一話
三年前…
俺の住んでいた村の祭壇で、15歳だった俺、タルスは祈りを捧げていた。
「…天使様。今、私はこの世に生を受け15の年を迎えました。」
この村を守護する天使に、祈りを捧げる成人の儀。その時に突然奇跡は起こった。
突然祭壇が光を放ち、俺を包み込んだのだ。
「な、なにが起きた!?」
「タルス!?」
俺はなにをすることもできず、その光に飲み込まれ…。
気付いた時には、俺は空の上にいた。
「…!?ここは…?」
「ここは私を祀る祭壇です。よく来てくれました…勇者タルス。」
声のした方を振り向くと、文字通りの天使がいた。
白い肌。透き通るような羽根と、美しい顔立ち…この姿を、俺は見たことがある。
「守護天使様ですか…?俺たちの村の…。」
「ええ、そうですよ。私があなたの村の守護天使、アレイスです。」
そう言うと、アレイス様はゆっくりと椅子に腰掛けた。
「さて…簡潔に説明しましょう。あなたにはこれから、勇者になってもらいます。」
…え?
「ええ!?じょ、冗談ですよね?そんな、俺が勇者なんて…。」
「いえ、あなたは勇者になるべき人です。剣の優れた才能を持つあなたが、ね。」
天使様は、笑顔で俺にそういった。
「…今から、俺は勇者になるのですか…?」
「いえ。あと三年間待って欲しいのです。この三年の間に、魔王は復活してこの世界を滅ぼすので。」
「…それがわかっているならば、こちらから攻めることはできないのですか?」
天使様は少し困ったような表情を浮かべて、その後にゆっくり話をした。
「…魔王の住む世界は、この世界とは基本的に離れています。なので、こちらから行くことは難しいのです…。魔王軍には優れた転移魔法の使い手がいますから、軍勢を送ることも容易いのですが…。」
「なるほど。…では、その間私は修行の旅に出ましょう。」
「…良いのですか?あなたには、家族もいるでしょう…?」
首を横に振って俺は答える。
「この世界を救えるのは、勇者しかいないのでしょう?でしたら私がやるしかないじゃないですか!」
「…そう、ですね。」
天使様はそう言って、後ろ手で光り輝く門を作り出した。
「ここを通れば、祭壇に帰ることができます。…三年後に、王都サンブラの祭壇で会いましょう。」
「…はい。必ず、立派な勇者になります…!」
そう言って、俺は門を潜った…。
それから俺は、修行のために旅に出た。
野を超え、山を越え、黒烏や野兎などの魔物を倒し、その度に強くなっていくことを実感した。
「ー風よ、舞い上がれー!」
「ピギィッ!」
「ー火球よ、敵を喰らえー!」
「ゴガアアア!」
「剣技…クロスブレイド!」
「ゴハッ!ゴガアアアッ!」
…魔法を練り、剣を振るい、敵を倒す。
たまに近くの街に寄り、消耗品を買い込んでまた旅をする。
「拳技…四肢粉砕!」
「ガアアアアッ!」
「ー霊水よ、全てを貫く槍となれ!」
「グアアアアア!」
「キュルキイイイイ!?」
「ポポポポー!?」
「剣技…エメラルドスラッシュ!」
「グハッ!…見事、だ…」
倒して、倒して、倒して、殺して、食って、倒して、殺して、倒して、殺して、剥いで…
生きて行くために、ひたすらに魔物を殺した。
強く、もっと強く。高みを目指すために剣を振るった。
…そして、18歳になった三年後のこの日。
俺はついに、王都サンブラに入ることができた。
「そこの者。名は何という。」
「…タルス、です。王宮にある天使の祭壇に用があって来ました。」
「…ふむ、なるほど。通ってよし!」
「ありがとうございます。」
門を超え、賑やかな商店街を無視して王宮へ向かう。
「…とうとう、俺も勇者になれるんだ…!」
逸る気持ちを抑え、剣などの危険物を門番に預けて宮殿に入る。
噴水や花が美しく咲く中庭をスルーして、目指すは地下の祭壇。
「ようやく…着いた…!」
重い押し扉を開け、ゆっくりと祭壇の間に入る。
すでに王とコンタクトを取っているので、すでに祭壇は準備ができていた。
天使への感謝を示し、祭壇へ祈りを捧げる。
「…天使様。三年の時を経て、今約束を果たしに参りました。」
そして、三年前と同じような強い光に俺は包まれ…。
俺は、もう一度空に来た。
「天使様…。」
「…うっ…た、タルスさん…。」
三年前と変わりない、美しい天使様がそこにいたのだが…。
「さ、三年ぶりですね…」
なにか様子がおかしい。
「あの、天使様?なにかあったんですか?」
「え?い、いやー…そのー…」
俺から目をそらして、黙り込んでしまった。
「…天使様、俺は三年間修行を重ねて、勇者に相応しい強さを手に入れたと思っています。」
俺の言葉を聞いて、何故か申し訳なさそうな顔をする天使様。
「…あの、えっとお…」
「本当にごめんなさい!」
…?
「て、天使様?なぜ謝るのですか?」
「私は…あなたの期待を裏切ってしまったんです…。」
そう言って、天使様はゆっくりと話した。
「事情が変わりました。あなたを…勇者にすることはできません。」
「え…?」
天使様から聞かされた。衝撃的な言葉。
「俺を…勇者にはできない…?」
「…はい、謝って済むことではないことはわかっています。ですが…本当にごめんなさい!」
今にも泣きそうな顔で、深々と俺に頭を下げる天使様。
…冗談ではないらしい。
「…なぜ私が勇者になれないのか、教えていただけませんか?」
「…はい。理由は後で話しますが…簡単に言えば、勇者の職を他の人に神が勝手に渡してしまったのです」
それから、天使様は話してくれた。
天使様が神の命を受け、地上の民から勇者を選ぶ役目であったこと。
勇者は、この世で一人しかなれない職であること。
そして、神が勇者の職を与えた人のことも。
「…異邦人、ユウキ・オオツカ。神が気まぐれでこの世界に呼び、勝手に勇者の職を渡した人物です」
「ユウキ・オオツカ…?」
変な名だ。しかし、異邦人なら仕方がないだろう。
「…わかりました。それでは」
「あ、あの…私を責めないのですか?」
帰ろうとした俺に、天使様は不思議そうな顔で尋ねる。
「あなたを責めてもしょうがないでしょう。私が、勇者という職に合ってなかった。そう神が決めたのならば、それに従いますよ」
「…そうですか。なら…せめて、これを持っていってください」
そう言い、天使様は巻物を俺に手渡した。
「これは剣聖の書というものです。…勇者とは比べ物にならない職ですが、せめてこれくらいは…」
「ありがとうございます」
巻物を受け取り、それを開く。
「うおおっ…!?」
そして、白く巻物が光り…。
目を開くと、巻物は消滅していた。
「…それでは、私はこれで失礼します」
「わかりました。この門を潜ってください」
天使様が、門を作ってくれる。
「…頑張ってください」
「はい」
そして次の日、俺は…牢獄にいた。
「貴様は自分が勇者だと王を騙し、宮殿へと入り込んだ。よって貴様を詐欺の罪で処刑する!」
「…はい」
当然の結果だ。…俺は、もう勇者ではないのだから。
爆死用です。
不定期にあげます。
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