6話 疑惑
8月16日1900 弟1小隊担当山中
私達の前にその男が草陰から
現れたのはちょうど
ロボットウルフを倒した後だった。
男の姿を見ると防弾チョッキは着ていないものの
我々自衛隊と同じ装備の様に見えた。
友軍の可能性もあるが近くに
敵兵がいる疑念もあった。
そもそも前方から来ることは
おかしい。
「誰か!!!!!」
私は男に対して
誰何し小銃を向ける。
「待て!!!味方だ!!!」
男が叫ぶ。
男は手を挙げてこちらに戦闘意思が
ない事を示している様に見えた。
「長門3曹、味方だ。銃を下げろ」
紀伊3尉の命令を私は無視する。
「名前と階級、所属部隊をいえ」
「おい、いい加減にしてくれ!!
50普連1中隊の佐藤3曹だ。」
50普連、高知の部隊だ。
何度か共同で演習をしているが
その顔は見た事が無い。
紀伊3尉がなおも私を止めようとするが
霞2曹がそれを手で制止する。
「なぜ、こんなところにいるんだ?」
「部隊とはぐれて道に迷ったんだよ」
「なぜ、戦闘服に階級章と名札を縫いつけていない?」
「……」
男は黙りこくる
「今回の作戦は皆装備内容は同じはずだ
ドッグタグの装着も防弾チョッキも身につけていない」
「認識番号を言え!!!!!」
「真不错啊」
男は中国語で何かつぶやくと
袖からナイフを取り出して
私に襲いかかってきた。
瞬時に私は男の太ももを撃ち、
男の腕を取ってナイフをはたきおとす。
腕をきめ、地面に倒し
その頭に蹴りを加える。
こいつらが筑摩曹長を……!!!!
そう思うと殺意が沸いた。
もう一発男の頭を頭上から踏みつけようとした、
その足を霞2曹の足が受け止めていた。
「ストップ!!そこまでだ。」
「気持ちは分かるが、それ以上は殺しちまう。」
「捕虜にして情報を吐かせよう。
他の敵の居場所も知っているかもしれない」
「……そうだな」
霞2曹の冷静さに助けられる。
男は気を失っているのかピクリとも動かない。
私は空手と日本拳法は有段者だ。
これくらいは造作もない事だった。
霞2曹は手早く男を後ろ手にして結束バンドで
縛り上げる。
武器などが他にないか身体も漁っていた。
ついでに男の被弾した太ももも圧迫止血して
自分の応急キットを使い治療してやる。
太ももには大きい血管があり
放置しておくと死んでしまう事があるからだ。
「鉄帽には名前が書いてない。
新品だなこれは
戦闘服にも名前を書いていない。」
紀伊3尉が男の装備を分析していた。
「戦闘服にはIR迷彩(抗赤外線迷彩)の記載がある。
市販されてるものではなく自衛隊が国から供与されている、
官品を奴らは持っている……か」
「多分、装備を渡されただけで実際の運用までは
知らないんでしょう。
名札や階級章もつけていなかった。」
だが、流暢な日本語や違和感のないレベルで
こちらの部隊編成の情報まで教え込まれている。
偽装工作員としてはほぼ満点。
一般人ではまず見抜けないだろう。
「誰かが、自衛隊の装備と情報を
流している……?」
「もし、そうだとしたらそれは日本人だろうな。
詳しすぎる」
疑念が胸の中で増殖し、ギトギトとした
暗い憎悪が私を支配しようとしているのを
感じた。
「ここで考えていても、仕方ないでしょう。
本部に連絡して帰隊命令が出ました」
「撤収。筑摩曹長の遺体と捕虜及び
ロボットウルフを回収して撤収します」
隊員から安堵の声が漏れる。
こうして長かった一日が
終わりを迎えようとしていた。
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