プロローグ -残念な絵本-
異世界冒険ファンタジーのつもりで書いています。
むかし、むかし。
ある深い森に、一人の男の子がいました。
その子には親がおらず、一匹の狼に育てられていました。
狼は我が子のように男の子を守り、狩りを教え、言葉を持たぬまま十年という歳月を共に過ごしました。
しかし、その狼もやがて寿命を迎えます。
男の子は、たった一人になりました。
数日後。
森へ薬草を採りに来ていた一人の少女が、偶然その男の子を見つけます。
「あなた、なんでこんなところにいるの?」
突然差し伸べられた手に、男の子は驚きました。
「……言葉が分からないの?」
少女は顎に手を当て、少し考え込みます。
「うーん……ってことは、お家も洋服もないってことだよね。そうだ! 私の家に来ない? うん、それがいいわ!」
言葉の分からない少年は、少女に手を引かれるまま、その家へと招かれました。
少女は少年の泥だらけの体を洗い、温かい食事を用意し、寝る場所を与えました。
こうして、狼に育てられた少年は、初めて人としての暮らしを知ります。
それから五年。
少年は少しずつ言葉を覚え、人の暮らしにも慣れていきました。
ある日、少女は思い出したように尋ねます。
「そういえば、あなたって名前あるの? 私はリン。五年も一緒に暮らしてるのに、お互い名前を知らないなんて変な話よね。」
少年は少したどたどしく答えました。
「ボク……ナマエ……ナイ。」
「えっ、そうだったの?」
リンは少し考えると、少年の澄んだ蒼い瞳を見つめます。
「そうだ。」
「あなたの名前は――**蒼**。」
「そのきれいな瞳にぴったりの名前。」
「……ソウ。」
「うん。今日からあなたはソウ。」
リンは嬉しそうに笑い、ソウもぎこちなく笑いました。
それから二人は季節を重ね、笑い合い、ときには喧嘩をしながら、穏やかな日々を送りました。
**二人はこれから先も幸せな日々を送りましたとさ。**
**めでたし、めでたし。**
――上は絵本『青き心の勇者』のお話。
「さ、もう寝る時間よ。」
母親は優しく絵本を閉じました。
「……ママ、おやすみ。」
幼い男の子は眠そうに目をこすりながら、小さくそう言いました。
「はい、おやすみ。」
母親は男の子に布団をかけ、額をそっと撫でます。
やがて規則正しい寝息が聞こえ始めると、母親は静かに絵本を開き直しました。
「……また最後を書き換えちゃった。」
そう呟き、本当の最後のページへ目を向けます。
そこには、先ほど読み聞かせたものとは違う文章が綴られていました。
> **『この幸せな日々が、これからもずっと続くものだと、二人は信じていました。』**
母親は小さくため息をつきます。
「やっぱり、この結末はまだ早いわよね。」
「前は『竜の箱舟』、その前は『屍の魔王』、さらにその前は『しくじり仙人』……。」
「どうして私が子ども向けだと思って選ぶ絵本は、どれもこんな物語ばかりなのかしら。」
苦笑しながら表紙を見つめます。
**『青き心の勇者』**
「ソウとリンの物語……。」
「この子がもう少し大きくなったら、ちゃんと最後まで読ませてあげよう。」
そう小さく呟くと、母親は本を閉じ、部屋の灯りを消しました。
静寂に包まれた部屋には、少年の穏やかな寝息だけが響いています。
よろしくお願いします。初心者でーす。わからないことだらけなので、いろいろ教えてください。できるだけ頑張ります。




