二十三話
セクターとの戦いに勝利した俺たちは、ひとまずセラフの村に帰った。
「…っ!タルス!みんな!」
「ら、ラシャ!?」
門を通ると、ラシャが俺に抱きついてきた。
「よかった…ほんとによかった…!」
「…随分と仲がいいんですね」
「ミトぉ…助けてくれぇ…」
「いいじゃん。女の子が抱きついてくるなんて、男にとっちゃ幸せ以外のなにもんでもないでしょ?」
「…そりゃまあ、そうだけど」
「ーーーーっ!?」
「タルスの幼なじみ…したたかな子ね」
「ん?なんか言ったかアリス?」
「いえいえなんでもありません!」
「はしゃいでないで戻るぞ。明日はすぐに出発だからな」
次の日、村の奴らに惜しまれながら俺たちは村を出て、トリムに向かった。
道中はデーモンの襲撃もなかったため、問題なく日没前にトリムまでつくことができた。
「それじゃあ、わたしはこれで。と行きたいところなんですが…」
サギリとはここで別れる約束だ。そうだったのだが…。
「宮殿まで来い!お前を専属の兵士にする!」
王子はサギリをいたく気に入ったらしく、一緒に宮殿に来いと言っている。
「…まあいいけど、その分の報酬は弾んでもらうよ?」
「…まあそれならいいか」
「それで…アリスさんも宮殿に行くんでしたっけ?」
「はい。私は世界各地を回り、探さなければならないものがあるので…」
「そうなのか。…そういや、俺はこの後の目的なんてなかったな…」
勇者にはなれず、罪人として投獄され、流されるまま戦っていたが、それが解決した以上やることがなくなってしまった。
「故郷でこのままゆっくりしてるのもよかったかもなあ…」
「タルス、そろそろ船が出るぞ」
オリュシオンに呼ばれ、俺は船に向かう。
そして見張りを他の奴らに任せ、俺はさっさと寝る事にした。
「今日嵐になる予兆なんてあったか!?」
「なかったっす!だから予想外っす!」
「とりあえずなんとかするぞ!帆を畳め!」
「…ん?」
多くの人の走る音に目を覚ます。
「…何かあったのか?」
「嵐だ!今日の海は快晴の予報だったはずなのに…クソッ!」
甲板に出ると、何かに捕まっていないと吹き飛ばされそうなほどの風と雨が体に叩きつけられる。
「ぐっ…!」
「ほ、報告!報告!」
青ざめた顔をした乗組員が叫ぶ。
「船に向かう飛行生命体複数!デーモンだと思われます!」
「「何ぃ!?」」
外を見ると、遠目に確かに飛んでくるデーモンが見える。
「なんだってんだ…!クソッ!」
「コルネイア!とりあえず迎撃するぞ!」
「おうっ!」
俺とコルネイアが武器を構え、デーモンを見つめる。
「弓技…シルバーアロー!」
コルネイアの放った矢は、嵐の中でも真っ直ぐに飛び、デーモンの頭を射抜く。
「よしよし…ん?」
「どうしたタルス?」
「…海の中から何か出てくる音がー」
そう言いかけた直後、数個の影が俺たちの頭上に飛び出してきた…!
「なにっ!?」
「避けろ、コルネイア!」
「っ!」
そして俺たちのいた場所に降ってきた奴らは、人のような体軀に魚の鱗と顔。こいつは間違いなく…!
「ぎ、魚人…!」
「いかにも。その命、我らが主の命により頂戴致す!」
「くっ…!」
魚人の刃を受け止める。
「…ふっ、今だっ!」
「クケケ!ナイスだ!くらいやがれっ!」
「ー猛毒よ、全てを腐食せよー!」
「くそっ!猛毒かっ…!」
「この船を溶かす気かっ!?…やらせるかっ!」
「おいっ…?コルネイアッ!?」
デーモンの放った青紫の球体を、コルネイアは船をかばうようにしてその身でうける。
「くっ…!ガハッ!」
「ーっ!」
そこに、さらなる不運が俺たちを襲う…!
「グゲっ!?魚人ども!今すぐその船から降りろ!」
「何かあったか、悪魔よ」
「よく見ろっ!その船はまもなく沈む!」
「何っ!?ならば我らはこれにて!」
「俺らも戻るぞ!」
「おうっ!」
魚人とデーモンが撤退した直後、船が大岩に衝突し、横転する。
「うおわああああっ!」
そのまま、俺の意識は消えていった…。




