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第 18 話 もふもふ?

 人気が無い水場だったが 、念の為結界を張っておいた。


 改めてアイテムBOXの中身に意識をおいてリストを思い浮かべる。まるでよくやっていたゲームのメニューリストとそっくりなものが浮かび上がる。これも最適化の一種なのか?


 自分としては落ち着いていたつもりだったのだが、やはり演習場ではテンパっていたんだろう、全く考えずに獲物をBOXの中に突っ込んでいったから全部で何を何匹狩ったのかわからない。それが、イラスト入りのリストできっちりと分類され表示されている。


(このイラストって誰が描いた物なのだろう?)


 何処かで見た事があるようなテイスト……。


 試しに腰につけた小袋に入れていたスライムの魔石をBOXに入れるように意識してみる。


 一瞬ののち、ドラ◯エ似のスライムのイラストとスライム 91(魔石のみ)火3 水56 風24 土8 と言う表示が現れた。


「……数を数えなくていいのは楽かもね…」


 イラストの出元とか、著作権はとか、深く考えるのは放棄して違う項目を注視する。


 角が付いた可愛いうさぎのイラストの後に、

 ホーンラビット 21(角なし)状態上ランク 7 状態中ランク12 状態下ランク2

  と言う表示とその下に、

 ホーンラビット角 21 状態上ランク5 状態中ランク 11 状態下ランク 5

 と言うものが見える。


 本当。きっちり選別すらしてくれる、優れもののBOXだこと……。


 小さく溜息をついてホーンラビットの本体を状態ごと分けて取り出し並べる。


 ネルケも普段は腰にぶら下げ持って帰れる数、多くても四、五匹程度を解体処理して館で買取をしてもらっているそうなのだが、21匹も並べると流石に今日1日で処理し、出張所でもないこの館での買取は無理だと言う。


 頭を抱えつつも処理を始めたネルケの横で、今日処理出来る数、とりあえず六匹以外をもう一度BOXに仕舞う。(15匹を仕舞おうと意識するだけだけど…)


「あれ?」


 仕舞って15匹になったホーンラビット、それとは別の項目に、イラストは同じように角の付いた可愛いうさぎなのだが

 スターラビット(角なし・仮死状態)スターラビット角 状態上ランク 1

 と言うのが見える。


 仮死状態って…?


 思う間に、俺の腕の中に他のホーンラビットとはふた周り以上小さくて毛皮の色も違う物体が。


 ほんのりと暖かいもふもふ。確かに額の切り取られた角の断面が星型をしているように見える。

 ステータスを確かめると

 《 名前 》

 《 レベル Lv,1 》

 《 HP 1 》

 《 MP 1》

 《 種族 スターラビット》

 《 魔法 風属性魔法適正 》

 《 スキル ウインドカッター Lv,1》

【状態異常 :仮死状態 】


 名前の欄は空欄で、年齢は欄すらない。

 その上HP、MP共に1しか残っていない。慌ててHPを回復させるためにヒールを掛ける。


 手の中のもふもふがピクリと震えた後、小さな鼓動と呼吸が再開されたのがわかった。


 安心してホッと息を吐くといきなり


『ナマエヲツケテクダサイ』


 何処からともなく声が聞こえた。


「えっ?」


 思わず背後を確かめる。ネルケは黙々と解体用ナイフを振るって毛皮の処理をしている。

 腕の中のこいつがしゃべる訳ないし…。するとまた


『ナマエヲツケテクダサイ』


 というアナウンスが頭の中に響く。最近とんと聞くことが無くなった、城の役人(ヤツラ)に取り上げられたスマホの音声ガイダンスによく似た声(女性バージョン…)が。


「名前ってこいつのだよね…?」


 視線を腕の中のもふもふに向けて小さく呟くと


『ハイ』


 と言う簡潔な応えが返ってくる。


 何か色々今ここで考え込んでもしょうがない気がして、半分投げやりな気持ちで頭の中の何ものかに従うことにした。


 ぱっと見、額に白い星型模様のある片手で抱えられるくらい小さいうさぎにしか見えない本当は魔獣と言われる生き物。


 俺はこいつに子供の頃飼っていた柴犬(相棒)と同じ名前を付けることにした。


「…リン…?」


 囁くように、何故か疑問系でその名を口にした。

 すると、俺の目の前に光の塊のようなものが現れた。その光の塊は腕の中の子を金色の光で包み込むように包んだ一瞬のち、その子の体に吸い込まれるようにして消えた。


 初めて見る幻想的な光景に息を飲んでいると、またあの機械的な声が頭の中に響く。


契約(テイム)に成功しました。スキルをリンクします。…攻撃魔法ウインドカッターを獲得しました』


「…なんじゃこりゃ〜‼︎」


「えっ?ナニ?」


 いきなりの俺の大声に、ネルケは走らせていたナイフを落とすほど驚いた。


 金属と石の床が奏でた硬く甲高い音がやけに長く響き渡る中、振り返り俺の腕の中の存在に気が付いたネルケは、床に落ちたナイフと汚れている手を洗ってからこちらに近付いて来る。目線は俺に合うことはなく腕の中だ。


