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異世界美容院Angeli  作者: イタズ
第4章 変わりゆく異世界編

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温泉街ララはお祭り騒ぎ

今日は特に予感を感じなかった。

ララは来ないということだろう。

無茶苦茶寂しい・・・グスン・・・ララに会いたいなあ・・・


ララには会えない、それでも最近のお供え物は豪華になっている。

こう言ってはなんだが、俺も随分と稼がせて貰っているし、お供え物ぐらいで感謝の意を表せるのならお安い物だ。

女神様にはちゃんと感謝しないとね。

最初は腹が立つ女神様だったが、今と成っては感謝しかない。

これぞ掌返しってね!

だってララに会わせて貰えたからさ!

こんな嬉しい事は無いからね!


今日のお供え物はシュークリームとエクレアの詰め合わせだ。

実に五人前はある、なかなかのボリュームだ。

ララ曰く、これを女神様はペロッと食べるらしい。

なかなかの大食いだ。

前にララが横から摘まもうとしたら、無茶苦茶怒られたのだとか・・・

何やってんの?・・・女神様よお・・・

威厳も何もあったものじゃないよ・・・そんなに独占したいのかい?・・・スイーツをさ・・・まさかの甘味中毒かい?・・・勘弁してくれよ・・・


ついでに家のスタッフ達の分も勿論購入済み。

シルビアちゃん達は喜ぶんだろうな、家のスタッフもスイーツが大好物だしね。

それにしても本当に女神様は甘味が大好きだな。

リクエストはだいたいスイーツだからね。

たまにアルコールのリクエストもあるが。

太っても知りませんよ?見た目は知らないけど・・・でも糖分を取り過ぎでしょうよ・・・神様は体質が違うってかい?


お供え物を神棚に備えると、例の如く一瞬にしてお供え物が消えた。

そして女神様が話し掛けてきた。


(丈二や、ちょいと良いかえ?)


(ん?どうしましたか?またお供え物のリクエストですか?)


(そうそう、今度はバームクーヘンを所望する・・・んん・・ではないやえ・・・ララだがな、当分の間そちらには行けそうもなくてな・・・)


(はい?どういうことですか?)

ここでララを取り挙げるなんて、そんな御無体は止めておくれよ。

マジで訴えちゃうよ!


(ララもフェアリーバードの身体に馴染もうと頑張っておる、これまでは隙をみて、そちらに行けたが、ここからは本格的な取り組みが必要やえ)


(そうなんですか・・・)

ララに当分の間会えないなんて・・・寂し過ぎるぞ!

ウオーーー!!!

ララの匂いを吸いたい!ララを抱きしめたい!ララと頬ずりしたいぞーーー!!!


(そう悲しまんでもよいやえ、ララにとっても大事な局面でな。あ奴の為にも、ここは時間をしっかりと取らんといかんやえ。分かっておくれ・・・丈二よ・・・)

ララも頑張っているということか、ならしょうがないよな。

でも寂しいよーーー!!!


(分かりました、ララに頑張れと伝えといて下さい)


(あい、分かった)


(それで、どれぐらい時間が掛かるんでしょうか?)

短期間であってくれ・・・お願いだ!


(ふむ・・・ララ次第ではあるが、おそらくは一ヵ月以上は掛かるやえ)


(そうですか・・・)

長いのか、短いのか・・・いや!一ヵ月なんて直ぐだな!

ララも頑張っているんだ、俺も頑張ろう!

でも・・・ララに会いたいな・・・グスン・・・




俺は伯爵一家とライゼル達に、ララが一ヵ月以上は現れない事を告げた。

すると数名が膝から崩れ落ちていた。

相当な落ち込み様だ。

そこまでなのか?ララは随分と人気者だな。

俺も鼻が高いよ、何でだろう?・・・そうか!俺のララだしね!

