1_12:》反転、ロークアンディルテは檻の中。(ハッピーエンド!)
3:
『魔法使い』は、目の前の光景に、様々な感情を持て余していました。
ロッテのあとを追っていなければもっと時間がかかっていただろう迷路の奥にあった、ロッテが“鳥籠”と形容した檻。
その中でただ存在しているだけのような、空っぽのお姫様。
「ほんとうはね、ロークアンディルテというの」
ロッテは愛称だったから、と困ったように笑って言った幼い姿に、『魔法使い』は手を伸ばしかけて、けれど、時間がないことも気付いていました。
ちらちらと小さな光を、その小さな体から零れ出させ始めたロッテに、『魔法使い』は一度辛そうに眉を寄せて、そして、同じように困ったような笑みを浮かべて、問いかけます。
「どちらで呼ばれたい?」
「んー、ロッテ、かなぁ。もうそう呼ばれて嫌な人も、いなくなったみたいだから」
「リアム」
「……」
「僕の名前。もうちゃんと聞こえている?」
「……うん。だけど、それを呼んでいいのは、きっと私じゃないよ」
「困った子だね」
「それでも、許してくれるでしょう?」
どんどんと光が強くなっていく中、取り留めもない会話を交わして、そして、本当にロッテが消えてしまう、直前。
「だからね、きっと、待っててね」
ロッテが言った言葉に、『魔法使い』は優しく微笑んで、あとにのこった光に、何かを耐えるようにして目を瞑った後、光を纏うようにして座り込んでいる彼女に、目線を合わせました。
どのくらい、そうしていたでしょうか。
とてつもなく長く感じる時間の中、祈るように彼女の目を見つめていた彼は、ほんの微かに揺れた彼女の瞳に気付いて、ほっと破顔しました。
「おはよう、ロッテ。……助けに、来たよ」
ぱちぱちと、緩慢な動作で瞬きをした彼女は、やがてふわりと目元を緩ませて。
「あなたが、おうじさまだったのね」
ロークアンディルテは檻の中。
優しい彼の、優しい優しい腕の中。
幸せそうに、笑みを浮かべましたとさ。
――めでたし、めでたし。




