↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/17

最終話その1

 ーー夏休みも終盤。



 色々とあったと振り返る。

 そして、今年と夏休みほど最低最悪なものは今事ないだろう。



 五人で行った温泉旅行で、桐華ちゃんと事故でキスをしてしまったり。

 ナーシャの付き添いで家出に付き合ったり。

 貴之が事故して病院通いだったり。



 ーーそして何よりも今だ。



 鼎が、突然居なくなった。

 一週間以上前から、鼎は突然姿を消して、音信不通にもなった。

 鼎が消えた前日には、俺が酷いことを言ったのも覚えている。



 多分……それが原因だ。



『ーーいい加減にしろっ!! お前が幾ら俺を好きでもなーー俺はお前が嫌いなんだよっ!! お前みたいなのと誰も付き合いたくねーんだよ!!』



 あの時は、幾ら俺に振られてもめげずに次の日、次の日と、告白してきた鼎が泣いていた。

 胸に手を押し当てて、涙を流し、逃げてきた俺より早くその場を逃げていた。



 ここ一週間以上は桐華ちゃんとナーシャと貴之の間をぐるぐる回り、一人の時間を過ごすことはなかったが、どうしてか……。

 鼎のことを忘れた時は一秒も無かった。



 認めたくないが、認めるしかないのか……?

 俺は、俺自身が、俺の中の本当の気持ちは……あいつが居ないと寂しくて、胸が痛いと。



 ★



 鼎が居なくなってから、ぽっかりと空いた俺の傷を埋めるためと称して三人が花火大会に連れ出してくれた。



「桐華ちゃん浴衣似合ってるね」

「あざっす! 先輩うちとまろっす!」

「桐華ちゃん、朝日は私がナンパされないように見張りなのよ? あんたは何かあればチャカ出してなさい」

「チャカなんて物騒な物、うちはまだもってないっすよ? そもそも、騒ぎになってうちの声が聞こえたら、組の者が飛んでくるっすから、問題ないっすよ?」

「いや、もうみんなで回ろう?」

「そうそう」



 騒ぎが起きる起きない以前に、この話自体途中から物騒な内容に変わっている。

 俺と貴之が桐華ちゃんとナーシャを離し、両サイドに分けて屋台巡りをすることに。



 本当は真ん中に挟んであげるべきなのだろうが、ナーシャが何故か俺と桐華ちゃんの事故キス以降、焦っている気がする。

 そして、桐華ちゃんに敵対心を燃やしている気がする。



「ーーさあ、何食うかな」



 とりあえず、そんな状態を切り抜けるためにも、俺はみんなに何を食うか聞いてみる。

 すると、花火大会にまで来て全員が指差したのは屋台のラーメン屋だった。



 ーーお好み焼き、たこ焼き、焼きそば、唐揚げ、りんご飴などなど、夏と言えばな屋台を選べよ。



 なんで飲み屋に通い慣れたおっさんが、締めに河川敷で屋台のラーメン啜る域にまで達してんだよ。

 しかもお前ら、相談無しに即決したよな?



 突っ込みたい気持ちを抑え、一応屋台は屋台として暖簾を上げて中に入る。

 知らないおじさんがしているのかと思いきや、桐華ちゃんの凄腕ボディーガードさんだった。

 温泉旅行へ俺達をリムジンで送っていってくれた人でもある。



「ーー何にしやす」

「ボディーガードさん……ラーメン作れるんですね」

「そりゃ、ラーメン好きのお嬢のためでさ。一から勉強してでも作ろうとするのが、当たり前なんでさ……さあさあ、選んでくだせえ」



 ボディーガードさんにメニューを渡され、三人がギュウギュウに両方から俺を押しつぶさんばかりに寄ってくる。



「鮫島、うちは味噌ラーメン!」

「あいよ、お嬢」

「私は塩バターラーメン」

「あいよ、ナーシャ様」

「じゃあ俺はーー醤油」

「あいよ、貴之様」

「俺は……俺は……」



 ーー先輩! ここのネギラーメンが美味しいんです! みんなに内緒です、二人で食べましょう!



 ……食欲が、無い。



「俺は、大丈夫です」

「何かありやしたかい?」

「……まあ、ちょっと」

「ーー鼎お嬢のことでしたら、情報を持っていやすぜ」



 察したのか、鮫島さんはそうとだけ言ってから、ラーメンを三人分作り、作り終えると俺を外へ呼び出した。



「鼎お嬢のことしたらね、辛いかもしれやせんが、海外に引っ越しをしてると思いやすぜ」

「……海外?」

「羽田空港の国際線で、うちと手を組んでいるアメリカンマフィアの一行を送り届けた際、そこにフロリダ行きの搭乗ゲートを抜けていく姿が下のもんによって見られてんでさ。俺達は、お嬢の親友の顔は、間違えねえ」