でも気持ちは分かる・・・俺も寂しい・・・


そう呑気に俺は思っていたのだが、その考えは明らかに過小評価であった。

決してそんな甘い物では無かった。

全くの的外れであったのだった。




普段通りの通常営業を行えていたのは数時間にしか過ぎなかった。

最初に美容院『アンジェリ』に訪れたのはヘンリー国王一行だった。

相当飛ばしてきたらしい。

後日馬が潰れそうだったとシュバルツさんがボヤいていたよ。

俺にとっては知らんがなという話である。


俺の事をよく知る国王は本当に申し訳ないと、挺身低頭で店内に足を踏み入れていた。

今にも手をスリスリしそうである。

おっさんの上目遣いはちょっとムカつく・・・

隣でシュバルツさんと王妃が申し訳なさそうにしていた。


「ジョニー店長、営業中のお店に押し掛けて申し訳ない、貴殿がこの様な不躾な行いを嫌っているのは充分に理解している、しかし、フェアリーバード様が顕現なされたと聞けば、それを承知でも足を運ぶしかない、本当に申し訳ない!フェアリーバード様に会わせては貰えないだろうか?」

国王一行は土下座をする勢いであった。

隣で俺を見つめる王妃と皇太子も俺に目礼を捧げていた。

妙な緊張感がある。

こうなってしまったか・・・やれやれだ・・・


ふう・・・ここまで言われるとさ・・・ブチ切れる訳にはいかないよね・・・

知らない仲ではないからね、ある意味常連さんだし。

本当は追い出してやりたくてしょうがない。

だって、余りの出来事にお客さん達が引いてるんだもん。

何度も言うがこのお店はお客様ファーストなんでね!

お客さんを困らせるなっての!

国王?知らんがな!


「国王様、お久しぶりです・・・残念ながらララは当分の間は現れないですよ」


「なんとっ!・・・それはどうして?・・・」

俺は事の顛末を語って聞かせようかと思ったが、お客さんのカットで手が離せなかった為、ちょうど手の空いていたクリスタルちゃんに丸投げした。

既にララの件はスタッフ達には共有済みである。


「クリスタル殿!聞かせておくれ!」

すまんな弟子よ・・・俺の丸投げは最早伝統芸能の域に達しているのだよ。


それを気に留める事無く、クリスタルちゃんは国王一行にララの現状について語って聞かせていた。

地味に国王に懇願されたことが嬉しいらしい。

この子も成長したねえ。

面白い事にお客さん達も、相当興味がおありの様で、耳をダンボにして聞いていたよ。

そのお陰か、俺はカットに集中出来た。

実に満足のいくカットになったよ。

これは痛し痒しだな・・・でもこれは決まったな!我ながらグッジョブだ!

俺って天才?なんてな!


結局の所、国王一行はララに会えるまでは帰らないと、温泉旅館を占拠していた。

いい加減にして欲しい。

他のお客様に迷惑でしょうよ!


そして先見の明のあるマリオさんはよりによって、野宿セットなるテントを中心とした道具をマリオ商会で販売していた。

どうなるかは一目瞭然だ・・・止めて欲しかったよ・・・マリオさん・・・


これが驚くほどに売れていた。

でしょうね!

その弊害として、温泉街『ララ』では野宿をする者が後を絶たなかった。

やっぱりか・・・勘弁してくれよ・・・

足湯場は常に満員、最近では宿が増えているが、どこも連日満室だ。

これは今後も続くと、マリオさんは宿屋を十件以上建てると、早速動き出していた。

大地主はやる事が違うねえ、感心するよ。

商魂逞しいったらありゃしないよ。

今のマリオさんにとっては、商売は最早趣味となっている。

流石で御座います・・・


そして国王一行に続き、隣国の王族や貴族達も連日お店にやってきた。

それだけでは無く、あの北の蛮族と揶揄される国の女王も現れた。

全員当然との如くズカズカとお店に入ってきた。


ふざけやがって!

無遠慮にお店に踏み込まれてはこちらも気分が悪い。

俺は当たり前の様にブチ切れて追い帰す事にした。

王族だか貴族だか、女王だか知らないが、俺のお店の最高権力者は俺なんでね!

