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プロローグ 血の雨
雨は嫌いだった。
血を洗い流すようで、何もかも無かったことにしてしまうからだ。
俺は道路に片膝をつき、荒い息を吐いた。
右肩を撃たれ、左脇腹から流れる血でシャツは真っ赤に染まっている。
目の前には、一人の老人。
黒崎組組長・黒崎源蔵。
六十を超えてなお、裏社会で「怪物」と恐れられる男だった。
「若ぇの。」
組長は拳銃を片手に笑う。
「筋はええ。じゃが、修羅場を潜った数が違う。」
乾いた銃声。
弾丸が俺の太腿を撃ち抜いた。
俺は地面へ崩れ落ちる。
「これで終いや。」
組長が銃口を俺へ向ける。
その時だった。
「先生!」
少女が飛び出した。
サチ子だった。
組長の表情が一瞬だけ揺れる。
だが引き金は止まらない。
銃声。
サチ子の腹が赤く染まり、俺の前へ倒れた。
「サチ子ぁ!」
俺は怒鳴りながら引き金を引いた。
「死ね、この野郎!」
カチッ。
弾は出ない。
拳銃は壊れていた。
(終わった。)
そう思った瞬間だった。
ダダダダダダッ!!
横から一斉射撃。
組長の身体が何度も跳ねる。
「若頭!!」
兄貴たちだった。
組長は蜂の巣になりながらも立っていた。
「……まだか。」
俺は懐から予備の拳銃を取り出す。
ゆっくり立ち上がる。
「これで終わりだ。」
三発。
胸へ。
腹へ。
最後に額へ。
組長は静かに倒れた。
――そして物語は半年前へ戻る。




