表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/57

第 28 話 王弟殿下 2

「君のその余裕はどこから来るのかな?」


 殿下は前屈みに俺のフードの中を覗き込むように少し顔をこちらに近付けて、女性だったら直ぐに落ちてしまいそうな綺麗な笑顔、俺からしてみれば何か裏がありそうな黒い笑顔、をこちらに向けてきた。


 余りにも緊張感が無さすぎたのがいけなかったのかな……。それともフードを被ったままなのがいけないのかな、ここに来るまで誰にも何も言われなかったからそのままにしているけど。そんな事を考えていたからか、何もリアクションを起こさない態度がより一層余裕を持っていると見られたらしい。


 そんな姿がいつも対峙している者達と余りにも違うのだろう、何と言っても王族は敬われる者で、初対面ならば尚更であるのだから俺のように全く構えない者は見たことがないのだろうなぁ、だって俺敬ってないし……。


 俺のそんな態度が殿下のプライドを下手に刺激してしまったのだろうか、先ほどよりも一層挑発的な雰囲気を纏わせて俺を睨んできた。見た目は綺麗な笑顔のまま……。


 殿下は何にしても負けず嫌いと見た。そしてそれを似非笑顔で隠して上手いくらいに世渡りをしてきた年令に見合わない厄介な人物。


 俺も一瞬でそう相手の中身を判断して、これからからの対処の仕方を考える。


 こんな自分の全てにに自信を持っている人間は、いろんな意味で頭の悪い人間は大嫌いだが、頭の良すぎるつまり自分と同じ種類の人間もまた嫌う。そして自分の中で全ての事柄に白黒つけないと気が済まない、自分が知らないと言う事にに我慢ができないタイプだ。


 だから、俺が取った行動はハズレでもありまた当たりでもある。まぁ殆ど興味の無いような存在ではなく、良くも悪くも興味を持たれた事はファーストコンタクトとしては良しとするか……。これからの俺の立ち位置に影響がありそうな人だしな。


 ……、ってこの思考に掛かった時間は瞬き一つの間!ケイの力恐るべし……。


「…まぁいい……、君との付き合いは長くなりそうだしな」


 入室した時よりも明らかに何度か気温が下がったように感じる部屋の中でも全く態度を変えない俺に、はじめに折れたのは殿下だった。でもこの俺にどうしろと?名前も身分も判らない(事になっている)人に、此方から声を掛けて良いものか判断すらつかない状態で、いきなりの無礼打ちはないと信じたいがその中で無表情で固まっていること以外の行動を取ることは難しいと思うのだ。


「あぁ、名乗りもまだ上げていなかったな、私はシャルク・リヒター・グラオザーム。この国の副宰相を拝命している」


 ソファーにゆったりと座り直し、これでもかっと言うほど長い脚を組むと、控えている戦闘侍女さんに軽い頷きを送る。


 これでわかったのか、戦闘侍女さんは扉付近に控えている普通の侍女さんにまた何かの合図を送る。


 そんな連携プレイを経て俺と殿下の目の前に、初めに置かれていた物とは違う香りのお茶が準備された。クリームを使用していない焼き菓子のようなケーキを添えて……。



 連携プレイが行われている少しの間も、殿下は薄っすらと笑みを浮かべたまま無言で此方を見ているばかりだ。きっと頭の中は忙しく俺の扱い方についてシュミレートしているのだろうけど。


 俺?流石にそのままの態度ではまずいことは感じたので少し緊張してますよを装ってわざとオロオロしてみたりして、気付かれないのを良い事にへやのなかの物に解析を掛けてみた。


 解析をしてみて驚いたのは、殿下の執務机の上に置かれている書類が、その紙の端っこだけでも目に入ると書かれている内容全てがわかってしまった事!纏められている書類に関しては透視でもできているの、くらいにどれか一枚でも見えたら内容が始めから最後までわかった一瞬で!


 内容の把握はケイに任せる事にして、俺はそんな自分のチートさに驚きが隠しきれなくて自然と滲んでくる冷や汗にピクリと体を震わせた。


 オロオロはわざとらしかったみたいだが流石にその俺の状態は自然に怯えているように見えたらしく、自分にいいように取ったのだろう、俺から見れば嫌な、はたから見れば爽やかな笑顔が深くなった。俺への対応の仕方を決めたのかな、何だか嫌な物しか感じられないのだけれど……。


 即ちいつもの調子に戻ったのだろう殿下は、余裕の雰囲気を醸し出して組んでいた脚を組み替えてから、再び淹れ直させたお茶に口をつけて話し始めた。


「そう言えば、君に会うのはこの場が初めてだったね。今日の茶番……いや失礼、今日の謁見式も仕事に追われていてね。中々仕事が出来る者がいないから、くだらない事に時間を割くことは馬鹿らしいだろう?1日の時間は決まっているのだから。それと……君達が召喚された時も、国外に出ていてねぇ……結局今日の宣言で無駄になったリューグナー共和国との親善会議。この私の貴重な時間を何ヶ月も掛けて行ったのに下準備も全て我が儘女達に水の泡にされたわけさ」


 もしかして口にされているのはお茶ではなくてお酒ですか?と思えるくらい滑らかに溢れてくる言葉に普段は隠されているのではないかと言う裏の顔が見えるのですが……。


 能面が標準装備の筈の戦闘侍女さんの顔に驚きの表情が浮かんでいる事がその証拠だろう。慌てて扉の近くの侍女さんを部屋から追い立てるように出している事からも、このような事は稀である事が伺える。


 戦闘侍女さんと護衛騎士二人以外が部屋の外に出た事を確認すると、それまで横に控えていた戦闘侍女さんが殿下の側に来て殿下のそんな態度を注意した。


「シャルク様、どこで誰が耳をそばだてているかわからないのですから滅多な事は口にしないでくださいまし」


 どこか年下の者を諭すような響きを持っているように感じるのは気のせいか?俺の心の声にケイが答えたのか、目の前に広がったウインドウに戦闘侍女さんの詳しいプロフィールが現れる。


(……スリーサイズまでは要らないよケイ……王弟殿下の乳母の娘か……)


 そこはかとなく感じていた恥ずかしさのようなものの理由がわかって納得した。つまり姉弟のような者なわけね。そんな大切な人を正体のわからない俺の案内に付けたのか?


