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21話 火力

8月19日0500 宇多津港


宇多津港から丸亀湾に

辺り約2000人の自衛官が

上陸に成功した。


迫撃砲やミサイルが

飛んでいた事もあり街の

一部では煙が上がっていた。



港には殉職した自衛官や

敵の死体もあった。



すぐに火の手が

あがっている所も

あった。


消防車などがすぐに

来ない事からも

都市機能がすでに

麻痺している事が

窺えた。


街には人の気配を

感じなかった。


宇多津港を確保してから

一部の家屋には

ドアが破られて

荒らされており

明らかに強盗に入っている。


一般の方のご遺体などが

あるのを確認した。


倒れていたのは、

避難用のリュックを背負った

ままの女性だった



あまりにも凄惨だった。


「一般人に被害が

及ぶなんて分かりきってた

ことだろうが!!」


「政府が非常事態宣言を出すのが

遅すぎるんだよ!!クソ!!」


「四国には住民に

緊急避難マニュアルも用意されてないんだ

役所の連中じゃ対処なんて

できっこないのに!!」


住民の遺体を見て霞2曹が

激昂していた。


霞2曹の気持ちは分からない

訳ではなかった。


しかし、それにしては

犠牲者の数が少ないのが

気になった。


「宇多津の人たちは

どうなったんですかね?」


私が紀伊3尉に確認を取る。


「わかりません。

四国内の現状は敵が通信施設を

占領したので入ってきません

でしたから」


「とにかく何が

あるかわかりません

制圧後の上空警戒を

フェリーが到着したら

高機動車に乗って

機動展開ができます」


我々普通科の歩兵は

機械化歩兵だ。


高機動車や装甲車を使い

人員を機動展開するのが

本領である。


その時、前方の

道路から3台ほどの

陸自の高機動車が

現れる。



駐屯地に待機部隊として

残っていた中隊のものだ。


「紀伊3尉、あれって

駐屯地の生き残りなんじゃ!!」


私は思わず声を上げた。


高機動車は

我々の近くの駐車場に

停車した。


中から人員が

降りてくる。


18人ほどだ。


我々は互いに敬礼を

交わす。


「良かった!!

残留した中隊は全滅したと

聞いていました!!」


紀伊3尉が代表して

話しかける。


中年の陸曹が一歩

前に出て代表して話はじめる。

どうやら彼が指揮を

とっているようだ。


「3中隊の片山2曹です。

1中隊の紀伊3尉ですよね。

見知った顔が生きていて

ホッとしました」


「何があったのですか?

駐屯地には他に生き残りが

いるのですか?」


片山二曹は目線を下げた。


「我々は住民の避難誘導に

でていたので助かりました」


「我々も駐屯地に向かおうと

したのですが敵が防御を

固めていましたので多勢に無勢もあり

援軍を待っておりました」


「住民はどうなりましたか?」


「安心してください、

大半の住民は体育館などに

避難誘導を完了させています!」


片山2曹が力強く語った。


それはまだ自分達の

家族も生きているかもしれない

希望の光だった。


8月19日0800 宇多津港


到着した時は夜の帳に

包まれていた空は

いつの間にか朝に

なっていた



残った敵がいないかを

確認したのちに到着した

フェリーに向かっていた。


高機動車に乗る為だ。


港に向かう道すがら、

紀伊三尉から報告を

受ける。


「高知、愛媛方面に

上陸した九州の水陸機動団二〇〇〇名は

敵を包囲殲滅したようですね」


「本当ですか!?」


我々は敵に逃げられたが

水陸機動団は上陸戦に特化している。


実戦では初運用のはずだが、その実力は

遺憾なく発揮されていた。


「徳島方面、特に鳴門は

大部隊常駐しており

敵が本格的に防御を固めているそうです

第一波一〇〇〇は上陸を断念しました」


「こちらに合流するそうです」


鳴門は鳴門大橋もある上に

大阪も近い。


本格的に防御を固めている。

という事は明らかに敵の主力は

近畿侵攻を見ていると考えて

間違いないだろう。


「紀伊三尉…それはやはり敵の狙いは

大阪なんじゃ」


「かもしれません、ですがいずれにしろ

我々は敵の部隊を分断殲滅しなければ

鳴門の大部隊を叩くことはできない

でしょう」


自国にも関わらず兵力不足なのだ。

仕方ない。


港には

味方の第二波が到着し始めていた。



8月19日0900 宇多津港


我々は到着したフェリーに乗り込み、高機動車に乗り込む。


フェリー内には高機動車の他に装甲車や

16式機動戦闘車などもあった。

出雲の偵察隊のものである。


「16式も乗ってるんですね」


私が紀伊3尉に問うた。


「16式はもともと

戦車が到着するまでに

機動展開するものですからね、

フェリーにも載せられます」


「装輪戦車・装輪装甲車は艦艇や

輸送機での輸送が容易なのが

メリットの一つとして導入されています」



我々は高機動車に乗り込んだ。


「0930より、善通寺駐屯地に

向け前進します。

今のうち銃の点検と弾薬の

装填をしておいてください」


高機動車内には事前に

渡されていた弾薬が

2000発ほど積まれていた。


我々は各自準備に

取り掛かった。



8月19日0930 宇多津港


我々は国道を

通って駐屯地に向かう。


一網打尽を避ける為に

複数のルートに分けて

進む事になった。


40分ほどで駐屯地には

着くだろう。



駐屯地に向かう

主要道路の一角に


装甲車とバリーケード、

土嚢を使い道路をふさぐように

防御陣地を作っていた。


敵は駐屯地周辺に簡易防御線を築き、

善通寺の入口を固めていた。


「紀伊3尉、あれは!!」


私が思わず助手席に

身を乗り出した。


「防御陣地ですね。

問題ありません。」


「こちらタイガー1。送れ」


紀伊3尉が無線でやり取りを

していた。


前方の高機動車が

道路の脇に停車し我々も

それにならった。



後方から1台の

16式機動戦闘車が到着し

敵の陣地にその砲身を

向けた。


「耳を塞いで!!」

紀伊3尉が叫んだと同時に

16式機動戦闘車の主砲が

火を噴いた。


戦車に準ずる火力だ。


爆風で高機動車の窓が震え、

胸の奥まで振動が突き刺さった。


敵の陣地は跡形もなく

吹き飛んだ。

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