの大学生活を社会人になるための有意義な準備期間にするためにアルバイトの労働時間を減らした。
しかし、現実はかけ離れている。毎日勉強をするわけでも、社会貢献活動をしているわけでもない。それに大学には友達がいないし、俺は地元を離れ、東京という人口密度と孤独感が反比例になっている場所に一人暮らししている。ただネットを彷徨い続け、無駄な時間を垂れ流しているだけであった。特にゲームの世界は気持ちがいい。いつだってヒーローで格好良く、誰かが頼ってくれる。
今日も俺は人を助け、勇敢な仲間と冒険に出かけていた。かなりの時間が経過しており、他の仲間がログアウトした段階で自分も一旦現実世界に帰ってくることにした。時刻は20時をまわっていた。
「ふぁああああああああ」
現実は退屈だ。
こんなことになると高校時代の俺は気付いていただろうか。高校では野球部に所属し、キャプテンで4番。甲子園こそ出場は叶わなかったが公立高校で県予選準優勝を成し遂げ、巷では騒がれていた。その頃は有名人気分で彼女なんかはコロコロ替えていた。自分で言うには少々気が引けるがかなり調子に乗っていたのだ。
そんな俺が大学で野球を続けなかった理由、それは単純に野球では燃え尽きたと実感してしまったのだ。加えて調子に乗っていたので他の事でも自分は何か成功させられる根拠のない自信に満ち溢れていた。
結果がこれ。結構笑える。いや、笑えないな。まあこんな事を考える気力もない。何故なら本気で腹が減っているからである。何か食べるために冷蔵庫を開ける。
「まじかよ…。」
この光景は壮観である。
何もない。
そう、何もないのだ。それもそのはず、もうかれこれ1週間は外出していない。このままではこんなにも流通システムが発達している日本で餓死する危険さえある。とうとう俺は覚悟を決め、食料調達のため外出することにした。季節は9月、少し肌寒い。俺は一枚羽織り、玄関のドアノブに手をかけた。
その瞬間、ドアノブを中心に魔法陣が広がった。
「おわっ?えっ?」
意味がわからない。ただ触ったままでいいはずがない。慌てながらも手を離そうとする。なのに、全く離れない。
(ボンド塗りたくってもこんなにびくともしないことないでしょ!!)
焦る俺を華麗にスルーするかの如く魔法陣がまばゆい光を放ちつつ、俺の意識は奪われて行く。
ここまで実際のところ1秒も経っていない。1秒も経たないうちに山田圭は自室から姿を消した。東京に知り合いが少ない圭が神隠しとも言える事象に巻き込まれ消えたことは大家さんがお金の振込がないことに気付き部屋を訪れる事で発覚するのだが、それは1ヶ月ほど後になるのは余談である。




