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その2

水曜日。


10分ほど遅刻していくと、何回も時計をみている営業マンさんともう一人女の人が立っていた。


「こんにちは〜。」


「あぁ、よかった、来てくれたんですね。」


「だって、こなかったらしつこそうじゃあないですか。学校調べて帰り道の後付けて家を調べることくらいやりそうなのでそうなる前にきてやりましたよ?」


「ちょっと徳永くん、そんなことするの?」


「ちょっ、誤解ですって、そんなことする訳ないじゃあないですか。」


「前は無理矢理連れ込みましたよね。」


「あぁ、もう、そんな紛らわしい言い方をしないでください。前田さんも、そんな目で見ないでください、誤解ですから。」


「事実なのに?」


「ですからっ……!」


「はいはい、なにあつくなっているんですかー、それじゃあ認めているようなものですよ営業マンさん。で、こちらのかたは……?」


「あ、初めまして。私は徳永くんの同僚の前田といいます。」


そう言って前田さんはすかさず名刺を差し出してきた。


『株式会社 リッポーカンパニー デザイン部 前田マエダ 紗代子サヨコ


ほっそりとした指としっかりと手入れされたピンクの爪が美しい。


「むぅ、さすが、営業マンさんとは違いますね。」


この間は名刺が出てくるまでずいぶんかかりましたからねぇ、と言いつつちらっと営業マンさんのほうをみると、困ったような顔をして笑っている。


「徳永くんは営業部だけど、私は主に表では出回らない魔法関連の装飾品のデザインをする仕事に携わっています。とは言っても、私自身はデザインが全くできないんだけどね。」


もっぱらデスクワークなの、と微笑む顔はとてもかわいらしい。


もう、かわいさ百点です!


「うちの会社ではどの部署でもまずは訓練から始めるんですよ。前田さんは僕たちの年での最優秀成績なんです。」


「もう、それほどでもないわ。」とほほを赤らめ謙遜しながらもまんざらでもなさそうですね。

あ〜もう、かわいさ爆発注意報発令中です!


「それじゃあそろそろいきましょうか。15分くらい歩くけど大丈夫ですか?」


「大丈夫です、私営業マンさんと違って若いんで。あ、前田さんも大丈夫ですよね。営業マンさんと同期には見えませんし。」


そう言って出発を促すと、営業マンさんはなんか納得がいかないようで頭を手でとかきつつ先に歩き始めた。




営業マンさんと前田さんに訓練所について聞きながら目的地へ向かった。


いわく、これから向かう訓練所は親会社の所有する大規模なもので、親会社やほかの子会社の社員がそこで訓練をするらしい。


「一般人の人がひょいひょい入っていいの?」


「今回の場合は認識阻害の魔法をかけてあるから大丈夫ですよ。帰宅してからもう一度来ようとしても道がわかんなくなっていますから。」

としれっといわれた。


「いつの間にそんな魔法をかけたの? まったくもって説明不足。気づかないうちに魔法をかけていることを繰り返したりしたら魔法に不信感を持たれるとは考えないの?」


「申し訳ありません。目で見えないから理解しにくいと思って説明不足になってしまいました。」


まったく、これだから気の利かない男は……とむくれていると、気を利かせた前田さんが訓練所について説明してくれた。


「施設は半年前の大きな事故で大破してしまったんですが、つい1ヶ月前に立て替えがすんだの。だから、とってもきれいで使い勝手はいいんですよ。女子トイレもきれいで広くなりましたし、機器も新しくなったわね。」


「訓練ってどんなことをするんですか?」


「大まかにいうと、自分の魔力の許容量を増やす訓練と、消費する魔力のコントロールをよくする訓練、後は実践で使うような魔法を使う訓練かな。まぁ、最後のは最初のころの訓練と特務官にならない限り必要に迫られることはないんだけどね。」


「特務官っていうのは魔法を使った警備などをする部署の人ですよ。アニメとかで魔法をびゅんびゅんと飛ばして戦っているようなイメージの仕事をしているっていえばいいのかな。」


そんなことより、ほら、着きましたよ、といわれて見てみると、確かに新しくて立派な建物が塀に囲まれた敷地の中にでんっと立っている。


住宅街の中にぽっかりと区切られた敷地は違和感があるはずだが、これこそ認識阻害なのか、まったく違和感がない。


施設は体育館にビルが備え付けられたような形ってところかな?

