29.陸道の天道様
灰色のコンクリートの道が続く。その道の付近には高架が存在している。
「ここはサイクリングロードで、上の方が高速道路となっております。普段なら、自転車や自動車で気持ちよく通り抜けれる場所なのですが、このような現状ですからね……。」
道に突き出るように存在する氷の岩や山。それらが道を塞いでいた。
「歩いて進んでいくしかなさそうですね。」
冷気漂う道路をひたすらと進む。
そして、巨大な氷山が道を塞いできた。
「では、ここが私が――」
「うちがやろっか……?」
二人が名乗り出た。カゲトとフェルナだ。少し見合った後で、フェルナが氷山を何とかすることになった。
【フェニックス】
巨大な炎の鳥に変身した。神々しい炎を纏っている。
「フル【フレイム】!」
炎の爆炎が広がっていく。あっという間に氷は溶けていった。フェニックスは人間の姿に戻っていった。
「凄い。……あれ? この炎を使えば、凍った町も溶かせるんじゃ……。」
「火力調整ができなくて……。多分、建物と中にいる人も燃やしちゃうかも。」
「そりゃ、使えないわ……。」
「まぁ、でも、不死鳥だと火力不足だけど、入り口だけは溶けたから。多分、問題ないんじゃない? 知らないけど。」
いや、自分の町のことでしょ……。知ってくださいよ!
「あれ? 不死鳥とそのさっきのフェニックスって何か違うの?」
「うん。回復する対象が違くて……。フェニックスは技の消費エネルギーを回復して、不死鳥は体力を回復するみたい。後、戦えはしないけど鳳凰にも変身できるかも。」
鳳凰っ!?
「鳳凰の変身は初めて聞きましたね。」
「見ます……?」
鳳凰への変身を見せてくれることになった。
【梟!】
丸っこい茶色っぽい梟みたいなポケットに入りそうなモンスターに変身した。
「それ、鳳凰じゃなくてホ〇ホ〇じゃない? あの……あれ、ポ〇モンに出てくる奴。」
「それはいけません。ノーマルと飛行タイプの鳳凰みたいな名前のポケ〇ンですが……全くの別物。そもそもメタはいけません!」
とりあえずその形態は役に立ちそうもないことが分かった。
再び、私達は先を急いだ。
◆
「火遁【火球】爆炎――」
溶け出す氷。
もうすぐで道の三分の二のエリアまでやってこれた。
カチッ!
熱風が襲いくる。
突然の爆発。巻き込まれはしなかったけど、下手に進んでいたら危なかった。
「これは……罠?」
「ここに来るまでの氷が雪女によるものであれば、ここから先はその仲間であるワテムが仕掛けた罠があるのも頷けますね。ここからは慎重に進むべきですね。」
「うちが人を乗せられたら多分早そうなんだけどね。」
どうもこうも言っても仕方ない。ここは進むしかない。
カチッ。
プシュゥ……。そんな音が長く鳴り響く。
地面から煙が飛び出してきた。白い霧が辺り一面にかかっていく。
周りが見えない――。
カチリ。
どこかでトラップを踏む音と爆発の音がした。
一体今どうなっているのか……。
「こっちですよ――。」
ファミが私の手を握った。この子が先に行って先導してくれる。
――――――。
霧から脱げ出した。
進んだ先は森の中。だいぶ逸れてしまったみたいだ。
「戻らなきゃ……。」
「駄目ですよ。戻っちゃ。あなたはここで死んでくれなきゃ駄目なんですよ。」
さっきまで私よりも小さかったファミはいつの間にか私よりかちょっと大きいぐらいの身長となっていた。
そして、私のすぐ真後ろに立って、首元に刀を回していた。動けば刃が刺さる。
「やっぱり、あんたは嘘をついて――。」
「勘違いしてないです? ボクは嘘は言っていないですよ。」
【蛇――】
ファミが蛇に変わって落下した。振り向くとそこには棒人間に変身しているボーニーがいた。
「危なかったでござるな。丁度、一仕事を終えて近づいたら、怪しかったから、ずっとバレないように付けてたんでござる。やっぱり別行動して正解だったでござる。」
そうか。私の後ろにいたファミ、のさらに後ろにボーニーがいて、ファミの裏切りから救ってくれたのか。――助かった。
ってか、どこから付けてきたのだろうか。聞こうにも聞けはしなかった。
蛇が人間の姿に戻る。
――"解除"。
ファミの姿が別の人間になっていく。仮の姿が解かれていく。
「ボクは天道教の下になんかつくわけがない。逆に、天道教の上にいる立場だからね。」
その男を私は知っている――。
彼は、アンチギルドのヘイムだ。
「本当は君を始末して、少しでも"天道教"を楽にしてあげたかったんだけどねぇ。まさか、ボーニーがここで登場するとは。ほんとっ、奇遇だね。」
