支える両腕!!
千切れて舞った百合の花弁──、そんな優雅な動作で着地した木下。続けてマウンテンゴリラの頭部がアスファルトへ落下し、バサバサとした不気味な音を立てながら無造作に転がる。それには一瞥もくれず、返す刀で黒光丸を一閃した。グリップを握る両手がギリギリと音を立て、引き締まった筋肉が闇夜に白く浮かび上がり、獲物に牙を剥くかのような両腕が白狼の顎を思わせる。
首を失ったまま直立する異様な風体のマウンテンゴリラ。首を失ってもなお金平の頭部を握りしめ、掲げたままの右腕を、光りの尾を引く黒光丸が鮮やかに根元から落とす。振り抜いた黒光丸が白い輝きを放出し、金平と木下を目映い光りの中に包みこんだ。
マウンテンゴリラの右腕ごと落下する金平の体。既に意識は失われ、力なくアスファルトへ吸い込まれて行く。いつの間に近づいたのか、背後から増山が金平の体を受け止めた。
「っつ……」
体を突き抜ける衝撃と痛みに、増山が薄い唇の端を歪め、そのまま両膝を着いた。
「木下!」
増山が、金平の頭から引き剥がしたマウンテンゴリラの腕を虚空へ放り投げる。
「ヒュッ」
木下は微かな吐息をつくと、首を圧迫された後遺症による目眩の中、緩やかに空中へ舞ったマウンテンゴリラの腕を凄まじい斬激で格子状に細切れにした。
次の瞬間、強い光りを宿していた木下の両眼が、夜の帳を降ろしたかのように色を失い、疲れて眠りに落ちる子供そのままに、膝から崩れ落ちていく。ゾッとする程白く翳った表情を浮かべていた。マウンテンゴリラに首を絞められたダメージが、容易に回復していない事を物語っている。
木下もまた、他の筋肉防衛軍メンバー同様、気力だけで体を衝き動かしていたのだ。意識を失ってよろめく木下を、金平を支える腕とは逆の腕で受け止める増山。逞しい二の腕がコブを作り、生気を失って尚、美しい青年の全身を支える。
「お前ら、良くやった……」
自らも満身創痍の増山だったが、全身に激痛が走るにも関わらず、その顔には優しい微笑みが浮かぶ。涼やかな瞳に、微かに涙を湛えている。
ふと、遠くから三国が駆け寄る姿が視界に入った。霧散していくマウンテンゴリラの体を見届けると、増山もまた、ゆっくりと、静かに瞳を閉じていく。腕の中で眠る、二人の若き戦友を大切に抱えたまま……。
──激闘に次ぐ激闘の末、辛くも勝利を手にした筋肉防衛軍だった。




