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お釜大戦  作者: @FRON
第八章 ゼロの決死圏!!
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∥008-H 閑話休題・歴史探訪――ハーバート・ウェストの改心

#前回のあらすじ:あぽかりぷす・なう!



―――1()9()4()5()()8()()1()5()()


奇しくも、我々にとっての()()()()()

アメリカ合衆国はこの日を最後に崩壊し、後に東西へと分裂するのである。


そのきっかけとなった第一の要因―――首都ワシントン近郊にまで迫った『死者(Necro)の軍勢(Force)』。

次に、それを打倒すべく、極秘裏に進められていた―――『アーカム計画』。


この時点で『死者の軍勢』は既に百万単位にまで膨れ上がっており、首都ワシントン目前にまで迫りつつあった。

正に絶体絶命の状況、そこへ最後に残された一縷の望みとして提示されたのが、『アーカム計画』である。


しかし、それすらもナイアルラトホテップによって用意された、()()()()であった。

ホワイトハウス前、固唾を飲む民衆の前にて、高らかに読み上げられる『死霊秘法(ネクロノミコン)』。


上空に生じた、虚空へ通じる『門』。

それを通じ、この世へと溢れだしたクリーチャーの群れ。


各国のマスコミを招いて大々的に開かれた式典は血に染まり、生きたまま貪り食われる犠牲者たちの悲鳴によって満たされた。


米国首脳陣は全て消息不明。

式典の参加者はその多くが死傷した。


導くべき頭を失い、アメリカ合衆国は事実上、この日を最後に無政府状態へとなり果てたのである。


―――望みはもう、残されていないのか?

―――人類に、希望の明日は来ないのか?


()


まだ、()()()()()()が残されている。

それは、式典の裏側で繰り広げられた()()


ミスカトニック大学の有志達による、必死の抵抗が生んだ()()

()()()()()()()()()()()()()()()であった―――




  ・  ◆  ■  ◇  ・




[マル視点]



「蔵書である、『死霊秘法』が悪用されるのを()()としなかったミスカトニック大学は、『アーカム計画』の発動を阻止すべく決死隊を編成しました。集められたのは在学生・教授・OBを中心とした十余名。彼等は協議の末、『計画』の舞台であるホワイトハウス、そして首都に迫りつつある『死者の軍勢』の二つを相手取り、孤独な戦いを始めたのです」


「えっと。人数が限られてるんだし、どちらか片方に集中した方が良かったんじゃ・・・?」


「どちらにせよ、圧倒的な数の差がある訳ですからねぇ~。()()()()の戦力を片方へ集めるよりは、ダメ元で両面作戦に出ようと考えたみたいですねぇ。特に、ハーバート・ウェストに関しては()()()()()()()があったようですし・・・」



引き続き、喫茶店にて。


現在、俎上に上がっているのは第二次大戦末期における、ミスカトニック大学の動きについて。

首都ワシントンで進行中であった()()()()()、それに対し彼らは二手に分かれ、阻止すべく行動を開始したのだという。


その片方、『死者の軍勢』の対処にあたったチームが選択したのは―――()()()()

トップ一点狙いの、()()()()であった。



()()・・・って?」


「それはですねぇ。『死者の軍勢』が抱える構造的欠陥—――()()()()()()()()()()()()です。そも、『軍勢』は皆、『死体蘇生者』の蘇生薬によって蘇った()()です。逆を言えば、件の狂科学者無しで彼等は()()()()()訳ですねぇ。つまり―――」


()()()()()()()()()()()()()、『()()()()()()()()()()・・・?」


「その通り。根幹となる蘇生薬の供給を停めてしまえば、『軍勢』そのものを攻略しやすくなると考えたんですねぇ。少なくとも、()()()()()()を潰す事は出来る訳ですからねぇ~」


「なるほど・・・」


「ですが、ただ殺しただけでは()()()()恐れがあります。相手はゲームに例えるなら、()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()ですからねぇ・・・()()()()()!」


「それ、ありていに言って()()()()なのでは・・・?」



奇怪な笑い声を上げる老人に、ぼくは呆れたように呟く。


聞けば聞くほど絶望的な状況に思えるが、歴史上、『死者の軍勢』はここで一度()()()()()()のだ。

何らかの()()が起きて、決死隊はその目的を達したと見るべきだろう。



()()()()()()()()()?とでも言いたげですねぇ・・・。先程も言った通り、大学側には勝算がありました。それはトップが一人だけの歪な構造に留まらず、『死者の軍勢』に付きまとう不審な点の数々も関係していたんです」


「不審な点・・・?」


「例えば―――()()()()()()()()()()()()。千切れた腕が()()()()()()。腹腔を突き破った大腸が、()()()()()()()()()―――()()。生理学的に考えて()()()()()()()が、彼らの周りには散見された訳です」


「不思議な話だけれど、ゾンビって()()()()()()なんじゃ・・・?」


()()()()()。いいですかぁ?あくまで彼らは()()()()()()()()んです。蘇生薬によって復活した肉体は()()()()()し、刃物で切れば()()()()()()。文字通り、死体が動いているのとは訳が違うんですよねぇ~」