「久々だな、ヘイム。」
ボーニーが剣を構えている。
「ほんと久しぶりだね、ボーニー。だけど、ボクはここで失礼するよ。天道教はボクがいなくても何とかやっていけるからさ。」
「天道教とはどんな繋がりだ?」
「教えて欲しい? 昔の仲間に免じて、特別に教えてあげるよ。天道教はアンチギルドの下部組織で、御贔屓なんだ。現に、幹部の一人は天道教の信者だし……ね。」
天道教とアンチギルドには繋がりがあるので確定した。さらには、天道教にはアンチギルドの幹部もいる。
敵対する腐れ縁が繋がってるような気がした。
「明後日のニュースを楽しみにしてるよ。襲撃は成功するのか否か。勇者は処刑されるのか君達が未然に防ぐのか否か。……いやぁ。楽しみだね。」
明後日――。その言葉を聞き逃さなかった。頭の中で復唱した。
「ということで、ボクはここで失礼するね。じゃあ、またどこかでお会いしましょう。じゃあ、さようなら~。」
彼は走ってどこかへと去っていった。
私達は追うことをしなかった。
◆
私達は無事にカゲト達と合流した。
ファミがヘイムだった件と、ボーニーが助けてくれた旨を共有した。
「ファミ……。彼の正体が明かされた今、改めてその名を聞くと巫山戯た名前にしか聞こえませんね。気付けなかった私を嘲笑うようで癪に障る。」
カゲトは何かに気づいて胸糞悪い気持ちになっているのだが、何故そうなっているのかはまだ分からない。なので訊ねてみた。
「『フ・ァ・ミ』の文字を一文字ずつ下にズラすと『ヘ・ィ・ム』となります。」
はっ。私も理解した。フの次はヘ……。全て合わせるとヘイム。言葉遊びで作られたのがファミだったんだ……。それはもうイラつきますね。
「話を戻していいか? 拙者が怪しすぎる"天道教"に潜って捜査した結果を話したいのでござるが……。」
ボーニーは私達と別行動をしていた。その時に、怪しい動きをしていた"天道教"について調べ上げていたみたいだ。
「最近、魔族共存と民族主義による民族浄化を掲げた"天道教"が活発化しているのは分かっていると思う。拙者は、その中心核の人物を調べあげたでござるのだ!」
私達は家具に座りながら彼の話に耳を傾けていく。
「『天道様』と呼ばれているのが彼らのトップ。元は彼の兄、兄の死後はその兄の二人の子が教祖様と呼ばれていたみたいだが、今では天道様が教祖様と呼ばれている。 兄の子孫の三番目の子が『知恵の代行者』と呼ばれ、教団内で側近として力を持っている。」
天道教のトップは天道様。そして、側近の勇気の代行者。
「他にも『勇気の代行者』と『力の代行者』と呼ばれる強者がいるが、拙者では確認すらできなかった。確かなのはそんな存在がいることと、それなりの実力者ということでござる。」
つまり、他にも二人実力者が存在する。
「天道教は最近になって、中級地域以降の各地から猛者を集め、幹部に据えた。その猛者達を『陸道』と言う名称で呼ぶ。」
「陸道……?」
「『天道様』の他、地獄の鬼王『地獄道』、修羅の戦士『修羅道』、人間の知恵『人間道』、餓鬼の怪鳥『餓鬼道』、畜生な雪女『畜生道』の六人でござる。」
この内、五人とは面識がある。あまり、いい思い出はないが……。
「明後日に本拠地"シャドウ"にて大規模の特別集会が開かれると言う話を聞きつけたのでござる。それまでは厳重に守られてるため救い出すのは非常に困難。狙うならその特別集会の時でござる。」
その言葉に、空気が一瞬止まった。
つまり、その特別集会を狙って奪い返しに行けばいいのか。大規模だけあって、警戒ポイントが増えて、警備も手薄になるという判断なのだろう。
まとめると――
《天道教》
目的――魔族共存と民族主義による民族浄化。
本拠地――シャドウ。
明後日に大規模特別集会。この時に、ハロミト奪還作戦を行う。
《天道教の重要人物》
〇陸道
『天道様』――教祖様。未知数。
『地獄道』――舌を抜いたり火を操ったり。
『修羅道』――カゲトを知るトンファー使い。
『人間道』――私達を裏切ったワテル。
『餓鬼道』――ハゲタカになる女。
『畜生道』――雪女。氷を操ってくる。
〇中枢勢力
『知恵の代行者』――側近。未知数。
『勇気の代行者』――不明。
『力の代行者』――不明。
……という感じだろう。
運命の日は明後日。
少し体が硬っている気がする。
少しその場で飛び跳ねて、深呼吸して呼吸を整えた。
絶対にハロミトを救い出す。上手く行きますように――。私は頭の中で何度もそう呟いた。
私の後ろには、カゲト、カナリン、ボーニー、パルパル、フェルナがいる。
私達ならきっと――。




