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武将 古田織部 第20話 使者の出入り

重然は井戸から水を汲み、桶を抱えて運んでいた。

水面が揺れ、光が細かく跳ねた。

そのとき、道の向こうから馬の足音が近づいた。

土を踏む音が一定の速さで響き、家の前で止まった。

重然は桶を戸口に置いた。

馬上の男が軽く頭を下げた。

父が戸を開けて出てきた。

男は短く言葉を交わし、書状を差し出した。

父は受け取り、家の中へ戻った。

戸が閉まる音が、朝の空気に響いた。

馬の男はすぐに走り出した。

蹄の音が遠ざかり、道に薄い砂埃が残った。

重然は桶を持ち直し、家の脇へ運んだ。

光が戸の縁に当たり、細い線のように光った。

昼過ぎ、重然が薪を割っていると、

今度は歩きの使者が来た。

足音が土を静かに叩いた。

家の前で立ち止まり、短く名乗った。

父が再び出てきた。

二人は声を落とし、言葉を交わした。

風が吹き、二人の影が揺れた。

使者は深く頭を下げ、道を戻っていった。

背中が遠ざかるにつれ、足音が薄くなった。

夕方、爺が家の前を掃いていた。

箒の先が土を擦り、細い音を立てた。

「重然。」

爺は道の方を見たまま言った。

「今日は、よう来る日や。」

重然は頷き、家の戸を見た。

戸の向こうの気配が、いつもより重く感じられた。

陽が沈みかけ、家の影が長く伸びている。

その影の中を、またひとりの使者が歩いてきた。

足音は静かで、迷いがなかった。

父が戸を開けた。

使者は深く頭を下げ、家の中へ通された。

戸が閉まる音が、夕暮れの空気にゆっくり沈んだ。

重然はその音を聞きながら、家の前に立った。

道の先の光が薄れ、家の影だけが濃く残っていた。


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