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龍人にせよ。

セトは、二人と1匹を王国に引き上げ

すぐに、癒し系の龍人に容態を診させた。


少女は、擦り傷、斬り傷はあるが、

命の危険は無いものばかり。

反対に兄の少年は、命の灯火が消えかけている。

小犬も、同じく迫り来る死を意志のみで拒み

少年が生きているうちは、守らねばとでも思っているかのように、

閉じそうになる瞳をカッと見開いていた。


「輝龍さま。」セトは、主である輝龍を呼んだ。


「このセト、あなた様の騎士でございます。

この者達、どうか、お助けくださいませ。

妹想いの兄。

忠義物のこの犬。

こやつは我ら龍騎士に匹敵する忠誠心。

死なせたくない。」


「・・・」

「輝龍さま。」

「我は癒せん。おまえ達すれば・」

「我らが救ったのでは、この者達は下界の者。

ここに住まわせる事は出来ませぬ。」


「妹をここへ」


「そちは、あの時、何でもすると申したな。

その気持ち、今も変わらぬか?」

「はい。そちの兄、名は?」

信竜ノブタツシンリュウと呼ばれておりました。」

「これは、なんと偶然か・・。

そちの兄は、間もなく死す。

が、龍人となり我に仕えれば、この王国で数百年、おそらくは千年ほど、生きられるだろう。

だが、そちとは、もう兄妹では、無くなる。

そして、あの忠犬、あやつは

我が引き取ろう。ここで、育ててやる。

そちは、龍人にする事は、出来ぬ。すまぬ。

寿命が尽きるまで、ここに滞在するが良い。

それで良いか?」

「はい。兄さまとこのは、生まれ変わると言う事ですね。そしたら、私の事は覚えていない。と言う事ですね。生きてくれてたら、それが見られれば

それで充分です。ありがとうございます。」


「ティン(賢騎士の一人)。

信竜ノブタツと申すその少年に、

我の血を半滴与え青年になったところで、

おまえがこやつと契り、身体を癒し治せ。

治った所で、我の残りの血をこやつの血と混ぜ

騎士にせよ。こやつの意志は要らぬ。

騎士になった後は、

ティンが、この国の、世の全てを教え育てろ。」

「畏まりました。」


「セト。この犬、我が連れ戻すとしよう」

輝龍は、小犬の傷全体にソッと息を吹き掛けた。

そして傷が塞がると、

そっとかかえ上げ胸に抱いた。


セトは、目を丸くして輝龍を見た。

輝龍さまは、癒しは苦手。出来ないに等しい。

なのに、小犬の傷が塞がった。

セトは思わず声が出ていた。

「輝龍さま、どうして」

「何がだ?」

「あっ、声出てました?失礼しました。

あのぉ、輝龍さま、癒し系は、苦手で、

出来ないのでは。なのに、なぜ?」

「おまえ、俺は神だぞ!出来ぬ事は無い。

が、下手に力や血を使うと、壊してしまうからな。

やらないだけじゃ。」

「では、このは、壊してもよかったと?」

「何を言う。そんな訳なかろう。

我がおまえ達を創る前に、

どれだけ息吹きの練習したと思っている。

数限りない程の失敗の成果がおまえ達だ。

失敗し続けて加減を覚えた。

忘れる訳なかろう。」

「では、なぜあの信竜は、ティンに?」

「我は、人までは、加減がわからぬ。

おまえ達、龍人に血を与える時、1滴じゃったから、器の小さい人間では、その数分の1程度だろう。だが、あやつは、死にかけだ。死から戻すにはもう少しいるかとな。」

「なんと、適当な!

それで、もし、壊れたらどうなさるおつもりだったのですか!」

「適当とは、失礼だな。だから、ティンに

青年なったらすぐ契れと申したではないか。

ティンは、機敏なヤツだ。青年になる瞬間を見逃さず契るはずだ。さすれば、多すぎる俺のパワー(血)は、ティンに流れるであろう。

だから、壊れぬ。その為のティンだ。

わかったか。」


「では、なぜ、あの少女にも、その方法を取らなかったのですか?」

「あの娘は、自分の命の器がきっかり入っておった。そんな娘をどうやって、龍人にするのじゃ?

下界の者、我の血にてしか、

我の血がすぐに入らねば

この天空界にいられず、龍人にもなれぬ。

例外としては、契る事だが

意識ある幼い子と契られるか!

俺は心が無いと、言われてはいるが、

それは、出来ぬ。

セト、おまえが相手するか?出来るか?出来るのか!

可哀想だが、仕方ない。」


輝龍が血を与えてから数週間が経った。



信竜が、ティンの機敏な反応のおかげで

壊れる事なく人間のまま、輝龍の騎士となった。

ティンは、この王国の事、この世の事を

自身が知る全てを信竜に教えた。


信竜は、疑問があった。

なぜ、自分は人間のままで、龍人ではないのか、

龍人にはなれないのかと。


「信竜をここへ」


「輝龍さま、初にお目見えいたします。

お助けくださり、ありがとうござ」

「そのような、堅苦しい挨拶など、いらぬ。

どうだ、身体は。なんともないか?