 殿下の思惑が俺の考えていた以上のものかもしれない可能性に少し警戒感が高まる。


 俺の纏う空気が変わった事に気がついたのか付かなかったのか、殊更甘い空気を漂わせたまま殿下が声を上げた。


「良し、これで気を使う事をしなくても良くなったな」


 言葉遣いや声のトーンも変わった気がする……。


「今は私なんかに気を使っている暇はないだろう?あの中の誰かが報告をしに行ったとして、女達って誰だと惚けていればどうにでもなる。私が何年この世界で生き延びていると思っている?」


 俺の存在は全くないものとして話が続いている。この部屋自体には中の話が外に漏れないような軽い消音結界が張られている事はわかっていたが、この城の中ではそう珍しいものではなさそうだ。ただこの部屋はその中でも比較的強めの結界ではあるようだが……。


「あぁ、もうそろそろ本題に入ろうか、随分と待たせてしまったし……」


 本日何度目かの場面展開。緩んでいた空気がまたピンと張り直された気がした。


「さっき言った事は私の本音だ。面倒臭い仕事を任せるだけ任せて、重要な事からハブられた事に対しての八つ当たりも多分にあるがな……。こちらが本音を晒したのだからそちらも、と強要するつもりはないが、顔を見て話をしたいと思うのは間違った事かな?」


 何もそこまで俺は顔を隠す事に拘った訳でもないので、殿下の黒い笑みが深まる前に被っていたフードを下ろした。


 三の曲輪では別に隠していなかったから俺の容姿についての情報も入っているのだろうと思っていたが、改めて晒した俺の面を見て驚いた様に目を少し見開いたのが意外だった。


 一頻り驚きの色を見せた後、ソファーに座る体制を崩すと肘掛に肘をつき頬杖を付いた顔を軽く傾げて、笑い声を隠さずに俺の瞳を見返した。


「それにしても、その顔でよくあのあばずれ姫に喰われなくて済んだな?」


 第二王女のことか?……確かに巫女姫の聖(性)◯◯は沢山いたみたいだしな……。


 俺のなんとなく不味いものを飲み込んだ様な顔で、自分の放った言葉の意味を正確に理解しているとわかったのか更に言葉を重ねてきた。


「あれは血の繋がった叔父である私まで閨に誘おうとする真性の聖女(性女)様だからね。私にしてみればあれを神託の巫女姫にしている女神様も推して測るべしだよ」


 悪びれずに女神の悪口とも取れることを語る殿下を戦闘侍女さんが窘める。やはり女神に関する陰口は御法度なのだろう。この様な世界では神託の巫女が存在していることも勿論だが、確かに口出しする神がいることも確かなのだから(俺もその一人に会ったし)悪口を実際に聞かれると危惧するのは、俺たちの世界で『バチが当たるから』と神を敬うよりもよっぽど強いものなのだろう。


 そんな事をぽけ〜と考えながら目の前の様子を黙って見ている。一応お小言も終わったのか、殿下が一つ咳払いをすると、俺の方に少し姿勢を直して話を向けた。


「君にしてみれば言い訳にしか聞こえないと思うが、異世界からの召喚を行う事を私は聞かされていなかった。 召喚を行った時もその理由の大本とされているリューグナー共和国に出向いている最中だった。巫女姫が何やら騒いでいた事は知っていたがまさかここまでするとは思っていなかった。この国の者達の女神に対する信仰、いや狂信度を測り違えた事が今回の事を引き起こしたと言える。」


 殿下の視線は俺の顔を注視している様で見ていない。過去の何かを見つめている様に見える。


「起こってしまった事は仕方がない。私の仕事はこれ以上この国にとって悪い事にならないようにする事だけだ。そこで君だ。君の事を召喚をした者達は君以外の勇者?に夢中で君の事を持て余しているらしい。はっきり言えば君の事をすっかり忘れている」


 初めてしっかりと俺の視線を捉えたと思ったら、結構きつい事を言ってくれる。まぁ、俺としたらこのままずっと忘れたままにしてもらえた方がいいのだが……。


「今回有りもしない『第一王女に対する監禁事案』、を解決するための奪還作戦を行なうにあたって、作戦の特徴上少人数での行動が必要条件であり、その人選作業中に作戦の長になるカヴァレリス伯爵令息が君の事を思い出してね、アイテムBOX持ちである事を……」


(カヴァレリス伯爵令息って性騎士殿の事か…)


 俺としてもいつまでもこのまま放置と言う事はないと覚悟はしていたし、勇者達(やつら)とこのまま関わらないでいられるとも思っていなかった。ただもう少し時間はあるかなぁと考えてはいたが……。俺が思っていたよりも奴らの成長が早かったらしい事と、メインの仕事?であろう魔族との戦いよりも随分と手前の隣国との下らない戦いに巻き込まれて使われそうな事が計算外だったが。



新しいキャラ出現!始め考えていたのと随分と性格が変わってしまった気が……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