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死亡=現実でも死のバグ世界、お嬢様と執事の生存・脱出戦略~『詩忍にくちなし』~  作者: ふるなゆ☆


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27.陸道の餓鬼道

 ファミはパルパルを連れて一時的に離脱。離れた岩場で息を潜める。戦える私とハロミトでそこに立つ。


 ハゲタカが鋭い(ひづめ)を前に出して飛び込んできた。


【自分自身】【重火器】


 大砲による防御。

 ふと、ハゲタカが姿を変えて人間に変わった。大砲を手で掴んで、前に移動する。

 それは褐色のみすぼらしい服装の女だった。


【ハゲタカ】


 すぐに人間から鳥に変身し、鳥の蹄で捕えられてしまった。後ろの大砲と挟まり動けなくなってしまった。


【銃――】


 手に持った銃。ここからなら頭に何発も撃てる。


 だけど、引き金が――引けない。


「あんた、迷ってるね。戦えない人間だ。じゃあ、あんたにいい所教えて上げるよ。天――」


 ハロミトの剣の一振。

 それにサッと気づいた彼女はすぐさま飛び立って回避した。


 そのまま降りてくる。

「話してる最中なんだけど?」彼女は人の姿に戻った。


「まぁ、いいや。ねぇ、あんた、"天道教"に入信しない? きっと生きやすいと思うわ。入れば、誰かを殺す必要などなくなる。だって、あたしらがぜーんぶ代わりにやってあげるから。あんたが責任を取る必要なんて何一つなくなる。」


 揺らぐ心。今の私にとってはとても心地よい言葉。


「そんな言葉、聞かなくていいっすよ。」


 ハロミトの反対する言葉も効果が薄い。


「そうそう。名乗り忘れてたな。あたしゃ"天道教"『餓鬼(がき)道』のハスナ――。それなりの地位があるんだ。ちゃんとあんたの身を保障したげるよ。」


 敵だったはずのハスナが優しく微笑む。さっきまで殺しに来ていたのにも関わらず、敵対する気持ちになれない自分がいる。


「天道教の信者は悩む必要も罪を感じる必要もなくなる。神が全ての(けが)れと責任を取っ払ってくれるのさ。今、辛いんだろ。悩んでるんだろ? 逃げ道はここだよ。」


 ふと手に感触がある。

 気づいた頃にはハロミトがそこにいた。


「こんなイカれた宗教なんかに逃げなくていいんすよ。そもそも嫌なこととかがあったら逃げりゃいいんす。――ただ、逃げるそん時は俺も一緒にっすよ!」


 用意されていく二つの逃げ道。だからと言ってどちらにも踏み出せはしない。

 ただただ口から出まかせのようなハロミトの言葉が私の足を掴んで離さないでいてくれる。


「……。もういいから、そこの勇者をこっちに引渡してくんない? ただ、殺さないでね。殺すのは後でこっちでやるから。」


 その物言い……ハロミトを殺すのは確定なの?


「私、入信してもいいよ。」


 ハロミトがもの寂しいような顔をしていた。


「その代わり、ハロミトには手を出さないで。」


 それが私の意思だった。


「――それは無理だな。勇者の死をもって、ようやくあたしらの世界に導かれていく。死ななきゃ意味が無い。……なんだ、まあ、安心しな。名誉ある死だ。その死後は天国さ。そして、天道教を強く信仰すれば天国。つまり、天国で一緒になれるんだ。それでいいだろ?」


 そんなの当たり前に「よくない!」


「聞きな、餓鬼(がき)共。正しいのは常にあたいらなんだよ。正義の処刑だ。悔やまなくていい。悲しまなくていい。ただ我々の神に誓っていりゃいいのさ。」



 心が震えている。(まぶた)の裏が(うるお)ってくる。


 けど、この気持ちだけは揺るぎない。伝えなきゃいけない。


「そんなの……正義じゃないよ。なんだろ。ようやく今、気づいた気がする。私、逃げていいって言われて救われたと思った。だけどさ、それで大切な人がいなくなるのなら、そんなの救われる訳がない。」