それと、謝らねばならぬ。この王国では、自ら望まぬ者を、無理に騎士にはせぬのじゃ。

だが、命を救う為にとはいえ、

意志を聞かず儀式をしてしまった。すまぬ」

「とんでもございません。嬉しく思っております。・・あの、伺っても?」

「何じゃ?」

「何故、私は龍人にならないのでしょうか?」

「何故?」

「はい。この王国の皆は、すべて龍人。

私も輝龍様の血を戴き新な命を頂きました。

当然

龍人になっていると思っておりました。

が、私は人間のまま。他の騎士に比べれば

やはりかなり力が弱く劣っております。

私は恩ある輝龍様に仕え、頼りにされる騎士に

なりたい。悔しいのです。」


「・・鍛えてみてはどうじゃ。」

「どれだけ鍛えても、生産部のものより劣っております。情けないです。」

「どうしたいのじゃ?」

「可能ならば、私も龍人になりたいです。」

「龍人になると言うことは、人間ではなくなると言うこと。

妹の事は、忘れてしまうのだぞ。

それで良いのか?」

「ティン様より、聞き及んでおります。

妹は、元気に生きておるとの事。

妹の事を、忘れてしまうのは・・辛いです。

ですが、妹は生きて穏やかに過ごせている。

命が脅かされる事もなく生きられる。

それで十分です。


私の下界での人生、短く10年でした。

その人生での唯一人の家族を守り抜けた事、

それでもう、悔いはありません。下界での

信龍のぶたつはあの時で死にました。


新な命をくださった輝龍さまを

今度の人生ではお守りしたい。

あっ、輝龍さまが、この世で最強のパワーをお持ちの闘神だと言うのは存じてます。

つまり、わたしの言いたいのは、

命ある限り輝龍さまにお仕えしたい。

輝龍さまの為に、働きたいと言うこと。が云いたいのです。

人間のままなら、この天空界での私の命は、

ほんの僅かで終わります。

それでは、この恩をお返しする時間がありません。

どうか、私を可能なら、龍人にしてください。

お願いします。」


「・・・」

虹輝は、なぜか胸が熱くなった。


「俺に出来ない事は無い。ワハハ

望むのであれば龍人になるが良い」

「是非に!」

「うむ。ゼファード、サーリウス(賢騎士で王国の宰相夫妻)を呼べ」


「輝龍さま、何用ですかな?」

「この王国の宰相である、そち達夫婦に、

こやつを与える。いや、与えるは変か?

まぁ良い。

こやつは、今から、そち達の子じゃ。

わかったな!」

「はぁ?何とまた~?」と、驚き顔のゼファード。


「こやつ、信竜は、龍人になりたいと願っておる。

叶える事にした。そなたらが親じゃ。」

「叶える事にした。ってそんな簡単に言われても」と戸惑い顔のサーリウス様。

サーリウス様は、こっそり夫で宰相のゼファード様の腕を掴み、意見するよう合図する。


「あのですねぇ、親を決めたら、それで人間が龍人になるなんて、輝龍さま、マジで思ってませんよね?」とのゼファード様の問いに

「思ってると、思うのか?

思ってたとしたら、バカだろ、それ。

どうしたら人間を龍人に出来るか考えろ。

それから、こやつの名前は今から

信竜のぶたつより信龍しんりゅうとする。

ゼファード、サーリウス。次会うときは

龍人になった信龍を見せてくれ。」


困り果てたゼファードとサーリウスは

輝龍の姉であり、創造神であるアモレイシアと

その夫で同じく創造の神のブライデュシアスに助けを求めた。


「レイシャ様、デュシ様、どうかお知恵を・・」

「しばらく振りですね。珍しい事もあるものだわ。どうしました?

また、虹輝こうきが、難題でも吹っ掛けて来ましたか?」

「はあ・・」と、ゼファードとサーリウスは

事の顛末を語った。


「なんとまぁ・・人間を龍人にせよ。とな?

それも、こうの血で生き永わらせた人間をと。虹は、そんなに執着するように?」

「と、言うより、その者、信龍と言いますが

輝龍様に、命ある限り仕えたいと龍人になる事を直訴したのです。輝龍様は、強くお心を動かされたご様子で、我ら夫婦の子にせよ。と申されたのです。

我らも、信龍の思い叶えてやりたいが、前代未聞、

成す術がなく、お力をお借り出来ないかと。」


デュシ様と顔を見合わせ笑顔になり

「承知」と答えられたレイシャ様は

とても嬉しくて堪らないといった顔をした。


デュシ様はフロレンティアに降りて

何やら調査された後、レイシャ様と何度も意見を交換された。


「ゼファード、サーリウス、信龍と共に我らの近くの天空界にいらっしゃい。」

「はっ、すぐ参ります。」


到着したと同時に、レイシャ様達は

信龍を抱き締め

「あなたが信龍ね。はじめまして。

輝龍の姉です。こちらは、私の夫。

しばらく、眠りなさい。」と、信龍を眠らせると

レイシャ様は、信龍の体から

人間の遺伝子と、輝龍の血を取り出した。

そしてゼファードとサーリウスの遺伝子を埋め、

輝龍の血を戻した。

物凄く、繊細な作業をあっという間にやり終えたのは、流石に神。

いや尊厳神だ。

とゼファード夫婦はあらためて思ったのだった。


頭の中に鳴り響く輝龍の声に

ゼファードとサーリウスは、レイシャ様夫婦に

感謝の言葉を述べるも、お急ぎで

輝龍の待つフロレンティアの天空界に戻ったのであった。


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