30 黒タイツ
傭兵ギルドの中は少し中世っぽい雰囲気があった。
これはニムルスのギルドもそうだったので傭兵の文化なのだろう。
電気は通っているし電灯もついているけど流れる空気のようなものが違っていた。
「傭兵ギルドは国連とも少し距離があるからね。だから逆に国連非加盟国にも支部があるわけだけど。でも傭兵ギルドだって地球の影響を受けてないわけじゃあない。銃火器も置いてあるしね」
瑛さんが説明している相手はミーリャさんだった。
僕は似た話を傭兵ギルドに登録する時瑛さんから聞いている。
ミーリャさんの方は傭兵じゃないと聞いたけど、傭兵ギルドに来ること自体が初めてだったのかも知れない。
「みんながちゃんと来てくれて良かった。知らない人だけで怖かったし」
ミーリャさん実は不安だったようです。
無表情すぎて感情が読めないのも大変だ。
瑛さんは軽くミーリャさんにギルドについて説明していた。
その後手続きのためにギルドのカウンターへと向かう。
アロも一緒だ。
ミーリャさんが残される形になったので僕もミーリャさんと一緒に残った。
周りに武器が飾ってあったので一緒に見ようと思う。
「銃火器はたいしたことない。神器機関で作れる物しかないから。でも剣とかはすごい。見たことないのもある」
ミーリャさんの所属する神器機関は地球製の様々な物をこの世界で製造することを目的とした機関だ。
その中には銃火器などの武器類も含まれる。
ミーリャさんは戦闘系のようだしこういう方面にくわしいのだろう。
僕は武器にはあまり興味がなかったけど、今は銃火器が欲しい気もする。
僕は遠距離攻撃の手段を持っていない。
光武装の射程延長を覚えるのがベストとは思うけど、銃火器を使う手もあるか?
『どうじゃろうな。瑛の話じゃと銃火器でドラゴンは倒せぬという話じゃからの。ウホゴリラには有効じゃったかも知れぬが。雑魚が相手なら妾が風や水系統の魔法で攻撃するという手もある』
その方法も取れないわけではない。
トキナさんは苦手な風や水の属性ですらSランク相当の威力で出せる。
銃火器は良くてBランク程度の力しか出ないそうだから、Aランク以上なら自分の力で戦った方が強い。
銃火器製造の総本山である神器機関に所属するミーリャさんも、それらしい武器は持ってないしね。
というかミーリャさんあきらかに武装してないな。
ホットパンツにパーカーを着ている僕が言うことじゃないけれど。
ミーリャさんの格好は、神器機関の制服なのか神官のような服を着ている。
ただしスカートに相当する部分は短くて中から足が良く見える。
その足には黒いタイツのようなものを穿いているのだが、それがまたなんとも言えない素晴らしさを醸し出している。
そのタイツは触ってみると生地がとっても柔らかくて気持ち良すぎてヤバイ!
太ももも手がすべるようにスルスルだし、ミーリャさんのお尻もすごくなめらかなさわり心地だ。
すべすべでかつとんでもなく柔らかい。
だがこの柔らかさはただごとじゃない。
パンツの上からタイツを穿いてもこうはならないはずだ。
もしかしてミーリャさんパンツ穿いてない?
ミーリャさんぱんつはいてない!
透けないタイプの黒タイツで覆われているから見た目は大丈夫だろうけど、さわり心地が気持ち良すぎでやばいですよミーリャさん。
ミーリャさん涼しい顔してとってもエッチです。
『驚きの気持ち良さなのじゃ』
全くです。
ミーリャさんのお尻は気持ち良すぎてけしからん。
…………。
今日も右手が元気です。
もちろん僕の右手をトキナさんが動かしてミーリャさんのお尻を触っています。
神官服のスカートの中に手を入れて全体の感触を確かめるように撫で回しています。
タイツごしに直にお尻を触っているので気持ち良さがヤバすぎる。
でもミーリャさんの視線が痛いです。
ミーリャさんは無言かつ無表情のままじっと僕の目を見つめてくる。
むしろ大声をあげてビンタでもしてくれた方が僕は救われるかも知れない。
視線に耐えられそうにありません。
「…………」
僕は謝ろうと思いました。
タイツごしに触るミーリャさんのお尻は本当に気持ちがいいのでそれを正直に話して誠意を込めて謝りたいと思います。
と思ってまずは右手を左手で放そうと思ったのだけど、その時僕に攻撃が来た。
「へやっ」
思わず変な声をあげてしまう。
そう、僕はミーリャさんから攻撃を受けた。
ただしエッチな方向で。
ミーリャさんは無表情な顔のまま左手で僕のお尻を触り返して来たのだ。
想定外の反撃でした。
しかも……触り方がとってもエッチで気持ちいい。
「あっ……その、ミーリャさん?」
「人のお尻を触っていいのは触られる覚悟のある人だけ」
哲学的な反論を受けました。
いや、僕はミーリャさんにお尻触られるのは全然嫌じゃないですけどね。
むしろ気持ち良すぎてヤバイ。
こんな公衆の面前で!