 そんなネルケの様子を目で追いながらも、頭の中は謎のアナウンスとの応答で一杯一杯だ。


 動揺で大声を出してしまったが、この自分自身理解できない状況をネルケに知られる訳にはいけないのだ、今は…。


(とりあえず、君?の存在についてやアレヤコレヤは後で落ち着いて一人になってから聞く。今はネルケへの対応と、この子をどうするかだな)


『キョカアルマデオウトウヲテイシシマス』


 頭の中が静かになったので目の前のことに正対することにする。


「この子ホーンラビットに似てるけど…小さいし色も違うし…角も?なんか額に星を乗っけているみたいだ」


 恐る恐るという感じで手を伸ばしてきたネルケは、その毛皮に触れると暖かいことに驚いて伸ばした手を引っ込めた。


「暖かい…生きてるの?何で?アイテムBOXに入っていたはずなのに?」


 この世界のアイテムBOXはよくある異世界ものと同じように、生きているものは入れられない仕様になっているらしく、俺もそう聞いていた。


「仮死状態だったようだからそれで死亡判定?出してみたら息を吹き返したみたいでさぁ、驚いて大声出しちゃった。ごめんな、ナイフ落としたみたいだったけど怪我しなかったか?」


 俺の説明を聞いてこいつが生きている事がわかったのか、可愛い姿でも魔獣は魔獣。ネルケは少し距離をとったまま警戒しているのか目はこいつから離さない。


 ネルケの視線に合わせるように腕の中の姿を見ると、先程まではくたっとして意識も無いように見えたのが、今はパチリと瞳を開けて俺の顔を見つめれいる。


「カワイイ…」


 魔獣の瞳の色は総じて黒色に近いと聞いていたが、こいつの瞳は透き通った薄緑色。ヒクヒクと動いている鼻先は白。体色は焦げ茶。手足の先っぽと尻尾そして額の星型様に見える角の断面は鼻先と同じ白色だ。怯えながらも一生懸命動かないようにしている姿が庇護欲をそそる。


「…リン…」


 囁くように小さな声で契約(テイム)した名前を呼んでみる。


 すると、小さく身じろぎした後に抱えている俺の腕をペロリと舐めた。


「リン」


 もう少し大きい声で名を呼んでみると、それに応えるように顔を少し上げてペロペロと腕を舐めた。


 そんな俺たちの様子を距離を取って見ていたネルケがことさら驚いた声を上げた。


「魔獣をテイムしたのか?」


 ペロペロから頬をすりすりに変わっていたリンを見て、ゆっくりとだがこちらに近付いてきて恐る恐るとリンに手を伸ばした。


 リンはその手を見てから確認するように俺の顔を見た。俺は一つ頷くとその耳元で呟いた。


「彼は俺の友達のネルケだよ」


 腕の中で起き上がったような体勢のリンが、まるで人間の子供のように見えて可笑しかった。


 手を伸ばしたネルケも緊張感が少し取れた気がする。


 リンはそんなネルケの手を舐める事はせず、まるで握手でもするようにねるけの手にその前足を掛けた。


 そんなリンにネルケも「よろしくな」と笑いながら話しかけている。


 一頻りお互いの認識を確認したところで。これから後の事について話し合う事にした。


 いつまでもこの場所を占拠している訳にもいかないので、優先順位を付けて物事を片付けて行くことにする。


 結界を張ってはいるが入ってこようとする人を留める事までは出来ないので、ここを開ける事を第一にする。


 BOXから出した六匹のホーンラビットの内、ネルケが二匹と半分の解体は終わらせていてくれたので、俺も横でネルケのやり方を見つつ元々の状態が一番悪い個体の解体をはじめる。俺がなんとか一匹の処理を終える間に、ネルケは残りの二匹と途中まで手をつけていた一匹も終わらせていた。


 一匹しか処理していないのに、五匹処理したネルケの方が解体で流した血の量が少ないのは経験の差が大きいからか、それとも俺が思いの外不器用だからなのか…。だとすれば、解体してみてホーンラビットの体の造りはよくわかったので次からは魔法で処理する方法を考えよう。


 血を流した後、念のために清浄の魔法もかけて俺の部屋に移動する事にする。解体し終わったホーンラビットをアイテムBOXにしまい、入れる事が出来なくなったリンを抱き抱え、いつもなら転移を使う所だがネルケがいるので歩いて部屋へ戻る。戻る途中で早番だった人が水場の方に向かうのとすれ違った。ギリギリセーフだ。



額にホーンもスターも付いていないラビット飼っています。

ホント、居るだけで、姿形を見るだけで癒されています。可愛いです。親バカです。

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