表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷える星々に、光を。  作者: 宵星
第1幕:青い星
2/2

1 アッシュブルー

ガラガラ……  バッシャーン!

教室のドアを開けると、勢いよく何かの液体がかかってきた。熱いから、熱湯だろう。正直、どこからそんな発想が生まれてくるのかを知りたい。

「ほら、お前が拭けよ」

そう愛衣に雑巾を投げつけられる。愛衣は、いじめっ子の頂点に立つ女だった気がする。誰かを見下すような光のない目が、憎らしかった。僕は、言われた通りに濡れた床を拭く。殴られたくないから。すると、康成がニヤつきながら、

「つまんないの笑」

とこちらを見下してきた。拭かなかったら殴られる、拭いたら文句言われる。自分は何をしたらいいのだろうか。どうやったら、この人たちを納得させられるのだろうか。僕は、静かにそんなことを考えていた。

「そういえば、スリッパどうしたの?笑」

愛衣が聞いてくる。しかし、僕もわからないから答えられない。いつの間にか消えていたのだから。

「俺が持ってるから、履いてこれないんだろ笑」

そう、クラスメイトの一人が答えた。やっぱりそうだった。人までは予想できなかったけど。すると、翔が教室に入ってきた。

「おはよう(ニコ」

「あ、やっと学級委員来た〜」

「ごめん、お母さんに手伝わされてさ」

そう、笑顔を貼り付けながら答えた翔。

「お前のお母さんやってんなぁ…笑」

「そうだよね?!本当にめんどくさいよ。それで、"道崎さん"はどうしたの?」

道崎さん。その一言が、刺さって抜けない。このまま抜いたら、血が噴き出して死んでしまうから。抜こうと思えば抜ける。でも…

「汚かったから、お湯かけてあげたんだよ笑

シャワーがわりになったんじゃない?」

クラスメイトの一人が甲高い笑い声をあげる。恐怖で、背筋が震える。

「ほら、手を動かしなよ?(ニコ」

翔がそう耳打ちした。恐怖で頭が真っ白になった。

「おはようございます〜」

そう担任の酒井の声がして、みんな酒井を取り囲む。僕は、いそいで雑巾を片付ける。すると、酒井が僕を見て

「光太くん、濡れちゃってるけどどうしたの?」

「えっと……」

「道崎くん、水たまりで転んだらしいですよ〜」

康成がそう僕を隠すようにほら話を語る。酒井は、康成を疑うことなく

「それじゃあ、光太くん。体操服着替えてきたら?」

「…はい」

言いたいことはあったが、言っても無駄なので、先生の指示に従った。僕は、トイレに入り、着替える。

「奈緒先生可愛い〜!」

「あ、ありがとう…」

「まじで酒井先生ってしっかりしてるよね」

「確かにな」

そう、クラスから騒がしい声が聞こえてきた。僕は、醜い自分の姿を鏡で見る。無様で、どこか憎らしい。腹が立った。眼鏡を拭きながら、今日のことを考えようとした。

「…なんで?」

しかし、未来が想像できない。真っ黒に塗りつぶされて、何も見えない。青く澄んでいた世界は、青黒く染まってしまったらしい。

「酒井先生、朝読の時間なので、生徒を静かにさせてください。うるさいです」

「ごめんなさい、野田先生……」

そう、酒井が野田に怒られているのが聞こえて、僕は現実に戻る。眼鏡をかけ、廊下に出た。

野田は、隣のクラスの社会教師。何でもズバズバ言うところが、いい意味でも悪い意味でも人気があるらしい。僕には魅力が何も分からないが。相変わらず、眼鏡の奥に潜む目が厳しい。ほんと、中堅が初心者を怒ってどうするんだよ…。そこまで言ったら、初心者の心が折れるかもしれないのに。

「光太、体操服になってるけどどうしたんだ?」

空気のように気配を消したつもりだったが、野田には全てお見通しのようだ。

「…水たまりを踏みました」

そう言って僕は、2人の横を抜けて教室に入る。みんな、ニヤニヤしている。僕はそんな視線を無視して、席に座る。そして、本を取り出した。

「酒井先生、自分のクラスのこと、ちゃんと"監視"しておいてくださいよ?」

「…はいっ……」

酒井の声がとても小さくなっている。その光景が、とても心地よく感じてしまう。このバカ担任が怒られていて、とても気持ちが良かったんだろうな。野田にはそこだけは感謝したい。

「じゃあ」

野田はそうしていなくなった。

「監視ってひどくない?」

クラスの女子が小さな声でそう言うと、みんな静かに頷く。酒井は

「そんなこと言わないで!」

と隣に聞こえる声で注意していた。しかし、また野田がやってくることはなかった。

そういえば、僕ってなんでいじめられてるんだっけ。

僕は、本を読みながら、意識は過去の記憶へとんでいた。あの、思い出したくもない記憶を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