表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/493

75

 フィジャの書いてくれた地図は実にシンプルだった。余分な物がそぎ落とされていて、見やすい。

 同時に、この辺りのことを熟知していること前提に書かれたものである。

 何が言いたいかと言うと、絶賛迷子中だった。


「情けない……」


 あれだけ見栄を張って結局この様とは……。流石に現在地がどこか分からないレベルまでには迷っていない。帰路は分かるものの、一向にパン屋さんが見つからなかった。

 諦めて帰るか……? いやでも、あれだけのことを言って帰るのは流石のわたしでも恥ずかしいぞ。


 人に聞けば流石に分かるかな、と話しかけやすそうな人を探している内に、逆にわたしが声を後ろから掛けられた。


「――なあ、どうかしたのか?」


 振返ると、ピンと黒い猫耳を立たせた男性が立っていた。黒猫の獣人なんだろう。

 男はにっこりと爽やかな笑みを浮かべながら、「アンタさっきからあっち行ったり、こっち行ったりしてるから気になって」と言ってきた。

 わたしはこれ幸いと事情を話す。


「あ、えっと、パン屋さんを探して……いて?」


 ふと、この男性に見覚えがあるような、そんな気がした。猫の獣人の知り合いなんていないのに。強いて言えば、冒険者ギルドに行ったとき出会った猫かぶりの男の子が猫の獣人だったけど、彼は白猫のようだったし、なにより目の前の男よりもっと若くて背が低かった。


「パン屋? ……随分シンプルな地図だな。えーっとこの店ならあっちの二個奥の曲がり角を曲がって……」


 男性が指をさしながら案内してくれるものの、わたしはその先ではなく、つい、男性の顔を見てしまう。

 絶対どこかで見たことがある顔だ、と見入ってしまうと、男が照れくさそうに笑った。


「あれ、オレの顔に何かついてる? ……それとも惚れちゃったとか?」


 何を馬鹿なことを、と思ったけれど、角が立たないように、と、既婚者だと言って誤魔化そうとしたとき、ぞわっと、怖気が走った。

 既婚者、というワードでフィジャたちを思い浮かべ――そうして、ようやく思い出した。


 ぶわり、と毛が坂立つような感覚がする。


「貴方――フィジャを突き落とした人ですよね。図書館で」


 記憶が蘇る。落ちてくるフィジャと、そのフィジャ越しに見えた、三人組の顔。

 三人のうち、中央に立っていた男が、今目の前にいる男だった。

 わたしが警戒しだすと、男の笑みの種類が変わる。さっきまではあんなに人から好かれそうな爽やかな笑みだったのに、今はにたりと、ねばっこい笑みを作っていた。


「やっと気が付いた? 折角出会ったのに覚えてないかと思ったじゃん」


 悪びれる様子もなく、へらへらと笑う男。はー、殴りてえ。これ殴っても平気かな? 傷害罪とかになるのかな。でも、フィジャにあんなことしておいてここにいるってことは捕まってないんだよね?

 ということは一発くらい殴っても許される……?

 なんて物騒なことをわたしが考えているなんて微塵も想像出来ていないのか、男はなおもわたしに話しかける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