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第 19 話 異空間部屋

 俺はベッドに、ネルケは一脚だけある椅子に座り、俺の腕の中で俺の顔を見上げるリンを見つめる。


 俺を見つめたままキュピっと首を傾げたリンに、俺は口角がぐにゃりとだらしなく歪みそうなのを堪えるのが精一杯。


『ウチの子なんてかわいいのぉ‼︎』心の叫び!親バカやん!一人心の中で漫才状態だ。


 そんなフワフワと浮足立っている俺の気持ちを、ネルケの冷静な声が一瞬でシャキッとさせてくれた。


「ここでその子は飼うのは……」


 そうだ、なんとなく流れで出来ちゃったから契約(テイム)なんかしてみたけれど、この世界での契約獣の取り扱いとか、それこそテイムじたいの希少性?貴重性?とか全然わからないし。

 これこそ、やっちまった、てこと?

 でも…もうこの腕の中のあったかいものを手放すなんてできないよ…。


『…オウトウノ、キョカヲ、シンセイシマス…』


 いきなり頭の中に響いてきた声に少し驚いてしまった。思わず体がビクンと跳ねた。


 忘れて…イヤイヤ…背中の辺りがゾワっとした…なぜだ…?そんな俺に許可を乞いながらもそれに尊宅していないのか勝手に話し始める…頭の中の何か…?


『…ケイヤクマホウノ、ヒトツデアル、テイムハ、ソンザイハ、ヨクシラレテイマスガ、コウシスルモノハスクナク、トクニコンカイノヨウニ、アマリ、ヤクガタツトオモワレナイ、チイサナマジュウヲ、テイムサレタレイハ、ホトンドアリマセン』


 スキル共有のお陰か、なんとなくリンの気分が分かる気がしていたが、役に立たないの言葉の後にブウブウ鼻を鳴らし始めた所を見ると、当たらずとも遠からずなのかもしれない。


 何も言わずと言うか頭の中に集中してしまって、何も言えないで固まっている俺に、自分の言葉にショックを受けてしまったのかと心配したのかネルケがおずおずと話しかけてきた。


「魔獣に思えない可愛らしさだし、こんな魔獣を誰もテイムしていると思わないからそこは大丈夫かもしれないんだけど…そもそもこの寮と言うかこの曲輪で愛玩動物(ペット)を飼う事が禁止だから…でもワタルならどうにかしそうだけどね」


 ネルケの話の途中で、リンの可愛らしさにやっぱりデレてしまったような俺の顔を見たのか、話の最後には幾分か呆れたような声音でネルケが話を締めた。


「まあ、この部屋で飼う事が出来そうにないのは想像できたよ。いくら泣かないとは言えこの狭さじゃ元々無理そうだし…」


 テイムした事自体がやらかした事じゃ無いのなら、見つからないように飼うことは今の俺なら簡単なことだよね…。


 それをネルケの前でやっていいかどうかなんだけど…、リンの存在を知られた時点でそれを無いことにできないのならば、結果は決まっているんだけど……。


「僕の事なら気にしないで、今更何をしてもそう驚かないと思うから」


 遠い所を見るように乾いた笑いを浮かべるネルケ。


『……』


 頭の中の何かもネルケと同じような空気を醸し出しているように思われるのはなぜだろう?


 いいもん。やちゃうもん。


異空間部屋(ディメンションルーム)


 小さく詠唱しながらイメージを固める。とりあえずはこの子が住む事ができる小さい部屋。広さは六畳くらいかな…六畳って、日本人か⁉︎思わず自分で自分にツッコンじゃったよ。室内は畳ではなく、フローリング。寝床用のクッションも置いてみたりするかな。


 ところでエサって何なんだろう?


『テイム、サレタマジュウハ、ソノアルジノマリョクヲ、カテニソンザイシマス、トクニ、コノヨウニ、チイサクチカラノナイ、マジュウハ、テイムノオリニ、ツカワレタ、アルジノマリョクデ、ハカナクナルマデ、モツコトデショウ』


 儚くなるまでって…エサを考えなくていいのは楽だけどさ。


 側から見ていても俺が何をしたかわからないだろう。


 とりあえず膝の上に座っていたリンを創造したディメンションルームに入れてみる。

 ここで初めて何かをした事がわかるだろう。いきなりリンが消えたのだから。


「アイテムBOXに入れたわけじゃ無いよね、生き物だし…」


「まぁ、似たようなものだよ。とりあえず今日のこれからの行動の事もあるのでしまってみた」


「しまってみたって…」


 必殺、笑って誤魔化せ!で、話を無理矢理変える!


「ところでさ、先程処理したホーンラビットはどうすればいいの?」


 自分でもわかる態とらしい貼り付けたような笑顔を顔に乗せたまま、このままこの話題を続けるようにネルケに強請った。


 ネルケもその意図に十分に理解したのだろう、小さい溜息を零した後俺の提案に乗ってくれた。


「水場でも話したと思うけど…何時もはこんなに沢山倒す事もなければ、持ち帰る事も出来ないから、僕もどうしたらいいか迷うとこなんだけど…普段は依頼を申し込んだところと同じ、館の出張所?に持って行けばいいんだけれど、全部の買取をここでしてくれるとも思えないしなぁ」