【銃――】


 手が震えてる。だけど、しっかりと構えられてる。


「逃げて失って後悔するぐらいなら、進んで責任でも何でも背負って生きてく方がいい!」


【ハゲタカ――】


「ふーん。虚勢を張ってるみたいだけど、本心はまだ悩んでんじゃないの……?」


 もう目の前に来た。引き金はまだ引けない。指が動かない。意識が邪魔をしているみたいだ。


「最後のチャンス。天道教の信者にならない?」


「ならない!」それだけはきっぱり言えた。


「じゃあ――死んで。」


春嵐(はるあらし)


 羽ばたきで突風が襲う。

 ハロミトも私も吹き飛ばされた。



 パサッ。



 ハゲタカが空を飛ぶ。

【羽――】

 そして、ハゲタカの羽が宙を舞っている。その先端がこちらを向いている。


「【針】千本桜――!」


 羽が針のような鋭さになって私に向かって進んできた。


 誰かに押されて地面に転んだ。


 ザクッ!


「はっ――?」


「大丈夫……すか? 怪我……ない……すか?」


 私の上に覆い被さるハロミト。彼が針の大雨から身を(てい)して守ってくれた。


「大丈夫じゃないのはそっちでしょ!?」


 その場に倒れるハロミト。


「はぁ、死んでないよね? こうなったのは、あんたが入信を決めなかったからよ。まあ、心を入れ直して、今から入信するのなら責任は神が全部肩代わりしてくれるから安心しな。」


 ハゲタカが針の(むしろ)の地面に降り立った。


「そいつを手土産に入信しちゃいなさい。もちろん、今は(・・)この子を殺さないし、それどころか後で回復させてあげるから、その子を引渡して。」


 

「今は……でしょ? どうせ後で殺すんでしょ?」



「そうね。決めるのはいつだって強者。この世界における強者は天道教の――」


【重火器】引き金を引く。


 

 ドガァァァン!



「話してる最中に攻撃するなんて卑怯じゃないのか? 正義も何もありゃあしない。」


 その攻撃を受けても平気そうに立っていた。


「正義じゃなくていいよ。私は悪になってもいい。それで大切な人がいなくならないんならそれでいい。もう私は――迷わない。」


 ハロミトの冷たくなっていく体温。それが私のドロドロとした迷いを流しきっていた。


「なんか……。やる気のようだねぇ。じゃっ、あんたを殺して無理やり回収する。天道教を邪魔する者は何人(なんぴと)たりとも殺すだけだわさ!」


 ハロミトを回復させる手段は今のところない。ひとまず安全な所で回復できるカナリンを待たなければ……。

 私はファミの方を見た。

「ごめん。ハロミトのことお願いしていい? 私、戦わなきゃならないみたいで……! 逃げてハロミトを奪わせたくないからさ。」


【重力】ハロミトの体がファミの方に浮遊して進んでいった。


 やはり、瀕死で動けないハロミトを奪い取ろうと動く気配はない。先に私を殺してから奪い取りに来るのだろう。

 ――狙いは私。なら、しっかりと引き受けてハロミトへの危険を少しでも取り除く!


 ハゲタカが飛んできた。


 カチッ。引き金を引く。しかし、体を反らして避けてきた。

 体当たり攻撃。まるで鉄みたいな硬さの石頭。


 重火器攻撃が当たらないのなら……。


【銃】


 手軽な銃で当てにいくだけ。


 パン! パンッ!

 二発撃った。


「砲弾が効かないのに、小っちゃな銃弾が効く訳ないじゃない。あー、おもろ。」


 再び体当たり攻撃を仕掛けてきた。

 何度も引き金を引く!


