↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が育てた孤児の娘たちが、全員神様になってました  作者: 綺村 亮介


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/17

01_プロローグ「二つの選択肢」

==========

■プロローグ■

==========


――魔王との戦いは、三百年に渡って続いていた。


 その戦いに終止符を討つべく、魔王討伐を目指す冒険者は珍しくない。

 俺もその一人だ。


 なぜ魔王討伐を目指すのか?

 多くの人は、金と名誉を求めてだろう。だが俺は――本気で世界平和を願っていた。


 『悠久の調和』、それが俺が属しているチーム名だ。

 20歳の頃に結成し、人数は俺を含めて5人。

 仲間に恵まれ、とてもバランスの良いチームとあって、破竹の勢いで活躍していった。

 

 いつしか俺たちは、『魔王を討伐せし者』――『勇者』に最も近いチームだと噂されるようになっていた。



◆-----------◆



 そして26歳の時、いよいよ本格的に魔王討伐に向かおうとしていた時――緊急の依頼が舞い込んできた。


『とある孤児院に大量のモンスターが接近している。至急モンスターの討伐を願う。難しければ、孤児たちだけでも救ってくれ』――と。


 俺はためらうことなく、分かったと即答した。――しかし、リーダーはその即答を即取り消した。


「これから私たちは、魔王の本拠地に向かわなければならない。それがどれだけ大事なことか、分かるだろう?」

 リーダーは困り果てた顔で続けた。


「全体の戦況、魔王軍の動き、そして魔王の懐刀と呼ばれる『黒騎士』の不在……。全てを考慮した上で今しかないと言ったのは、ルイン……お前自身じゃないか」


 そう……リーダーの言うとおりだ。

 魔王を討てるチャンスは、今なのだ。もしかしたら、これが最初で最後のチャンスかもしれない。

 リーダーは正しい。他の仲間たちも、苦渋の顔で納得していた。


 国家の勝利と、孤児院の救出。そんなの、天秤にかけるまでもない。

 だけど、だけど俺は……俺は……!!


 気がつくと俺は、孤児院に向かって走り出していた。

 リーダーの怒鳴り声も、仲間たちの静止する声も無視して。

 俺は、一人でも孤児院を救ってみせると決めていた。



 ※



 現場近くに辿り着くと、おびただしい数のモンスターたちが周囲を包囲していた。

 数十体のサイクロプスに、数百のリザードマンやコブリン……。

 まるで国や要塞を攻め落としにかかっているかのようだ。


 しかし、周囲には国も要塞もない。あるのは、寂れた街と孤児院だけ。

 どうしてこんな辺境に、こんな戦力が集まっているんだ……?


 だが俺は、浮かび上がった疑問をすぐに捨てた。

 今やらなければならない事は、一つだけなのだから。


 俺は息を殺し、索敵に見つからないように進んでいく。

 たった一人で来たことが、逆に功をそうしたようだ。


 俺はなんとか包囲網をかいくぐり、やっとの思いで孤児院の中に入り込んだ。

 だが――ほんの少しだけ遅かった。


 今まさに俺の目の前で、院長と思わしき初老の男性が……真っ二つに斬り殺されていた。

 院長は、最後の最後まで子どもたちを守ろうとしたのだろう。背後には、泣きじゃくる5人の子どもたちが居た。

 院長を襲った凶刃が、そのまま子どもたちに向けられた。


 俺はありったけの魔力を込めて、閃光魔法を放った。

 怯むモンスターたち。一瞬の隙を付き、俺は5人の子どもたちを担いで孤児院から脱出した。


 ああ……なんてことだ。

 俺は……魔王討伐か、子どもたちを救出するか、迷ってしまった。

 その迷いが院長を――彼らの父親同然の存在を死においやってしまった。


 おびただしい数のモンスターから逃げるために、そして罪悪感から逃げるように、俺は無我夢中で走った。



 ※



 バックトラック(止め足)、ステッピング・ストーン(石を渡り歩いて足跡を残さない)、アラーム・トラップ(即席の鳴子で混乱)、フォールス・トレイル(偽物の痕跡)……。


 俺はありとあらゆる手段を尽くし、追手を混乱させた。

 そしてなんとか逃げ切った俺は、たまたま見つけた洞窟の中に潜むことにした。


 一昼夜走った疲れが一気に押し寄せ、俺は倒れるように横になった。

 洞窟の中は真っ暗だ。だけど見つかる危険性がある以上、焚き火をするワケにはいかない。


 5人の子どもたちは、自分の手すら見えない暗闇だというのに、泣き声一つあげなかった。

 今の状況を理解している……というよりは、何かに耐えることに慣れているように感じた。まだ5~6歳ぐらいの子どもだというのに。


 一段落したからか、今更になって後悔の念がフツフツと湧いてきた。

 ああ……やってしまった。全部台無しにしてしまった。


 魔王討伐の――世界を平和にする絶好のチャンスを、自らの手で潰してしまった。

 こんなチャンスが来るのは、あと何年後だろう? もしかしたら、もう二度と来ないかも知れない。

 仲間たちも烈火のごとく怒っているだろう。


 反省と後悔が心に押し寄せてくる。

 重い。潰されそうだ。――いや、物理的に本当に重いし潰されそうなんだが。


 5人の子どもたちが、俺の身体に伸し掛かっていた。まるで、寄辺を求めるように。

 最初は恐怖で震えていたが、少しずつ収まっていき、やがて寝息を立てるほど落ち着いていった。


 ああ……助けてよかった。心の底からそう思った。

 俺が助けに行かなかったら、今頃もう――。


 俺は孤児だ。だから、5人の子どもたちの気持ちが痛いほど分かる。

 怖かっただろう。恐ろしかっただろう。それに……誰も助けてくれないという諦めもあっただろう。


 この世界は、孤児に対して厳しい。

 親に見捨てられ、国に見捨てられ、人に見捨てられる。そんなのが当たり前にまかり通る世界だ。


 俺が世界平和を目指すのは、そんな孤児を無くしたいという気持ちもある。

 孤児というだけで全てを否定されるなんて、おかしいに決まってる。


 だから俺は、5人の子どもたちを助けたことに、もう何の反省も後悔もない。

 この温もりを守れたことは、きっと魔王討伐に挑戦するよりも価値がある。


 だから俺は、これからする選択に、何の後悔もない――。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけるとうれしいです。

ご感想も大歓迎です。


次回は10分後に更新します!

引き続き、本作をよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。