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3話:愛の告白されました【正直引きます~】

 

「ぬおぉぉぉ!ビョンビョンする!これビョンビョンするぅ!?」


 俺が捉えられたのは、おそらく俺と同じ『魔力操作』によって練られた網だ。

 暴れても暴れても、解けやしない上に、俺より魔力が強いのか消すことも出来ないぞこれ!


【3人ほど子供を同じ場所に集めた時点で、山辺さんがここに来ることを予測して罠を張ったんでしょうね~】


 そして、もっとも油断するタイミングで発動させ、見事に俺を捕獲した訳だ。

 

【いやぁ、罠があると気づかずにふんぞり返る山辺さんの滑稽なこと滑稽なこと~】


 うぉぉぉお!恥ずかしい!恥ずかしいぞ~!

 何が恥ずかしいって、俺を見上げる子供たちの「えぇ~…?」って視線がすっごい恥ずかしい!


「見ないで!こんな俺を見ないでぇ!?」


「お前…私たちをこんなにあっさり捕まえておいて、そんな…」


「い~や~!ゴメンナサイ!調子乗りました!幻滅しないでぇ!?」


 ちくしょう!俺を華々しい勝利から一転したこの状況に叩き込んだ奴はどこのどいつだ!

 すぐに見つけ出して、ここから出してもらえないか交渉しなければ!


【あ、コテンパンにするとかじゃないんですね~】


 バッカお前、もうこれ詰んでるだろ。後は全力で土下座だろ。


【それでこそ山辺さんです~。ちなみに、下手人はそこの屋根の上にいますよ~】


 ……そうだよな。普通に考えて、そこにいるよな。

 屋根の上に向かって「何奴!?」とか言ってたもんな。

 俺は体を回転させ、屋根の上を見る。


「ふふふふ…捕まえましたよ、精霊さん」


 逆光をバックに、屋根の上から声が聞こえて来る。

 身長は…低いな、子供だろう。

 少し背中をそらしつつ膝を曲げ、どこか日曜の朝に多発するプリティな女の子達の変身ポーズみたいなシルエットが見えるんだが。


「やっべぇ、カッコイイ」


【正気か~?】


「「正気か!?」」


 役所のお姉さんはともかく、子供たちにまで総スカン食らった。

 お兄さん散りたい。


「とうっ!」


 小さな人影は、屋根から素敵なフォームで跳躍する。

 スローモーションでどこを撮っても、けしてかっこ悪く見えないような計算され尽くした跳躍だ。

 クルクルと回転し、スタァァァン!と腰を落としての三点着地。

 そして、バッ!と手を広げる。


「ようこそボクの手の中へ!」


 美少女だ。

 紛うことなき美少女だ。


 うなじがギリギリ見える程度に切り揃えられた、栗色の髪。

 ダークエルフ特有である、褐色の肌。

 先程の女の子と同じく、胸は壊滅的にない。

 しかし、それをむしろ誇るかのように、非常に少ない布面積のビキニを着込んでいるではないか。

 パレオのようなスカートを身にまとっているが、おそらく下着もこんくらい小さいんだろうな。


 そしてその瞳は、星が浮かんでいるかのように輝いている。


【あれですね。シイタケ鍋に入れる時にやる切りかた。あんな感じに輝いてますね~】


「あぁ、まるでこの世の全てを肯定するかのような不純物のない眼差しだぜ…!」


 少し汚い大人である俺からしてみれば、中々にクルものがある。

 その少女は、キラキラと周囲を輝かせ(魔力操作まで使って)、手を広げてポーズを取っている。

 その満ち足りた表情。そこから伺える、彼女の感情は、一つだ。



『決まった!!』



 これに限るだろう。

 まさに完璧な、登場シーンであった。


「ちょっと……おーい!ちょっと!クイン!クインー!」


 ふと、俺に捕まったリーダーが少女に向かって叫ぶ。

 あの子はクインっていうのか。


「ん、なんだい?囮1号くん」


「毛穴を1つ1つ塞ぐぞ?」


「後で粗品を持って謝罪しにいこう」


「よろしい。で、これはどういう事?」


 なんだろう、この子から漂う微妙な親近感。

 クインと呼ばれた少女は、ポーズから姿勢を正しフフン、と笑う。


「決まってるじゃないか!ボクの愛した精霊さんを、盛大に愛でる為に捕獲したんだよ!君たちを利用してね!」


 はい?

【はい~?】


 役所のお姉さん、この子なに言ってんの?


【精霊を愛したとか言ってますね~。馬鹿ですかね~】


「アンタ、またそんなこと言ってんの…?その為だけに、私らに「君たちはあんな精霊の相手もできないのか?」とか言って相手取らせたわけか?」


 リーダーの女の子の目が座る。

 ヤバイ、これは怖い。

 周りの子たちも、皆クインを睨んでる。


「……ま、まぁ待っておくれよ。結果として、ボクは捉えられた君たちを助けるヒーローになってる訳なんだけど、そこに関しての感謝を込めて貰って、この件はチャラにしてもらうと…」


「そこの精霊」


「はい!!」


 俺を巻き込まないで欲しい。


「今すぐこの拘束を解きなさい」


「はい喜んで!!」


「ちょ、精霊さん!?」


 即座に彼女たちを拘束していた魔力を消す。

 許せ、クインとやら。会ったばかりのお前より、俺は我が身が可愛いんだ。


「さぁて…覚悟、いいね?」


「お、落ち着いて、ね?争いは何も生まない!そうだ、今度皆にブルブルを狩ってご馳走しよう!もちろん一番美味しい部位はテレス!君の物だ!ね?」


「ブルブルに加えてナナモネの実を全員分」


「任せてよ!3日で用意する!」


「よろしい。8割殺しから半殺しにしてやろう」


「………オンジョウなサタにカンシャしマス」


「やれ」


 それはそれは絵になるやられっぷりでした。

 彼女とはうまい酒が飲める。俺はそう確信した。



                       ◆



「お~い、大丈夫か?」


「………ほげ」


【ダメですね~、埋めて差し上げましょう~】


 いや生きてるよ。埋めんよ。


 俺は今、完全にのびてしまっているクインとやらを見下ろしている。

 かれこれ、1刻になるだろうか。

 目を覚ます気配はない。


 なんで他の所に行かないのかって?


