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武将 古田織部 第22話 家が“戦の側”に入る実感
重然が庭の端を掃いていると、
道の向こうから馬の足音が聞こえた。
一定の速さで近づき、家の前で止まった。
見慣れぬ馬だった。
家の戸が静かに開き、父が出てきた。
父は短く言葉を交わし、書状を差し出した。
馬の男はすぐに走り去った。
父は、しばらく動かなかった。
風がひとつ吹き、衣の裾が揺れた。
「……重然。」
父はゆっくり振り返った。
その顔に、かすかな緊張がみえる。
「しばらく、家の者以外を中に入れるな。」
声は低く、庭の土にまっすぐ落ちた。
重然は庭に立ち、家の影を見た。
影は濃く、地面に深く沈んでいた。
裏手から爺が出てきた。
「重然。」
爺は家の方を見たまま言った。
「うちも、もう外の風に巻かれとる。」
重然は家の戸を見た。
戸の向こうの気配が、いつもより静かで重かった。
重然はゆっくりと背筋を伸ばした。
家の影の中に、自分の影が重なった。




