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こちら筋肉防衛軍。  作者: マッスルハッスル。
第③マッスル◆戦え!!筋肉の戦士達!!◆
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幸せに!!

「あんた達、あれが読めないの!?」

 指差す壁面には、自らの書した額面が。

「私闘厳禁!金ちゃんと大河ちゃんまで戦線離脱したら、次にSEが現れたらお手上げよ!」

「……すいません」

 目の前に突き付けられた木刀を右手で払いのけると、憮然とした表情で呟く。

 木下はさっきまでの猛々しい気配を消し去ると、静かに壁面へ歩み寄り、木刀を元の位置へ掛けた。

 殺気は成りを潜め、穏やかな顔。

「大体大河ちゃん、剣道の有段者が木刀使ったら、真剣となんら変わりないのぐらい分かってるでしょ?」

「ははっ。それもそうですね」

 顔を斜め上にして、視線だけを社長に向けると、普段の少年じみた笑顔を作った。

「それじゃ、金平さん、また……」

 ふわりと右腕を挙げると、音もなく踵を返して道場から消えた。

「けっ」

 憮然としない表情の金平だったが、内心安堵のため息をつく。

 二人の様子を傍観していたチャックも、ホッと胸を撫で下ろした。


◆◆


 数日後......。

「ふん!ふんっ!」

 病室のベッドで腹筋に励む男。

 巨大な体躯が屈伸する度、ベッドが悲鳴を上げる。

 おもむろに部屋のドアが開くと、入って来たのは白衣姿の中年男性。

「増山さん!あんた何してんの!んなことしてたら退院できないよ!」

 増山を見るなり、怪訝そうな表情で語気を荒げた。

「全治1ヶ月って言ってんのに……会社の人達には今日明日にでも退院って言ったんだって?冗談じゃない!あんたねぇ、脾臓が破裂したんだよ!まったく、何考えてんだか」

「はははっ」

 他人事の様に笑う増山。

 そんな増山の屈託の無い笑顔を苦々しい顔で見つめると、ボサボサの頭を掻きながら、主治医は話を続けた。

「とにかく、最低でも後1週間は安静にしててもらうからね!」

「わかりました」

 表情を曇らせながら、増山が静かに呟く。

『──冗談じゃねぇ。こんな辛気臭ぇとこ、いつまでもいられっか』

 胸中では真逆の言葉を吐いている。

 そんなやり取りをしていると、病室のドアが再び開く。

「おっ」

 顔をしかめていた増山が、思わず声を上げた。

 涼やかな顔をした木下が入ってきたからだ。

「分かったね?医者の言うことはちゃんと聞くもんだ!」

 無精な見た目とは裏腹に、増山と木下のただならぬ雰囲気を感じた主治医は、増山を指差しながら言い捨てると、スリッパをパタパタ言わせながら退室した。

「フフッ」

 視線は病室の窓際に向けたまま、微かな笑みを浮かべる木下。

「何笑ってやがる」

 そう言う増山も破顔している。

「いえ、なんだか増山さんらしいなって思ったので。あれ?歩美姉さん、来たんですか?」

「あぁ、二日に一度は顔出してくよ」

 二人で窓際の花瓶に活けられた花を見据える。

 ほんの少しの沈黙をおいて、表情に陰を落とした増山が口を開く。

「どうだ?会社の方は?」

「ええっ、楽しいですよ」

「楽しい?」

「はい、とっても」

 最近の大河は、どこかゾッとする、危ういような笑顔を見せる。

 増山はそう感じた。

「具合のほうは?」

「ええっ……変わりありません」

「医者はなんて?」

「……もって1年。早ければ半年と」

「いいのか?残された時間を──」

 いつになく真剣な増山の眼差しに、木下は心地よい風のようなものを感じた。だが、視線の先、病室の窓は開いていない。

「他ならない増山さんの頼みだ」

 優しく微笑むと、澄んだ瞳を増山に向けた。

「美空だけじゃなく、お前まで……」

 増山が肩を落として、口許を僅かに震わす。

「──僕たち姉弟三人は、増山さんのために生まれてきたのかもしれません。約束ですよ、歩美姉さんを幸せにしてやってください」

 白血病の宣告を他人事の様に受け入れている青年は、瞼をゆっくり閉じると、残された時間に反比例するかのごとき、妖しく、儚げな美しい笑顔を増山に見せた。

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