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こちら筋肉防衛軍。  作者: マッスルハッスル。
第④マッスル◆新たなる脅威!!◆
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巡る季節!!

「面白かったねー♪」

 フラフラしている金平を他所に、子供のようにはしゃぐソフィ。青空から射す陽光が、微かな目眩を伴って若い二人を照らす。軽快な足取りのソフィとは対照的に、ジェットコースターの乗り場から、階段を降りる金平の足元はおぼつかない。

「金平さん、喉渇いた」

 仔猫のように、曇りの無い瞳で金平を見上げる。心無しか以前より目に力が無いが、白い肌に整った鼻筋。

 美しさは相変わらずだ。

「あっ、あぁ……向こうに自販機あるみたいだな」

 ジェットコースターの恐怖と、久しぶりにソフィと急接近したことによる緊張からか、ぎこちない素振りになる。

「あれ?」

 ふと気付くと周りに誰もいない。増山が気を利かせて、社長を引き連れて違うアトラクションへ向かったのだ。木下とケイも見当たらないし、チャックとナナも二人きりで別行動している様子だ。

 人気(ひとけ)の無い園内を二人で歩いていると、不思議な感覚に襲われる。二人きりでソフィといるなんて何時(いつ)ぶりだろう。幸せな気持ちと、なぜだか不安な気持ちが混在する金平の心中。

「そう言えば金平さん。前に、私の指を握って、指が綺麗な人は幸せになれないって言ったよね?……どうしてあんなこと言ったの?」

「えっ?」

 ソフィの唐突な言葉に、頭の中の引き出しを片っ端から引っ張り出すが、そんなことを言った記憶は無い。

 指がどうこう言いながら、手を握る……。 きっと木下のことだろう。

 金平の胸を、冷たい物が流れて落ちていく感覚が襲う。記憶が混同しているのか、ソフィは金平と木下を間違っている。

 金平は胸に、鈍い痛みを覚えた。

「あ、あれは……その……ソフィに触る口実が欲しかっただけだよ」

 咄嗟に口をついた言葉。呼吸が苦しくなる感覚と、瞳が熱くなる感覚。

 笑顔でごまかす。

「ふ~ん」

 少し金平から顔を反らすと、まだあどけなさを残す頬が持ち上がったように見えた。

「そっか」

 白い歯を見せると、音も立てずに身を翻し、金平に向き直る。

「金平さんってチャラ男?」

「えっ?そんなんじゃねーよ」

 頭を掻くと、目を伏せた。

 そんな少年じみた金平を見つめ、ソフィが一層微笑む。

「……金平さんってさ、カッコいいよね」

「えっ?」

 何時(いつ)かどこかで、こんなやり取りをした。場所は……スターバックスだったろうか?

 とりとめも無い話をしたことを思い出す。

 ──もう一度、初めからやり直すのも悪くはないのだろうか。胸の中で独り言のように呟く。

 金平も幾つか恋をしたことがあった。あの頃に戻れたら、どんなに幸せだろうと思ったことが幾度かある。何故だか、出会ったばかりの頃の涼子を思い出していた。

 そう言えばどこか似ている。

 気の強い眼差し。

 そっぽを向いたかと思えば、甘える仕草。ソフィとも、いつかは季節のように気持ちが巡り、サヨナラを言わなければならない日が訪れるのだろうか?

 金平の胸中に、波が寄せては返すように、様々な思いが巡った。ふと、金平が自然にソフィの細い指先を掴もうとする。

「なっ!」

 自販機のある閑散とした小さな広場に入った瞬間、金平が立ち止まり、表情を強張らせた。掴みかけたソフィの白い指からゆっくりと手を離し、口を真一文字にする。

「どうしたの?」

 そんな金平の顔を見上げ、眉を潜めて口を尖らせるソフィ。腕を組みながら、自販機の横に背を預けた男。

 長身に、スーツ。目深に被ったスウェードのキャップ。暗い表情の目元から、ギラギラと鋭い眼光が放たれている。

「……スコーピオン!」

 静かに呟く金平。邪気をはらんだ笑顔が、金平へ向けられていた。

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