好き勝手は許さねえぞ!

ふざけんな!偉そうにしやがって!二度と敷居を潜らせねえぞ!

立場?権力?知らねえよ!

美容院『アンジェリ』を舐めんじゃねえよ!!!


埒が明かない為、警護の者達にアポイントの無い者は一切誰であろうとも通すなと厳命した。

これを無視した者は温泉街『ララ』から追い出すとの言を添えて。

要は予約をしてあるお客さん以外通すなという事だ。

そして予約を入れにくるお客さんは通してもいいと・・・これが事をややこしくしていた。


それを知った王族や貴族達は予約をしようと試みていたが、残念ながら予約は半年先まで埋まっている状況になっていた。

既にこれまでにフェアリーバードの件を知った者達が、予約を入れまくっていたのだった。

それでもめげずに数名は予約を入れていったよ。

全く・・・ドタキャンしたら二度と敷居を跨がせねえからな!

更に聞いたことも無い国の王様とか貴族とかも大挙してやってきた。

こうなってくると、この世界のお偉いさん達のサミットでも開かれるみたいだな。

俺のお店は国連会場じゃないっての・・・勘弁してくれよ、全く・・・


どうにも温泉街『ララ』はお祭り騒ぎだ。

連日国のお偉いさん達が何かしらの挨拶や協議を行っているみたいだ。

これを機に友好関係を築こうと、どの国も躍起になっているらしい。

いったいどうなっていることやら・・・

いち美容師の俺には関係の無い話だけどね。

まあ、これをきっかけに良好な関係を構築してくれるのなら嬉しい事ではある。

世界は平和に限るしね。


それにしても、ララは人気者だなんてレベルの話ではないな。

この世界の有力者達が全員集まってきているに違いない。

これはいったいどう表現したらいいのか・・・イエスキリストが顕現したみたいなことなんだろうか?

はたまた、お釈迦様が顕現したみたいな?・・・もうさっぱり分からんよ。

にしても・・・とんでも無い事になっているな・・・この世界にとっては良い事なんだろうが・・・俺にとっては・・・先が思いやられる・・・

はあ・・・面倒臭い・・・ていうか・・・美容師の仕事に専念したい・・・政治?権力?・・・知らんがな・・・


温泉街『ララ』の商店は何処も大繁盛している。

取り立てて魔道具屋が抜きに出てはいたが・・・

それはそうだろう、この世界の最新の魔道具が買えるのだからね。

日本の家電量販店と同じだろうか?

メイフェザーは良い腕をしているよ。

何故か売れ筋は魔道コンロらしい・・・何でだろうか?

地味に冷蔵庫も売れているらしい。

こちらの方が必需品だと俺は思うのだが・・・俺の感性は間違っているのか?