そこそこ大規模で、外見は立派に見える。


「これを半年で仕上げるなんて……もしかして、欠陥住宅?」


「いやいやいや、そんなことはありませんから。」


「魔法の訓練に使う施設だからほかの建物より丈夫に作られているわ。むしろ半年前の事故でよほど懲りたのか、前の訓練所よりずいぶん丈夫に立て直したみたいよ。だから、そこらへんについては安心してもいいと思うわ。」




ビルの方の入り口に入ると明るいロビーとスーツを着たお姉さんが受付をするカウンターがあった。


そこのお姉さんはにっこり笑い『見学者』とかかれたネームプレートを渡してきた。


「どうぞ、ゆっくり見ていってください。」と送り出されて、連行されて来たのはゴテゴテした機械が並んだ部屋。


「この機械を使って魔力の許容量を計るんです。そこの血圧測定器みたいな機械に腕を入れて機械を作動させると、だいたい数分でそこの画面に結果が表示されるんですよ。」

と指し示された方を見ると、なるほど、確かに血圧測定器だ。


違いは腕のあたりだけじゃなく手首も固定するようになっていることくらいで、白いボディから内側の灰色の布までまさしくそのもの。


「せっかくだから計ってみませんか?」


「えー、めんどくさいから嫌です。」


「自分の中の隠れた才能がわかるんですよ。わくわくしませんか?」


「特に興味ありません。それに、よくわからない機械はこわいし。」


「全然大丈夫ですよ、なんにも怪しいことはありません。」


「怪しい営業マンセールスマンはたいていそう言うんですよ。」


「なんだったら私が見本として一度計ってみましょうか?」


「そんな!前田さんの美しい手に何かあったらどうするんです!」

そう言ってだだをコネた私を見かねて、じゃあ僕がやりますよと営業マンさんが言い出した。


さっさとそう言えばいいのに。


「えーっと、まずは向こうの機械に名前を入れて、あ、社員は名前を入れると、年齢や身長、体重が定期検診のデータから引き出されるんですが、お試し版の場合は直接入力しなくちゃならないですね。

それから、こうして腕をここの中に入れます。もう一方のほうもスライドさせて長さを調節して手首を入れます。

これをちゃんとしないと正確な値が出ませんから注意してください。

それで、ここにある黄色いスイッチを押していただければ測定が開始されます……っ?!」


ぼんっ!と大きな音が鳴ったと思ったら、いきなり画面の方が爆発した。


「な、なに?!」

と慌てふためく前田さんと呆然とする営業マンさん。


じっとこっちの方を見たと思ったら、首をひねって機械から腕をぬいた。


「大丈夫ですか!?」


「びっくりしたぁ〜。」


「私たちは離れていたから大丈夫です。徳永君は?」


「僕もなんともありません。すみません、どうやら機械に異常があったようですね。別室に移動しましょう。」


あ、異常それですませちゃうんだとは思ったけど、拒む理由もないから素直についていった。




事情説明の為に前田さんがその場に残って、営業マンさんは施設案内を続けた。


「えっと、ここが魔力コントロール用の訓練室ですね。」


「わぁー、なんか地味ー。」


その部屋にあったのは水晶玉に電圧計をつないだようなものがおいてある机。


その机が8つほど並んでいるが、微妙に水晶玉がほこりをかぶっているように見える。


「そうですね、確かにここはかなり地味で、利用者もほとんどいません。ですが、入ったら必ず一度はお世話になるんですよ。」


「ふぅーん。でも、やっぱり地味ね。」


「まぁ、そうですね。次に行きましょうか。」




「ここは、資料室ですね。ここには会社の資料が置いてあります。」


「まんまじゃない。」


「そうですね……、ここには社内中央図書館には劣りますが幅広い資料が置かれていますよ。」


「そんなあやふやな言い方をするって事は、営業マンさんは脳筋だったのね」


「いや、脳筋ってほどではありませんが……」


「でも、あんまりここ利用したことないでしょ?」


「……すみません。次行きませんか。」




「ここが休憩所になりますね。軽食を自動販売機で買えるので、昼食時などはここが人であふれかえることもありますよ。」


「給湯室兼購買ってとこかな?」


「そんな感じですね。」


「おなかがすきましたそこのぱんをおごってくれませんか?」


「勘弁してくださいっ!もう今月ぎりぎりなんですっ……。」

と悲壮な声で訴えかけられた。


大の大人が情けないと思ったけど、涙目になっていてかわいそうだったから、ここら辺でゆるしてしてやろう。


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