27 伝わらない想い
桜が大爆発!!の回です。
ベラベラ早口で言う感じを書いたので、少し読みづらいかも……?
私の中の狂気が、火事場の煙のように、もくもく、むくむくと、現れた。
「夏は、本当に友達想いだよね。そういうところ、いいと思うよ。みんなが夏を好きで、夏の側にいるの、よく分かる」
夏が「え」と声を上げるその前に、私は、言った。
「でも、それって無責任、身勝手。友達のためなら何してもいいの? 2人のためなら、あたしに何だって言えるの?」
「椿?」
そのとき私は、妙な使命感を抱いていて、夏が何か言う前にすべて話し終えなければいけないと、思っていた。そんな必要はまったくなかったと、気づくのは、私がそこを去ったあと。夏の発言への憤りもプラスして、私は、手のつけようがない、壊れた玩具のように、ただひとつのことだけを思って、動いていた。
――夏は私のことなんてちっとも考えてくれていないし、私を見つけてくれていない。
「あたしは、喬に告白されたとき、『付き合えない』って、言ったの。これ以上『はっきり言う』って、どういうこと? 『喬なんか好きじゃない』って、言えばいいの? ねぇ、そう言えばいい? 夏がそうだっていうなら、今すぐ言ってくるけど」
「椿。俺は、そんなつもりじゃ、」
「そんなつもりじゃない、って? じゃあ何なの。涼平にも『あんな賭けは卑怯だ。勝手すぎる』って言えばいいの? 言えるよあたしは。だって心の中で、あたしは本当にそう思ってたもん」
自分を繕うことなんて、もう、できない。
夏は、あまりに軽率にそんなことを言う。鈍感、という言葉では済まされないほど私の心に鋭い刃を突き刺して、それでもまだ、何も分かっていない。分かって、くれない。
「椿。どうしたんだよ、お前」
夏は、困った顔をして、私を見た。
「夏、は、あたしのことは何も考えてくれないんだね……」
そう言った私を見て、夏が「え」と呟いたのをきっかけに、今までのことすべてが、どうでもよくなった。
「もういい。夏、もう、いいよ」
「え、椿……?」
夏の横を通り過ぎ、私は歩き出す。
「おい、椿!! お前、どうしたんだよ」
「椿なんて呼ばないで!!」
その愛しい声で、私を、「椿」と呼ばないで。
「お前なんて、呼ばないで。あたしは……」
私は桜。椿じゃない。お前、なんて呼ばれるほど、夏は私のことを知らない。
「ばいばい。夏」
一度だけでいいから、「桜」と、呼ばれたかった。
それが叶わずに夏の元から離れることを、どうかこの先、後悔しませんように。




