8話:虎穴…いや、エルフ穴?【下ネタとか最低です~】
「ま、待ってくれってば!だから俺は、この森をどうこうしようなんてつもりは一切ないんだよ!」
ぴょんぴょんと空中を跳ねながら言い訳を始める。
ナルゥからはすんごい睨まれてるんだが…こいつ、目元隠してる割にわかりやす過ぎるだろ。
しかし…この大婆様相手に、下手な言葉が通用するか、微妙な所だ。
【ん~、しかもこの人、スキルで言えば『真偽看破』を持ってます~。嘘言ってないってさっき言ってましたよね~?】
完全にチートじゃねぇか。
……つまり、俺がここを切り抜けるには、
【正直に話して、受け入れてもらえるか賭ける、と~】
さっきから俺の生命線細すぎない?
この数時間で何回死にかけてるよ。
とはいえ…まじめにそれしかないんだろうな。
【山辺さん~…】
ここまできたら、もうなるようになれだ。
当たって砕ける。ダメなら砕ける前に逃げる、それでダメなら噛み付いて、噛んでダメなら土下座だ土下座!
大婆様に向き直り、なるべく誠意をもってる感じに、真面目に言う。
「俺がこうして話をしているのは、前世の記憶があるからだ」
「…………」
「死んで、精霊として転生した。そん時に、自分の種族を率いるって力がついたと聞いた。こいつらが俺に近づいてくんのは、そのせいだと思う」
「転生だと?馬鹿な…し、しかし、やはり貴様が原因で精霊は…!」
「黙れと言うとろうが」
あふんっ、という声と共にナルゥが倒れる。大婆様が氷の塊をぶち当てたからだ。
さっきからコイツのキャラが不憫な感じになってきてるんだが…
「続けろ」
「お、おう。でも、精霊が俺に近づいてくるなんて知ったのはさっきが初めてだし、命令したのはついさっき、「矢の射線からどけ」ってのだけだ。アンタがいなかったらダメだったけどな」
ほう?と言って大婆様がナルゥを見る。
固まるナルゥ。
「とにかく、俺の身の上はこんくらいだ。すぐにこの森からも出て行くし、あんたらに危害は加えない。約束するよ」
【特典などについては言わないので~?】
聞かれない限りは嘘にならん。
特典なんて言葉、スキルなんて要素、俺と役所のお姉さんしか知らないんだからな。
【なるほど~】
さて…どうなるか。
大婆様は、少し考えている様子だ。
俺を見据え、その言葉の真意を探ろうとしているのかもしれない。
しかし、俺の思いは常に一つだ。
死にたくない。
これに尽きる。
だからこそ、俺に嘘はない。
少なくとも、ことココに限り、嘘なんてついていないのだ。
「……残念だが、お前をこの森から出す訳にはいかんの」
しかし、現実は俺を容易に裏切る。
「お前が戦いを望んでいないのはわかった。小物で、小心で、邪念を持ったものだというのもわかった。少なくとも、戦士ではない」
「泣くよ?」
「泣け。……しかし、お前のその力は問題だ」
大婆様は、説明を始める。
問題は、精霊たちが既に俺を補足してしまっていることだという。
本来、精霊は魔力のある場所に留まり、そこを中心に自然を育むものだ。
しかし、俺を補足した精霊は、そうではない。
『率いる者』の効果により、俺を中心とした活動リズムになってしまっているらしい。
役所のお姉さんが否定しない所をみると、おそらくその仮設は正しいのだろう。
「お前が望まずとも、精霊たちはお前の元に集った。それはすなわち、お前をが出ていけば…」
「…精霊達もこの森を出ていき、森が枯れる、と?」
「うむ。加えて、この森の外は魔力が薄い「廃れた地」。精霊たちは、荒野に出た瞬間に枯渇し、消えるだろう」
「俺が、こいつらに「残れ」と命令すれば?」
「それで全てが留まる保証はない」
森が枯れる、という言葉を否定しない大婆様。
そして、その森を守る精霊たちを出す訳にはいかない。
ナルゥと同じ意見って、訳だ。
「…じゃあ、どうすればいい?俺は戦えない。お前さん方がその気になってしまえば、抵抗もろくにできない。だからこそ、このままだと生きる為に精霊たちにすがるしかないんだが」
「そうであろうな」
俺を睨み、見下ろしてくる。
後ろでは、ナルゥが改めて弓を握る手に力を込めた。
……腹、括るか?
俺がそう思い、行動を起こそうとすると…大婆様は、思いもよらない事を口にした。
「だからこそ、お前には我が里へ来てもらう」
「「はぁ!?」」
俺とナルゥの声が重なる。
「「ちょ、ホントなに言って―――」」
「【黙れ(~)】」
「「うぐぅっ」」
なんだこの一連の流れ!打ち合わせしてねぇぞ!
えーとつまり?俺を自分の収める国に招待する訳だ。すると?
【山辺さんを囲うことにより、精霊の流出を防ぐつもりみたいですね~。それだけじゃ、なさそうですが~】
確かに、言ってしまえば俺は精霊に対する楔みたいなものになれるだろう。
だが、精霊が一箇所に固まるってことにもなると思うんだが…?
その事について、質問してみる。
「ふむ、言わんとしている事はわかる。しかし、お前は少しなら命令もできると言うたな。つまり、より訓練すれば精霊たちに指示を出せる存在にもなれると言うことだ」
「…なるほどな。つまり、俺に精霊たちを動かしてもらって、森の環境を整えてもらうって訳だ」
出会って間もない精霊に、そういうお願いするもんなのか?
しかし、この女は頷いている。
本気で俺を連れ込むみたいだ。
「お、お言葉です!大婆様、この者を村に呼び込むなど、私は反対で―――」
「ナルゥ、貴様にはこやつの監督を命じるぞ」
「「はぁ!?」」
俺とナルゥは顔をあわせる。
<ないよな?>
<うん、ないない>
<だよな?>
「「有りえませんが!?」」
「適任だな」
【めっちゃ仲いいじゃないですか~】
くぅ、何故だ!俺たちの考えと世界の認識が大きくずれている!
俺を殺す気満々でしたやんこの人!?
「ナルゥ、お前は既に、精霊を一匹射抜いておろう。どう責任を取る?」
「うぐぅ…!?」
「この命を全うすれば、不問といたす…考えよ」
向こうは向こうで、不本意ながらも精霊を殺したことに対する責任を問われているらしい。
なんか、その…ごめん。
【ですがこの申し出、悪いことではありません~。ダークエルフの里でしたら、魔力の補給もできますし、精霊達がいる限り安全は保証できますよ~】
少しでも危険と判断されたら逃げ場がないわけですがそれは。
【今と同じです~】
うぅ…否定できない。
しかた、ないのか…。
「……………」
「……………」
じっと互いの顔を見る、俺とナルゥ。
そして、互いに、ため息をつく。
「……ナルゥだ」
「散々言ってたし、覚えたよ。俺は山辺だ」
「ヤマベ。変な名前だ」
「うっせ」
「あ?」
「すみません」
【素晴らしい友情の芽生えですね~】
「やはり適役よな」
もうお前ら、黙れ…。
こうして俺は、危険渦巻くダークエルフの里に、連行される事になったのだった…。