夜のバー『アンジェリ』の営業もいつの間にか予約制となっていた。

余りの人気にリックがそうしたらしい。

連日客が押しかけて来て、いつまで経っても客が途絶えず、営業時間が終了したにも関わらず、長蛇の列が減らなかったらしい。

ここも儲かってるねえー。

俺は関知しないよ、夜の責任者はリックだからね。

俺は不労働収入を受け取るだけに過ぎない・・・

フフフ・・・経営者の特権だな・・・


これは不味いと急遽予約制にしたみたいだ。

そしてこの予約に人が殺到した。

まるで奪い合うかの様に予約を入れていた。

どうなっているのやら・・・俺は知らねえぞ・・・

責任者はリックです、文句や苦情はリックにお願いします。


更に温泉宿も連日長蛇の列が出来上がっていた。

お目当ては当然温泉だ。

気持ち良い上に、万病にも効くと人気が高い。

国王が育毛にも良いのではと漏らしていたよ・・・知らんがな・・・てか・・・こうなると頭の状態はもう国民にバレバレだな・・・


温泉は毎日深夜の三時まで営業する羽目になっていた。


流石のクロムウェルさんも、

「これはどうにも手が離せませんねぇ・・・困ったものですねぇ」

とボヤいていた。


随分とスタッフの人数を増やしたみたいだ。

俺は安定の丸投げだ・・・すんません・・・お任せしますぅ。


それにそこら中で屋台が立ち並んでいた。

何気に俺が伝授したたこ焼きや、大判焼き、玉煎、焼きそばの屋台の人気が高い。

時折シルビアちゃんが、休憩時間に大判焼きを買いに行っている。


因みにこの手の料理の伝授は、殆どがマリアンヌさんの義息子のトランザムに俺が教えて、それをトランザムが広げるという流れになっている。

その為、屋台の取り仕切りや管理は、今やトランザムの領域となっている。

マリアンヌさん曰く、トランザムは相当儲けているらしい。

もう俺には足を向けて寝られないと零していたよ。

トランザムは的屋のボスってことなのかい?

よく分からん・・・


俺が好きでやってる事だから気にしないでくれとは言ったものの、この一家は確かに全員何かしらの関係が俺とはあるからね。

こちらとしても助けられているからお互い様なんだけどさ。

持ちつ持たれつというやつだな。

先日、孫が生まれたとマリンヌさんがよろこんでいたよ。

おめでとうございます!お婆さん!


各国の首脳陣達は温泉街『ララ』を満喫しているみたいだった。

もうこの世界の富と名誉と権力がこの街に集中しているようで、流石の俺も引いている。

この温泉街はこの先どうなってしまうのだろうか?

この世界の中心になってしまうのではなかろうか?

それはそれでなんか嫌だな。

賑やかすぎるのも考え物だよ。


街の至る所に横断幕やら垂れ幕やらが掛かっている。

俺には文字は読めないが、どうせフェアリーバード様歓迎とか書いてあるんだろうよ。

そうに違いないな。


ふと思い出したが、本当は自分のお店を持つ時に、営業はマイペースに自由気儘にやっていこうと思っていたんだよな・・・

なんだよこれは!真逆じゃねえかよ!いい加減休ませてくれよ!


こうなってくると憧れてしまうな・・・夢のスローライフ・・・

ララと二人でゆっくりと・・・なんて・・・無理なんだろうな・・・ふう・・・

ああ・・・ララに会いたいな・・・ララが足りないよ・・・




不思議なもので、二週間もするとこのお祭り騒ぎにも何となく慣れて来てしまっていた。

各国の有力者達は、どうやら俺の立ち位置をやっと理解したらしい。

この温泉街で最も敬意を払わなければいけない人物。

そしてララの最愛の相棒。

言い換えるなら一番厄介な人物。

ララに会いたければ、避けては通れない相手。


それを知った有力者達は、何を勘違いしたのか、豪華な贈り物を送ってきた。


クロムウェルさん曰く、

「これはこの世界の宝の数々ですねえ」

ということらしい。


宝石やら何かしらの価値のある物を沢山送りつけてきたみたいだ。

俺の感想は・・・舐めてやがるな・・・ふざけてやがる。


ムカついた俺は全ての贈り物を送り返した。

二度と『アンジェリ』に近づくなという一言を添えて。

俺を贈り物で懐柔しようってか?

ふざけんな!

世界の宝?知らねえよ!

俺を物で釣ろうなんてその魂胆にそもそも腹が立つ。

そんな下心満載の奴になんて、ララは絶対に会わせないぞ!

舐めんじゃねえよ!!!


俺の気性を分かっている国王と王妃は、そんな不埒な者達を鼻で笑っていたよ。

勝ったなと不気味な笑顔を添えて。

それにしても、国王達は王城を三男に預けて一目散に温泉街『ララ』に急行したらしい。

仕事しなくていいのかい?国政は大丈夫なのかい?

逆に心配になるよ。

今の三男は絵画に嵌っているのだとか・・・フッ・・・どうでもいいよ・・・


てか・・・ララ・・・この街は可笑しくなってるぞ・・・どうしようか?・・・

もう俺にはこれをコントロールできる自信はないな・・・

それにしても、どうしてこうなった?

誰かに知らんがなって言われそうだな・・・


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