と言っても僕とミーリャさんの周りには人が少なくて助かった。
『妾も時と場所は選ぶ。全て計算ずくで今がチャンスと思ったからこそ触っておるのよ』
触られる人の了承を取っていない時点で計算も何もないと思うのだけど。
『じゃが……これは妾も想定外じゃった。このミーリャという女……手練じゃ! まさかこんなところでこれほどの使い手と会おうとは……これがSランクの実力というものか。妾としたことが油断しておった』
いや、もう一体何のSランクなのか訳分かんなくなっていますが。
とにもかくにも気持ちが良すぎる。
右手から伝わるミーリャさんのお尻の感触も気持ち良すぎるし、ミーリャさんの左手で触られる僕のお尻もとんでもなく気持ちいい。
お尻を触る気持ち良さとお尻を触られる気持ち良さの両方を同時に味わい、僕は気持ち良すぎて男の子なところがすごく男の子になってしまいそうです!
ミーリャさんは僕の隣にくっついてきて、左手による攻撃をさらに加速させてくる。
『まだ攻撃力が上がっていくじゃと!? じゃが触る気持ち良さと触られる気持ち良さの両方を感じているのは向こうも同じ。このまま押し切るぞ!』
トキナさんは一体何と戦っているのでしょう。
だがミーリャさんもやる気のようで、2人は何かをかけて戦っているかのようだ。
――これがSランクとEXランクの闘い。
いや、僕にも何がなんだかわけ分かんないですが2人の死闘は続いている。
その死闘に巻き込まれている僕はAランクなので闘いについていけずに最初にやられそうなのですが、気持ち良すぎて我慢できなくなっちゃ――
「あーっ! また印世が! 印世の右手がまたいけないことをしてるのにゃ!」
僕がやばくなりそうな所でアロと瑛さんが戻ってきた。
正直ちょっと助かりました。
『……この勝負はとりあえずお預けということか』
「……。ドロー?」
僕は何もしゃべってないけれど、なんだかトキナさんとミーリャさんは通じ合っている気がします。
言葉を交わさずとも通じ合える何かが2人の間に芽生えたのかも知れません。
「まったく、印世はこれだからにゃまったく。印世はアロが目を離すとすぐ誰かのお尻を触ろうとするにゃ! 印世は本当に悪い右手さんなのにゃ!」
アロに怒られてしまいました。
「私は平気。印世君のお尻触るのもちょっと気持ち良かったし」
ミーリャさんに気持ち良かったと言ってもらえた。少し恥ずかしくなっちゃいます。
「にゅ。まあミリャーがそういうならいいけど。でも印世は触る前にちゃんとミリャーにお願いしますしたのにゃ?」
「……してません」
「ふう。ホント印世は悪い子なのにゃ。触る前にはちゃんとお願しますするってアロと約束したのに約束守れていないのにゃ。そんな悪い子はお仕置きにゃ! しっぺするから右手を出すのにゃ!」
全面的に僕が悪いので僕は大人しく右手を差し出しました。
まあアロにピシピシしっぺをされても特に痛くはなかったけれど。
「ふう……。今日はこれくらいにしてやるにゃ。あ、ミリャーもしっぺするにゃ? 印世はちゃんとお願いします出来なかったから、ミリャーには印世にお仕置きをする権利があるのにゃ!」
アロの言うことももっともだ。
やはり被害者はミーリャさんなので、ミーリャさんに何かされても文句は言えない。
むしろお尻を触った瞬間に平手打ちとかされる方が自然な流れだったと思う。
「じゃあせっかくなので私も印世君にお仕置きする。印世君お尻を出して」
僕に逆らう権利はないので、近くの椅子に座ったミーリャさんの上に四つん這いみたいになって、お尻をぺんぺんされてしまいました。
こっちも痛くはなかったです。
むしろたくさん触られて気持ち良くなっているところをさらにペンペンされて、ちょっと気持ち良くなってしまった。
違う世界に目覚めてしまったらどうしよう。
付け加えると、ミーリャさんはお尻をペンペンしつつ僕のお尻の感触を味わっているようにも感じた。
「ちょっとペンペンしすぎたかも知れない」
しばらくペンペンした後、ミーリャさんは僕のお尻を優しく撫でてくれました。
もちろんとっても気持ちが良かったです。
「あー! あれにゃ! ミリャーはただ印世のお尻触りたかっただけなのにゃ!」
「うん」
ミーリャさんは大きく頷いて肯定した。
『くっ、妾としたことが。……まさかお尻を叩かれて気持ち良くなってしまうとは』
トキナさんも気持ち良くなってしまっていたようだ。