 それに、ここで討伐数を重ねても通常のギルドで受ける依頼ほどポイントとして換算されないらしい。


 ここでポイントとは何ぞや?と言う話になるところだが、俺には後で確認は必要だが、どうも常識やそれ以上の事も教えてくれそうな、謎の頭の中の存在が在る。話の腰を折る事はやめて、とにかく先程処理をした六匹はここで買い取ってもらって、それ以外の魔石を含めての諸々は、次の休日に城外(そと)に出てギルドの支部で処置をする事にした。


 なんだかんだでもうすぐ夕食の時間に近くなる、急いで事務処理を済ませようと俺の部屋を出る。


 ネルケは扉を閉めるまで部屋の中が気になっていたようで、廊下を歩き始めても顔は俺の部屋の方に向いていた。


 ネルケも気にしている、異空間部屋に入れたリンだが、テイムでリンクがきちんと繋がっているせいか、落ち着いた精神状態でいる事がわかる。意識を集中させると部屋の中を上から覗き見ているような映像が浮かんでくる。今は部屋の隅に作っておいたクッションの塊の中に埋もれている様子が見て取れた。カワイイ‼︎


 館の事務室の扉を開けると、以前見た事とそっくりな場面が繰り広げられていた。

 そう、パルメと頭の罵り合いである…。


「あんたはそれくらいしか仕事しないし無いんだから、それ位はきちんとしてくれないと、命に関わる事かもしれないんだよ‼︎」

「…わかってる!」

「いや、わかって無いね、これで何度目だい?」

「…」

「あんた、曲がりなりにも頭だろう!」

「…煩い!そうだ俺は頭だ!貴族様だぞ!平民がワーワー言うな煩い!不敬罪で首切るぞ!貴族の俺様は仕事をしにお前たちの入れ無い二の曲輪に行ってくる」


 入り口に立っていた俺達に御構い無しに突進して来る頭。仕方が無いので俺たちが横にずれて頭を通す。とても貴族には思え無い立ち居振る舞いで、ドスドスと足音を立て館から出て行った。


 こんな事は日常茶飯時なのか誰も構う事なく通常運転で各々の作業を続けている。


 今まで鬼のように怒っていたパルメも何事も無かったように、書類にサインをしていた。


「あのサイン、頭の名前なんだぜ」


 横に立つネルケが小声で教えてくれた。そりゃあ、もう…頭とかいらないんじゃね?


 つまり、ほとんど役に立たない頭がやっている仕事といえば、図らずも先程本人が言っていた二の曲輪に行く事。平民が入る事ができない二の曲輪に行って連絡事項を聞いてくる事それだけ。なのに本日と言うか、ここ数日それもせず、何も連絡事項が無いと虚偽の申告をし続けていたのだ。

しかし何日も頭が顔を出さ無いので、親切にも二の曲輪のお役人が溜まっていた連絡事項を届けてくれた事で、その事実が発覚。とくにその連絡事項の中でも、重要と思われる演習場関係の事柄でパルメから叱責を受けていたらしい。


 そう、演習場関係の事柄。俺たちが直面した異常事態は、在るべくしして有った事だったのだ。


 ネルケが言っていたように、この時期としては早過ぎた依頼はそもそもが認められていない事で、軍の演習がやはりまだ行われておらず魔獣の間引き以前だった事と、現在演習場は許可ある者(それも随分と上の方の許可)以外立入禁止らしい。今回の俺たちが受けた依頼、毎年恒例の後始末は、一応確認を取った事務担当者に頭が適当に返事をかえしたことで受理され発生した依頼だったようだ。


 だから俺とネルケのが演習場に入った事自体が違法な事にあたり、尚且つ俺のような冒険者になったばかりの一番下っ端が中に入る事は命に関わる事だと、俺たちが演習場に入った事を知ったパルメが、その元凶である連絡事項をきちんと伝えていなかった頭を責めているところだったのだ。


 怒りのためかサインを書き殴る勢いであったパルメも少し落ち着くと、そこではじめて入り口近くに佇んでいる俺たちに気がついたようで、ペンを投げ捨てる勢いで事務スペースから飛び出してきた。


「よかった!よかった!!二人とも無事だったんだね!捜索に人を入れたいと思っても禁止だって言うし。頭は自分の面子を保つため演習場の中に入った事を無かった事にするって言い張るし。もし入った事を表沙汰にするならお前達が勝手に入った事にして罰を与えるなんて言い出すし…どうしたらいいか迷っていたところだったのさ」


 パルメは、本当によかったよかったと言いながら俺たち二人をその大きな胸板で抱きしめた。声が少し湿っている感じがした。


 演習場内の事を聞かれ、魔獣の数が異常に多かった事と、そのお陰?でとても儲けが多かった事をネルケが伝えた。儲けのところでは、一瞬怪訝そうな表情を浮かべたものの、俺のスキルアイテムBOXを思い出したのか納得の頷きを繰り返すその場に居合わせた人々。


 ある程度話が終わったところで、申し訳なさそうな少し沈んだ様子でパルメが口を挟んできた。


「聞いていたかもしれないが、全くこちらの手違いで今日の演習場の依頼は、元々がなかった事になった。だから普段ここでやっている買取も難しい」


 すまないねぇ、と頭を下げてくれる。


 結局、今日の夕食用に使う分として六匹分の肉をここで買い取ってもらう事と、残りの獲物各種はギルドで通常討伐依頼として処理することに決まった。


夕食に一品、ホーンラビットソテーが追加された。



もふもふもっと増やしたいなぁ…家にはラビちゃんの他にリスとハムがいますが、こいつらはラビと違って余りファンタジーには出てきませんよね…。

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