「……そうですか。ありがとう、ございます……」



 そうか、鼎は海外に引っ越したのか。

 俺が酷いことを言ったからじゃ、ないのかもしれない。

 それなら、俺がこんなにも悩み、考える必要は無いはずだ。



 ーー気を楽にしていこう。



 ストーカーが消えたことに幸せを感じ、また地に足をつけたら良いじゃないか。

 世紀末救世主も、もう俺の前に現れる必要がなくなってせいせいしているはずだ。



 ★



 みんなの元へ戻り、食べ終わるのを待っていると、



「ーー好きです! 付き合ってください!」



 と、告白が聞こえてきた。

 俺は咄嗟に後ろを振り返ったが、知らない男女が友人達に囲まれその輪の中で告白しているだけだった。

 男は女を抱きしめ、「よろしくな」などと格好良いセリフを吐いている。



 俺なんて、一度としてあいつにはチャンスすらあげなかったな……。



「先輩、どうしたっすか?」

「告白されたいの? 私が愛のない告白してあげるわよ?」

「俺で良いならーー」

「お前は良いよ」



 貴之だけは遠慮しておく。

 さて、みんなが食べ終え、鮫島さんの好意で無料となった俺達は、次こそ屋台を回る。



「唐揚げ食うか」

「先輩、一つ欲しいっす!」

「ん? ああ、良いよ」

「私にも頂戴、朝日!」

「……大一つで」



 唐揚げなんて、小の三百円でしか頼むことないのになあ……。

 人生初の唐揚げ大(五百円)を俺は頼んだ。



 そんなこんなで、屋台であれを買い取って取られてしているうちに、七時半を回り花火が打ち上がった。



「始まったっす!」

「そうみたいね……」

「……朝日?」

「ん? 心配すんな、俺は別に何ともねーよ」



 何とないーー訳がない。

 夏休み入ってすぐ、この花火大会に行こうと俺を誘ってきたのは鼎だった。



 気にしない訳がない、あいつのことを考えない訳がない。

 逃げていたつもりなのに、逃げられていなくて、結果最後はその鬼ごっこを楽しんでいた事実に苦しんで、何もかもーー失ってから気づいても遅いというのに。



 ーーブーブーブー!



 と、花火が一旦止まった時に、俺のスマホが突然鳴り出した。

 ポケットから取り出すと、新着メールが一件入っている。



 誰からか分からないが開けてみるとーー



「ーー鼎っ!?」

「えっ!?」

「鼎っすか!?」

「まじかよっ!」



 鼎からのメールだった。

 俺はすぐにメールを読む。



 ーー朝日先輩へ。


 突然居なくなって、もしかすると、先輩は喜んでいたりするのかもしれません。

 私は寂しいです……先輩を思い出すと涙が止まりません。

 短い四ヶ月の間でしたが、私は先輩のストーカーとして、側に居られました。迷惑を掛けていたことは、現実を見ると同時に、よく分かりました。


 ですから先輩ーー良い恋を、してください。


 私は今日、地元の花火を見てからーー正式にフロリダの高校へ転校しようと思います。


 P.S 桐華ちゃんのこと、泣かせたらダメですよ? 何も悪いことをしていない、純情な子ですからね!





 ……なんだよ、これ。

 自分の口が震え、涙腺が崩壊しそうになる。



「先輩……?」

「桐華ちゃん。ごめん。鼎に泣かせるなって、言われたけど……泣かせるかも。俺はーーあいつを迎えにいく。鼎のことを、俺はーー好きだ」

「……っ! ……わ、わかってたっす! それくらいで泣かないっすよ! もう、それなら早く行くっす。フロリダにでもどこにでもーーっす」



「ああ、ありがとう。みんなごめん!」



 俺は走り出す。

 花火を見ようと押し寄せてくる人混みをかき分けて、地元の花火を見ているストーカーの元へ。



 ーー鼎は、あそこにいる。



 全てに終止符が打たれるか、新しい物語が始まるか、俺には分からないがーー

 あの日、全てが始まったあの場所で、全てを決めなければいけない。



 俺達の始まりの場所ーー屋上へ。



 ★



「あーもう、泣かないの」

「だって……だって! 先輩はやっぱり、鼎のことどこかで思ってったす! うちには興味……無かったっすよ!!」

「あんたね……やめなさい、よ。貰い泣きするでしょ……ほら! 馬鹿みたいに泣いてないで、私達も迎えに行くわよ!」



 私は貴之と桐華ちゃんを起き上がらせ、無理矢理歩かせる。

 はっきり言って、お姉さんキャラを演じ続けるのはえらくて嫌だ。



 だけど私も一緒になって泣いてしまえば、誰があの場を沈められるかーー

 貴之には、到底無理な話だ。



「ーーああ! もう、ほら!」

「ナーシャ先輩だって! 高山先輩のこと好きじゃないっすか!!」

「……だったら何よ。誰かが我慢せずに、全員が朝日に迫ってみなさいよ! ただのわがまま頑固野郎が三人集まっていいイジメよっ! 私はだからーー何も伝えない、言わない、朝日とは一生の同盟者。それだけなのよ……」

「それで、満足……なんすか?」

「私はあんたより一つ上で計算できるの。私は私のやり方があるのよ年長として。だから私はーー」



 だから私はーー朝日に興味がないフリをするだけだ。



 私まで争いに入ったら、きっと朝日は、今みたいにはっきりと気持ちを明確にできずにダラダラと卒業していたはずだ。

 ーーこれで良い。

 予め用意されいたと言わんばかりの面白い一学期だったがーー誰かが何かを得て、誰かが何かを失い、見守る第三者は得ること失うことも捨てることもできずただ……思い続けるだけなのだ。

新作タイトルは『東京ヴァンパイア・ロイヤー〜世界で一人の吸血鬼は、夜の暗殺者〜』です。

ローファンタジー作品で、昼間は至って普通の弁護士として事務所に居る吸血鬼の主人公は、夜になると悪の組織ーー異能力者集団を狩る暗殺者になります。


依頼人から高額な報酬を受け取ると同時に、犯罪に異能力を使う世間的に知られていない存在と戦うダークヒーロー物語となっています。


魔法や歴史上の人物も出てくるので、是非お読みになってください。

連載開始日時はまだ決めておりません。

次の回で報告できたらと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。