剣士、相討つ!!
左の肩を静かに引き、右足を前に出す。木下は半身に開いた平星眼の構え。黒光丸・JAPANを右斜め下に開き、カーボンの紋様が鮮やかに浮かび上がる刃を内側に向けた。
裂かれたブレザーの胸元が、一瞬の強風に煽られ、音を立てながらなびく。対する謎のライダーは、之定を上段に構え、体を木下に向け真正面に晒していた。窮屈そうに、両腕がヘルメットを挟み込む。
「……もう一度聞きますけど、どういった用件でしょう?」
気迫に満ちた表情は変えないまま、ヘルメット越しにも聞こえるように木下は大きめの声で言い放つ。
どういった用件も何も、木下を殺害しようとしているのは明白だった。
しかし、木下には腑に落ちない点がある。
──謎のライダーが持つ日本刀。その刀身からは、確かに禍々しい程の殺気が立ち昇っていた。だが、数度に渡る攻撃において、肝心の使い手からは殺意が感じられないのだ。まるで稽古でもしているかのような、粛々とした気配すら感じる。
木下の思いを他所に、謎のライダーが摺り足気味に黒い光沢を放つ革靴を踏み出す。
速い。
「うっ!?」
上段から撃ち込まれた凄烈な一撃。呼吸する間も与えず、二の太刀が右腕を襲う。眼前でS字を描き、その連撃を黒光丸・JAPANでいなす木下。烈火のごとく火花が散った。
「っつ!」
謎のライダーの恐るべき膂力により、黒光丸・JAPANを握る手が痺れた。しかし、竹刀と紛う程の軽さでしかない黒光丸・JAPANは、その頼り無い重量とは裏腹に、名刀の斬撃を見事に耐え忍んでいる。
──軽さ。それは使い手にとって、強力な利となる。
「おぉっ!」
木下が吠えた。咆哮に共鳴するかのごとく、耳に光る銀色のピアスが震える。和太鼓を横から叩く瞬間のように、黒光丸・JAPANを握る両手を後方に構えた。ブレザーの下で激しくうねる木下の上腕筋に込められた力が、謎のライダー目掛け開放された。
三段突き。木下の体が霞みがかって残像の尾を引く。
「!」
その突きは、あまりの速さに一度突いたモーションにしか見えない。咄嗟に謎のライダーが反応し、之定を振り上げ、左右に突きを弾く。
黒光丸・JAPANが放出する筋電力の煌めきと、オレンジ色の火花が乱れ飛び、ヘルメットの表面を踊った。だが、余りの速さに三段目の突きを捌ききれない。
謎のライダーは、素早く上半身を後方に仰け反り、頭部めがけた最後の突きを躱す。
ヘルメットの前面、その中心を下からなぞり、黒光丸・JAPANが疾走した。
紙一重で避けたかに見えたが、ロイヤルブルーのヘルメットに銀糸の輝きと共に走る鋭利な線。乾いた音を発しながら、真っ二つに割れたヘルメットがゆっくりと左右に落ちた。
陽光の下、謎のライダーの素顔が明らかになる。