「ハゲタカの鋼鉄の体に銃なんて効かないのにね。無意味な努力。ご苦労さま。」


【ハンマーヘッド!】


 体当たり――重い一撃。私は後ろ側へと少し吹き飛ばされてしまった。


 鳥は空を飛んでいく。

 仰向けになりながら、空の下、飛んでいる鳥を手で追いかけている。


【磁力――】


 私は浮いて空高く進んでいく。

 浮遊――。そのままハゲタカに向かって空を進んでいく。


「何、あんた。何で空なんか飛べるわけ?」


 ついに、私はハゲタカに密着した。そして、そのまま首を(つか)む。


「教えて欲しい?」


「普通、戦いの謎は教えてくれるもんじゃない?」


「うーん。秘密!」


「うざっ!」


 実際は、放った銃弾がハゲタカの体毛に残っていて、そこに向かって"磁力"を発動したことにより、磁力の力で私が銃弾に引き寄せられただけ。

 そんなこと、この人が知る必要もないからね。


 頭上は私が取った。


 

【ジェット――!】



 真下に向かって轟速(ごうそく)の加速するフリーフォール。地面に勢いよく衝突した。

 きっと直接、硬い地面に叩きつけられたハゲタカは一溜りもないだろうな……。



 

 体が痛い。腕の骨と肋骨(ろっこつ)(きし)む感じがする。


 砂煙が舞う中、私はハロミトの方へと駆け寄る。


「ねぇ、大丈夫?」


 ゆっくりと瞼を開けてこちらを見てきた。何とか意識はあるみたいだ。


「……やるねぇ。あたしゃ、ブチ切れちゃったよ。」


 砂煙が風で消える。

 平気そうに立っているハスナがそこにはいた。


「最悪っ。何で無事なのよっ!」


「ハゲタカは硬いのさ。生半可な攻撃、効きはしない。」


 せっかくハロミトと離れて戦っていたのに、倒したと思って彼の元へと駆け寄ったから、今戦闘したら彼を巻き込むことになってしまう。


 本当に――「最悪。」


「さて、神の思し召しのために、ひと仕事……。」


 段々と近づいてくる。


 

「忍具【(かな)物】クナイ!」



 山の所から金属製の武器が彼女目掛けて進んできた。彼女には当たらなかった。

 

 シュッ。その場に降り立つカゲト。


【回復――】


 カナリンもやって来た。ハロミトが回復した。

 もちろんワテルもいる。ようやくの合流だ。


「ちっ。流石(さすが)に『忍刀』とは戦わないさ……。」【ハゲタカ】


 ハゲタカは空を飛んでいく。逃げるように去っていった。


 先程の喧騒は消え、今は、静寂な山の(うごめ)きしか響いてこなかった。





 ワテルの目的地であるZプリンセス山に着いた。

 そのまま彼に着いて洞窟の中を進む。


 トラップなどは仕掛けられておらず、順調に前へと進めている。



 洞窟を抜ける。私達は山の高い位置に出た。

 そこは崖のように外に突き出た場所になっていた。そこには一人先着がいた。


 その人は白い装束姿の女性だった。


「ここから"永久の町"が見下ろせますわ。綺麗ですのよ。是非、お友達様も特等席で眺めてくださいませ。」


 その女が優しく微笑む。


 私達は高い山の崖から永久の町を見下ろした。



 凍りついた町だった。

 雪が降り、地面は凍っている。幾つもの巨大な氷が家を包み込んでいる。あれでは出入りもできない。


 そこはまるで永久凍土の町に見えた。


「何が……起きているのですか。何故、町が凍っているのですか?」


 カゲトは動揺していた。彼は多分、元の町の姿を知っているはず。つまり、この状況は明らかに変――。


「わたくしの能力で氷漬けにしましたのよ。ここから天道教による破壊が始まりますわ。特等席で楽しみましょう。」


 それはまるで嬉々(きき)とした言い様。


 地面が揺れるような衝撃音。何かが町で(うごめ)く。


 突然、町から恐竜が現れた。

 その恐竜が町を破壊し始めていった。


 人々が逃げ惑う。


 それはまるで地獄絵図のように思えた。

 一体全体、何が起きてるの――?

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