↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら筋肉防衛軍。  作者: マッスルハッスル。
第③マッスル◆戦え!!筋肉の戦士達!!◆
PR
61/151

月下の剣士!!

 闇夜を引き裂いて弧を描いた車体が、空から落ちてきたと錯覚させる軌跡を描きながら、ガードレールへ腹を打ちつけ、爆音を立てて砂埃を巻き上げた。周囲に散乱するハマーのバンパーや砕けたヘッドライト。

 衝撃で、車体がへの字に歪む。ちょうどハマーの中心が、ひしゃけだガードレールの上に乗り上げて、不安定にフラフラと前後に揺れている。軽く押せば、崖下へ簡単に転がり落ちるように見えた。

 車から降りた金平達に背を見せていたマウンテンゴリラが、ゆっくりとこちらへ向き直る。

「ウホホーッ!」

 両腕を掲げると、天に向かって咆哮した。そのまま異様な大きさの拳を胸に叩きつける。

「ウホホッ!ウホウホ!」

 韻を踏むかのごとき雄叫びを上げると、はち切れそうな厚い胸板を幾度も殴打した。

 ドラミングと呼ばれる威嚇行為。

それ事態がすでに攻撃と化した強烈な音圧が、空気を伝わり金平達の体を震わせ、鼓膜を刺激する。

 あまりの爆音に顔をしかめる一堂。しかし、金平はなんら怖じ気づくことなく、怒りに震える形相でマウンテンゴリラを睨みつけた。

「社長!ソフィを救いだす!手伝ってくれ!」

 言いながら、つなぎを素早く脱ぎ捨てた。ビーサンは会社を出た時から履いている。以前より更に鍛え上げられた肉体が、雲間に隠れた淡い月明かりに照らし出され、ダビデ像を彷彿とする均整のとれた筋肉を露にする。

「分かったわ!」

 金平のビキニ姿を見て鼻息を荒くすると、自らもつなぎを脱ぎ始める社長。若干白目を剥いた瞳が、金平の股関に釘付けになっていた。そんな視線もお構い無しに、金平は体を屈めて駆け出す体勢へ。

「チャック!木下!あのゴリラの注意を逸らしてくれ!」

「イェッサー!」

 金平同様、つなぎを脱ぎ捨てたチャックが、両拳の撲殺太郎を目の前で撃ち合わせた。投げ捨てられたつなぎが、崖下から吹き上げる強風に巻き上げられ、バタバタと音を立ててアスファルト上を舞う。

「承知!」

 慇懃な口調で言い放つと、ためらうことなく二人に倣い、木下もビキニ一枚に。幾人の女を抱いたのか知れない、細く引き締まった美しい体に、ほとんど紐に近い紫のビキニが映える。

 白い肌が薄暗い月明かりの下で、異様な色気を立ち昇らせていた。

 黒光丸を両手で握ると、平星眼の構え。

 一瞬視線を交錯させるチャックと木下。阿吽の呼吸で互いに頷くと、臆することなくマウンテンゴリラに向かって駆け出す。


 一方、金平と社長は、マウンテンゴリラを大きく迂回し、ガードレール上のハマー目掛け駆け出した。

 社長もビキニ一枚になり、険しい表情を浮かべている。

 娘の安否が頭の中で渦巻いていた。マウンテンゴリラへ向かって猛然と直進する木下とチャック。

 左翼から金平、右翼から社長がハマーを目指す。

「ウホホーッ!」

 接近してくるチャックと木下に向かって、更に威嚇行為ドラミングを行うマウンテンゴリラ。

 すると、チャックもそれを真似るように、駆けながら両腕を突き上げ、金髪を振り乱しながら自らの胸板を叩き出した。

「ウッホホ~イ!」

 腹の底から絞り出した地鳴りに似た雄叫びを上げると、その声に逡巡し、身動ぎできずに固まるマウンテンゴリラ目掛け、渾身の力を込めた正拳突きを放つ。

「オトトイキヤガレ!コンノヤロー」

 罵声を吐きつつ、チャックの全身の筋肉が悲鳴を上げ、強烈な力が拳へ伝達する。撲殺太郎を装着した巨大な拳骨が、大リーガーの速球さながらのスピードで、光輝きながらマウンテンゴリラに襲いかかった。

 同時に、チャックの右隣を音も無く並走していた木下が、黒光丸を地面スレスレに走らせ、マウンテンゴリラへ向かい切り上げた。

 次の瞬間。

 マウンテンゴリラが四肢を一瞬で屈めると、恐るべき跳躍を見せた。

3メートルは飛び上がっただろうか。巨躯に纏った虹色の光彩が美しい尾を引き、チャックと木下の体を照らし出した。

「!」

 チャックの拳が轟音を立てて空を裂く。同じく木下の黒光丸も虚空を切り裂いた。──だが。

「ハアッ!」

 上半身は黒光丸を振り上げたまま素早くしゃがみこむと、全身をバネにして跳躍する木下。その先には、拳を撃ち込むために踏ん張ったチャックの膝が。その膝を駆け上がりながら踏み台にし、更にチャックの背中をもう一段蹴り上がり、空中のマウンテンゴリラと同等の高さまで跳躍した。

 木下とチャックが、まるで牛若丸と弁慶に見える。

「オオオッ!」

 空中に舞った木下が、今度は黒光丸を袈裟懸けに切り下ろす。

 まるで蜻蛉に見える木下の姿。

朧月夜を舞う、しなやかな肢体。火花を散らすかのごとき木下の苛烈な瞳が、マウンテンゴリラを視界に捉えた。両腕の筋肉が収縮し、凄まじい斬撃を放つ。

 黒光丸から強烈な閃光が発せられ、一瞬周囲が真昼並みに明るくなった。先ほどのチャック同様、練り上げられた筋電力が、センサーを伝導して発現したのだ。

 跳躍した空中では姿勢を変えて躱す事もできず、マウンテンゴリラは左肩へ黒光丸の刀身をもろに喰らう。

「ウォーッ!」

 気合いを吐くと、木下はグリップを固く絞りこみ、強烈な力を込めた。深々と食い込んだ黒光丸が、マウンテンゴリラの肩口を易々と一瞬で引き裂く。

「ゴアッー!」

 金属音が混ざった奇怪な声色で絶叫するマウンテンゴリラは、咆哮と共に悲壮な表情が浮かぶ。自らの発する光彩に照らされながら、左腕が本体から分離した。

 空中で交差しながら地面に落ちる両者。木下は見事に受け身をとって膝をつくと、片膝を立てて黒光丸を斜めに構える。睫毛の長い女性的な瞳に前髪がかかり、微かな月明かりが、妖しく影を作った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。