 まだ網が消えないからだよ!

 こいつ、今はこうしてのびてるが、この網の強度を見るに、結構な実力者だと思う。

 少なくとも、俺が勝てない程度のだ。


「はぁ…お~い。精霊がいるぞ~」


「セイレイ!!」


 仕方なく、俺がそう言うと、まぁ露骨に反応してくれやがった。

 精霊、精霊ね。まぁ確かに精霊だけどね。


「あああ、気絶したボクを守ってくれていたんだね!精霊さん!」


「いや違うよ。出れないんだよ」


 鼻血とか出てるけど大丈夫かコイツ?

 可愛い顔が台無しになってるのに、そのシイタケな瞳は全く曇っていない。


「はぁ、はぁ、ハァハァハァハァ、精霊さん、精霊さん!!」


「いやいやいやなになにない怖い怖い怖い!?息を荒くするな!近づいてくるな!瞳孔が開いてもはやビーム撃てそうになってるからそれ!?」


【うわぁ、イッちゃってますね~】


 ダークエルフはなぜか露出過多な服装が多いが、この子は特に布面積が小さい。

 そんな子が息を荒くして近づいてくるなんて、本来ならマジで事案案件だろう。


 たとえそれが、エルフ特有の18歳以上ロリだとしても!だとしても!


【大事ですよね、注意勧告~!】


 しかし、しかしだ。

 ことこの子に至っては、なんかこう、エロさよりも雰囲気的な危なさの方が勝っちゃって怖くて怖くてしかたありません!?


「落ち着け!とりあえず落ち着け!そしてこの網を解け!そうしたら話を聞いてやる!」


「解いたら絶対逃げるからダメ♪」


「くっそ!流石俺に親近感を沸かせる女。理解していやがる!」


【自白する辺り山辺さん少し愉しんでるでしょ~】


 い、いや、そんなことは無いんだがな。

 この子、危ないし。


「改めて、自己紹介をば!ボクの名前はクイン。この里で一番の精霊好きを自負する精霊使エレメンタラーいだよ!」


 しかもコイツ最悪のジョブ持ってやがる!


【エレメンタラー。精霊に呼びかけ、その力を振るうという魔術師の亜種ですね~】


 よりにもよって、こんな奴がエレメンタラーとは…!

 どうやら、早急にこの場を離れる必要があるようだ。


「よ、よろしく。俺は山…」


「ヤマベ、だろ?知ってるよ……君を紹介の日に見てから、ボクの胸は常に高鳴り、常に君を見ていたんだからねっ!そう、里の散策をしていた時も、ナルゥ様に襲われていた時も、木の実を吸収していた時もトイレができるか試していた時も魔力溜まりで一休みしていた時も他の精霊に命令を下していた時も大婆様の胸をガン見して殴られていた時も、どんな時も!」


 ひ、ひぃぃぃぃ!?

 怖い!この子怖いよぉぉぉ!?


【ガチモンです!?恐怖です~!?】


「君の魔力の残滓をクンカクンカしている時……ボク、もう我慢出来なくなったんだ……エレメンタラーとして君のそばに、常に一緒に居たいんだ!これはきっと…そう、恋ってやつだよ!」


 その恋が純粋かつサイコじゃなければ大歓迎でしたがね!?

 もうね、この子は無理!アタシ無理!?


【そそそ早々にお引き取り願うことをおすすめします~!】


 そうします!


「あ、あのな!?ききき気持ちは嬉しいんだが、俺は人格が男なんだよ。つ、つまりだ。君みたいな可愛い女の子と一緒にいた日には、な?イヤだろ?」


 頼む、イヤだと言ってくれ!

 俺は嫌だ!俺みたいなのが近くにいたら嫌だ!


「それに、俺らは初対面だ。お互いの事をなにも知らないで、そういう関係にはなれない…精霊と喋れるってだけで安易に相手を決めちゃあダメだ。な?」


「うぅ……!」


 おぉ、何かを悟ってくれたかのようなリアクション。

 良かった。わかってくれたか…!



「ボクの為にそこまで考えてくれているなんて……!確信したよ。ボクのダーリンは、君しかいない!」



 はぁい逆効果ぁぁぁあああ!?


「えへへ…それに、それにだね?ボクは、君がそばにいても、全然気にならないよ?」


「い、いやいやいや、やっぱりね、異性がそういう、ふしだらな、な?ダメだって…」


 グゥ、盲目め。このままではまずい!

 クインは、俺に流し目を送りつつ、少しずつ距離を詰めている。

 このままでは、この小説がR指定にぃぃ!


「だってぇ…」


「え、あ、や、近、ち…!」


 瞳を細め、クスクスと笑いながら、クインが俺に囁いてくる。

 その、衝撃的な一言を……



「僕達、同性だし…ね?」


「は?」


【は?】


 お、おま、おまま……


「あれ、ほんとに気づいてなかった?」


 お前、男かよぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!?

 

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