僕も気持ち良かったのでこれは仕方がない。
やはりミーリャさんは手練であった。
見た目の印象は違うけど、もしかしたらミーリャさんはトキナさんと同じ側の人間なのかも知れない。
手練側とでも言えばいいのか。
『ふふ。ミーリャとは良い酒が飲めそうじゃ』
ミーリャさんは僕と同じで未成年だからお酒飲めないと思うけどね。
まあこの世界での飲酒が何歳からかは知らないけれど。
「えっと……とりあえず色々な手続きも終わったから、まずはサラスタンの言葉を覚えることから始めようか」
気を取り直して真面目にしようと思います。
まずはアロが言語習得魔法のある部屋へと入った。
言語習得魔法の魔道具は1つしかないので4人共覚えるとなると少し時間がかかる。
「アロは大丈夫かなぁ。前に日本語覚えた時にもアロは気持ち悪くなってたから一日くらは休む必要があるかも知れないな」
そういえば、本来なら言語習得魔法はかなりの負荷がかかるのだった。
この街はまだサラスタンでもないけれど、一日はここで過ごすことになりそうだ。
「サラスタン国内にはゲートもほとんどないからね。移動は車ですることになる。SUV(スポーツ用多目的車)でいいのが借りられそうだから、明日はそれに乗ってサラスタンへと出発しよう」
どうやらこの辺りでは車を使うようだ。
「私はこの世界に来て車を見るのは初めて、少し楽しみ」
ミーリャさんもこの世界で車を見るのは初めてのようだ。
「国連加盟国内では移動は本当にゲート一択だからね。街の外は背の高い草や森、地面には石があったり泥沼だったりでまともに車も走れないけど、ここは砂漠だからある意味逆に走りやすい。見晴らしがいいから魔物の不意打ちも少ないしね」
「本当は、ちゃんとした道さえ整備されていればこの世界でも車は有用だ。だけど国連加盟国内では、道を整備する金があったらゲートを増やした方がいいという考え方が大半だ。流通インフラの優先順位が地球とは違うわけだね。ただしこれは国連加盟国内での話。国連非加盟国ではゲートを使いたがらない国も多い」
国連非加盟国ではゲートはあまり人気がないようだ。
でも国連に加盟しないとゲートを使えないわけではない。
だったら使わない理由はなさそうだけど。
そう僕が不思議に思っていると、続きはミーリャさんが説明してくれた。
「ゲートは全部神器機関で作っているから。国連非加盟国では国連機関の世話にはなりたくないという考え方の国も多い。それにゲートの行き先は神器機関からの遠隔操作が可能。国防の関係でそれを嫌う国も多い」
ゲートを国連が管理しているという話は聞いていたけど、正確には国連内の神器機関が管理をしているようだ。
『ふむ。やはりゲートそのものは行き先変更機能が残っておるのか』
トキナさんが感心していた。
『封印が解けてから見るゲートは、常時開きっぱなしで行き先が固定されておったからの。てっきり行き先固定でしか移動できぬタイプのゲートが開発されたのじゃと思っておったが、行き先変更そのものはできるようじゃの』
トキナさんの時代には、ゲートというのは移動のたびに行き先を設定して、毎回新しくゲートを開くタイプが主流だった。
それに対して現在ゲートステーションで使われているゲートは常時開放タイプだ。
開きっぱなしのため行き先はずっと固定されている。
例えばウッホ村と首都コネリアをつなぐゲートはそれ専用の物が存在し、コネリアからサラスタンへと移動するゲートは別の専用の物が存在する。
このタイプだと移動する経路ごとに1組つずつゲートが必要となるため、その意味では効率が悪い。
だが安定性などの面ではこの方式の方が優れていると前に瑛さんが言っていた。
今の方式のゲートなら、異世界召喚装置が消失した時のようなゲート事故が起こる確率は非常に少ない。
「とにかくサラスタン国内ではゲートは当てにできないわけだ。さらに砂漠は日差しが強いしね。ミーリャや印世君は走れば車よりも早いだろうけど、荷物もある。ちゃんと屋根のある車に乗って行く方が砂漠での移動は快適だ」
確かに瑛さんの言うとおりだ。
車というのは、何も速いと言う理由だけで使われる物ではない。
日常生活においては楽だと言うのも大きい。
移動は車でするのがいいだろう。
車は冒険者ギルドで貸してくれるそうだけど、用意できるのは明日になるらしい。
言語習得魔法の副作用もあるし、出発は明日までおあずけです。