「死体とは、違う・・・?」


()()()()()()で、平然と戦い続ける兵士。

逆に、()()()()()()()()()()()()指揮官。


銃弾を受けて千切れ飛んだ腕が()()()()()()()、防戦する兵士の脚を掴む―――()()

内戦開始後、『死者の軍勢』を相手取る米軍は幾度となく、その()()()に苦しめられていた。


ただの死体ならいざ知れず、相手は一度死んだと言え、一応は()()の括りに入る存在である。

それが、()()()()()()()()さながらの奇行を繰り返す現実を前に、当時の米軍はおおいに混乱したのだという。



「ですが、()()()()()んですよねぇ。千切れた腕に指令を送る()()は、()()()?叫ぶ生首の声帯に、空気を送る()は?頸動脈が切断された状態で一体、どうやって()()()()()()()()()()()を・・・?ペテンでないのなら、何らかの()()()()()()が介在した可能性を疑わねばなりません」


「言われてみれば、確かに・・・?」


「つまり―――件の蘇生薬は結局の所、()()()()()()()()()()()()()()()のですよ」


()()()!?」



真調(ましら)が発した言葉に、思わず素っ頓狂な叫びを上げてしまう。


『死者の軍勢』の盟主たる、『死体蘇生者』。

その代名詞とも言える薬液は、科学的知見から人類を『死』から克服させる存在であった―――()だ。


それが実は、()()()()()()()だった?

一体どういう事なのだろうか。


ひとしきり首をひねった後、ぼくは目の前でほくそ笑む老人を見つめ返すのだった。



「処方された者は死から蘇り、場合によってはその身に超自然的な力を宿す。蘇生薬に関する事実を纏めれば、その()()は見えてきます。過去の歴史に於いて、それと()()()()()()はそう多くはありません。それは所謂―――『()』。道術に於ける()()()()()()()()であり、人を不老不死の存在―――『()()()()()()()()()()()()です」


()()()()()()()()()()・・・ってコト!?」


「その通り。『丹』を作り出す手段は大まかに二つ、『()()』と『()()』です。調合した薬を接種するのはこの『外丹』に当たりますのでぇ、()()()()()()はこの『外丹』という事になりますねぇ。ちなみに、一度死を経た者が『丹』によって蘇った場合、それは道術に於いて『()()()』と呼ばれます」


()()()・・・」



つまり。


蘇生薬とは、死者を『尸解仙』へと変じ、既に『尸解』した者には即座に肉体を蘇生させる効能を持つ、『丹』の一種である。

こういう事になる訳だ。



「知り合いの道士に蘇生薬について尋ねた折、そう結論付けていましたねぇ。純粋に科学的知見による死の克服を求めて、たどり着いたものがオカルトの産物だった訳です」


「それって何だか、()()()()ですよね・・・」


()()()()()!そうですねぇ・・・。そして当時、ミスカトニック大学も()()()()にたどり着いていました。彼らが携えたのは、『丹』の効力を無効化し、二度と復活できなくする()()()()()だった訳です。それを以てハーバート・ウェストを(しい)し、『死者の軍勢』の動きを止める手筈でした。()()()―――」



老人はそこで言葉を切る。


『停滞』のルーンを刻まれた、特殊な弾丸。

それが、不死者を作り出す怪人を殺す為、大学側が持ち出したものであった。



「『軍勢』の対処に向かった若者たちは果たして、ハーバート・ウェストへ銃弾を撃ち込む事に成功しました。体内に残ることで、蘇生薬液の働きを阻害する事を目的とした、()()()()()()です。()()()()に、()()に。天才医学者を元の死体へと戻す筈の銃弾は―――想定とは異なり、彼、()()()()()()()()()()よう作用しました」


「・・・『お れ は し ょ う き に も ど っ た !』ってヤツ?」


「ま、そんな所ですかねぇ」



―――実のところ、復活して以降のハーバート・ウェストは()()()()()()()()()()()


『死体蘇生者』には()()()()()が仕掛けられ、()()は理性を奪い、術者の意のままに操っていたのである。

古代の邪法―――『制約(ギアス)』。


放たれた弾丸は結果として、一人の男を古の呪縛から解き放ったのであった。



「撃ち込まれた弾丸は、ウェスト博士に仕掛けられていた『制約』と干渉し、()()()()()を取り戻しました。酷薄で人命を軽んじる人物ではありますが、あくまでその行動原理は、()()()()()()()()()()()()()()()()()というのが、彼本来の意向だったようですねぇ~。結果として、『死体蘇生者』とその旗下にある『死者の軍勢』百万は、まるまる()()()()()()()()()()という訳です」


()()・・・!!」



ここへ来て、ようやく希望の持てる展開。


思わず拳に力が入るが、しかし、既に『アーカム計画』は発動秒読みの状況である。

対する人類サイドは十数名の大学勢と、百万の『死者の軍勢』による急増チーム。


結果として『計画』は実行され、舞台は()()()()へと移る事となる。


次の舞台となるのは()()()()()()()、首都圏より撤退する民衆と、それを護る死者達。

西アメリカ建国エピソードの一つとして語り継がれる、『長征』(ロングウォーク)の始まりである―――


今回はここまで。

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